アーリーミュージックカンパニー
チャペルコンサート
シリーズ2015年
演奏風景、プログラム


第142回
フレンチ・バロック

EMC Chapel Concert
Since 1995
No. 142
The Variety of Early Songs

2015.5.23 16:00pm
Temma Church
The Early Music Company


French Baroque

Flute & Lute

Programme

組曲 ホ短調 op.2-4 Quatrieme Suite en e
Jacques-Martin Hotteterre (1674-1763)
Prelude. Lentement - Allemande. La Fontainebleau フォンテーヌブロー - Sarabande. Le depart 出発 - Air. La fleuri 花 - Gavotte. La Mitilde - Branle de Vilage. L’Auteuil - Menuet. Le Beaulieu - 2e.Menuet

リュート組曲 ニ短調 Suite en d / Dubut (17C)
Allemande - Courante - Sarabande - Gigue

第2コンセール ハ短調 Deuxieme Concert en c
Michel Pignolet de Monteclair(1667 -1737)
Prelude. Lentment - Allemande - Courante a l’Italiene イタリア風 - Rondeau - Plainte 嘆き - Sarabande - Le Remouleur 研ぎ師 - Rondeau - Croches egales - Air - Fugue

リュート組曲 ニ短調 Suite en d / Dubut (17C)
Allemande - Courante - Sarabande - Gigue

第2コンセール ハ短調 Deuxieme Concert en c
Michel Pignolet de Monteclair(1667 -1737)
Prelude. Lentment - Allemande - Courante a l’Italiene イタリア風 - Rondeau - Plainte 嘆き - Sarabande - Le Remouleur 研ぎ師 - Rondeau - Croches egales - Air - Fugue

休憩

リュート組曲 ハ短調 Suite en c
Robert de Visee (ca.1650-1725)
Prelude - Allemande. La Conversation - Courante - Sarabande - Gavotte I - Gavotte II - Gigue

組曲 ハ短調 Suite en c “Les Prisons 囚人”
Pierre Gaultier / (1642?-1696)



親密な語らい
Flute & Lute

フルートとリュートfluteとluteは名前もよく似ていますが、音が小さいという点においてもキャラクターが良く似ています。他の楽器とアンサンブルをする時はかなり頑張って大きな音を出さなければ、すぐに「聞こえない」と言われ、それにもめげずに繊細な表現を試みても結局「聞こえなかった」の一言で終わってしまいます。その弱点を克服するためフルートは金属化され、克服できなかったリュートはギターにその座を奪われてしまいました。
 しかしながら両楽器とも、小さな音への可能性のおいては他の楽器の追随を許さないほど豊かな表現力を有しています。強弱をほとんどつけることのできないチェンバロと演奏する時、バロック・フルートは持てる音量(ダイナミクス)の下30パーセントぐらいを使うことができず、オーケストラにおいては上40パーセントぐらいしか使うことができません。でも、リュートとのデュオは違います。どんな小さな音で吹いてもかき消されることはけっしてありません。吐息やささやきのような甘い音、悲しみの淵に沈みゆくような静かな音など、普段封印せざるを得ない繊細な表現への可能性が一気に広がります。
 では、なぜこのようなデュオがこれまであまりされてこなかったのでしょうか?バロックの通奏低音はチェロなどの低弦楽器とチェンバロなどの鍵盤楽器の左手でバス旋律を演奏し、鍵盤楽器の右手で即興的に和音をつけて演奏することが前提となっています。その二人分の仕事をリュートの片手だけで演奏するのは非常に高度な演奏技術が必要であり、曲によっては全く演奏不可能なものあります。また、場合によってはバスの旋律か和声かのどちらかを犠牲にしなければならないこともあります。しかしながら、そのようなリスクを負ったとしてもフルートとリュートのデュオには得難い魅力があります。
 本日のプログラムは18世前半にフランスで活躍した作曲家の作品を集めてみました。J.M.オトテールは明るくやや大きな音がする円筒形のルネッサンス・フルートから、柔らかく落ち着いた音がする円錐管のバロック・フルートを開発したといわれる木管楽器制作家一族の出身のフルート奏者で、宮廷音楽家を務めていました。ピエール・ゴーティエはリュートの曲をたくさん残したドゥニ・ゴーティエとは別人で、マルセイユのゴーティエと呼ばれたオペラ作曲家兼オルガン奏者です。モンテクレールとドルネルはどちらもパリで活躍した作曲家です。リュートソロの作曲であるデュビュは17世紀半ばにパリでリュート奏者と活躍した親子の名前。ドゥ・ヴィゼーは太陽王と呼ばれたルイ14世の宮廷音楽家です。

愁いを帯びた恋人たちの親密な会話のような優雅で心休まるアンサンブルをゆったりとお楽しみいただければと思います。

前田りり子

前田りり子 Liliko MAEDA バロックフルート
モダン・フルートを小出信也氏に師事。高校2年の時、全日本学生音楽コンクール西日本大会フルート部門1位入賞。その後バロック・フルートに転向し桐朋学園大学古楽器科に進学。オランダのデン・ハーグ王立音楽院の大学院修了。有田正広、バルトルド・クイケンの両氏に師事。1996年、山梨古楽コンクールにて第1位入賞し、1999年、ブルージュ国際古楽コンクールで2位入賞(フルートでは最高位)。バッハ・コレギウム・ジャパン、オーケストラ・リベラ・クラシカ、ソフィオ・アルモニコなど、各種演奏団体のメンバーとして演奏・レコーディング活動をしているほか、日本各地でしばしばリサイタルや室内楽コンサートを行っている。また2006年には単行本「フルートの肖像」を東京書籍より出版し、執筆活動にも力を入れている。現在、東京芸術大学、上野学園大学非常勤講師。 前田りり子の公式ホームページは「りりこの部屋」で検索。

佐野健二 Kenji SANO アーチリュート
両祖父は西洋音楽学者と箏大検校、母はピアニスト、叔母はオペラ歌手、父はアマチュアながら清元の優れた演者、幼少時はピアノ、楽典を学び、ギターは10歳より独学で始める。高校卒業後、岡本一郎氏に師事し同年九州ギターコンクール2位、翌年なにわ芸術祭新人賞を受賞する。翌年英国・ギルドホール演劇音楽院に留学、ギターと古楽全般を学び、学内で「ジョン・ペティカン・クリフォード音楽賞」を受賞、首席にて卒業する。演奏活動に対し「ロンドン芸術協会選出 新人音楽家」「大阪文化祭賞奨励賞」「クリティッククラブ新人賞」「神戸灘ライオンズクラブ音楽賞」「大阪文化祭本賞(2回)」等の賞を受ける。2007年、リュート音楽に特化した EMClute Records レーベルを設立、自ら演奏、録音、編集、ジャケットデザインを総合的に行う。発売されたCDは専門音楽誌において優秀録音盤、特選盤等として評価されている。アーリーミュージックカンパニー主宰、相愛大学非常勤講師。


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