アーリーミュージックカンパニー
チャペルコンサート
シリーズ2014年
平井満美子&佐野健二
演奏風景、プログラム


第139回
古き良きイギリスの愛の歌
平井満美子&佐野健二

EMC Chapel Concert
Since 1995
No. 139
English Love Songs of the Olden Times

2014.12.6 15:00pm
Daikanyama church
The Early Music Company





「古き良きイギリスの愛の歌」
 愛には純愛、友愛、溺愛、郷土愛、兄弟愛、親子愛、情愛、人類愛、哀しい愛、神への愛と様々あります。イギリス音楽の特徴である美しい旋律は、その愛の意味合いに寄り添いました。時にはその気持ちを助け、また時には和らげ、多くの名曲を作り出したのです。その普遍性は、ルネサンス時代に生まれたイギリスのはやり歌の多くが今なお世界中で愛唱されていることで証明されています。
 キャロル “ Carol 讃美歌 ” とは神を讃える歌。古今東西のキリスト教徒は神様への讃美を音楽にのせて表しました。教会は人々の生活の中心であり、多くの人が集まる場所、一種の社交場でありました。そんな教会で信仰を表す歌にみんなの知っている音楽が使われる事はごく自然な成り行きであり、多くのフォークソングの旋律がキャロル集には収められています。  エリザベス朝における最高のリュート奏者であるジョン・ダウランドは、多くの独奏曲とリュート歌曲を作曲しました。エリザベス女王に仕えることができなかった失望が彼のメランコリックな作風とされています。しかし、あまりに貫かれた彼の憂愁の美しさからは、メランコリックを楽しむダウランドが浮かび上がってきます。
 イギリスのオルフェウスと称されたヘンリー・パーセルはわずか36年の短い生涯に800曲もの作品を作り出しました。当時の音楽ジャンル全てに精通してたパーセルですが、英語を音楽にのせる類まれなる才能と彼が紡ぎ出す魅力的な旋律は、劇音楽というイギリス特有のジャンルに於いて大輪の花を咲かせました。
   ダウランドとほぼ同時代に生きたシェイクスピアの台本からは500ヶ所以上の音楽に関する言葉を見つけることが出来ます。現代の様に劇場に電気仕掛けの設備や様々な照明のない当時、多くの情景描写は観衆の想像力に委ねられており、シェイクスピア演劇における音楽はその想像力を助ける大きな役割を果たしていたのです。



PROGRAMME

Part I

《English Folk Carols》
●愛は甦る Love is come again●
地中の種から芽生えるように 主も復活され愛は甦る 我が心が枯れはてた野でも
●ウェックスフォード・キャロル Wexford Carol●
人々よ 神がなし給うたことを心に留めよ この日に王たる御子イエスの誕生を
●コヴェントリー・キャロル Coventry Carol●
王であるヘデロは幼子すべてを殺した 歌いましょう 安らかに眠れと
●見てごらん バラが咲いている Lo, how a Rose e’er blooming●
私の心の中に咲く輝かしい薔薇は 我らが拝するマリア 清らかにして母なる人
●リュートブック・ララバイ Lute Book Lullaby●
マリア様は歌われた 可愛い子よ 優しく揺れるお膝の上で静かに眠れ
●聖母の御子(ご所望は?)What shall we give?●
聖母マリアの幼子に何を差し上げましょう ハシバミの実 蜂の巣 無花果・・ 

《John Dowland (1563-1626) 》
●プレリュード Preludium●
●帰っておいで Come again●
さあもう一度 愛が呼んでいる 僕の求める喜びを与えよと 甘美に響き合う
心をこめて きみとともに 命果てるばかりの喜びを さあもう一度
●悲しみよ とどまれ Sorrow stay●
憐れみよ 今こそ僕を助けてくれ 終わりなき苦痛に陥らないでくれ
ああ 僕は望みも助けもなく ひたすら落ちていく 立ち直る日は二度とこない
●言ってくれ 誠の愛よ Tell me true love●
どこにおまえを探せばいいのか? 言葉 約束のなかに?
おまえは不死のはず どうして現代から追放されたのか?
●ファンシー Fancy●
● 暗闇に住まわせておくれ In darkness let me dwell●
地面が悲しみならば屋根は絶望 楽しい光を私からさえぎるのだ
生きたまま死なせておくれ 真の死がやってくるまで
Interval

Part II

《Henry Purcell (1659-1695)》
●沈黙の闇の国から From silent shades●
悲しみのうちにこの世を去った哀れなベス 恋の病を癒すため
現世に立ち返る しかし「この世がこれほど狂気であるとは」・・
●夕べの賛歌 An Evening Hymn●
いまや太陽はその光を覆い隠し 地上の世界に夕べが別れを告げる今
私の魂は親愛なる神の御腕の中にしか安らげる事はない 神を讃えよ アレルヤ
●バラの館より From Rosie Bow'rs●
愛の女神が眠りたもう館からキューピットよ 私の所へ飛んできて
あのひとの心を動かしておくれ 正気を失えば着物と髪の毛を振り乱し
一千回でも死のう  こんなに空しく疲れるよりは

《English Folk Songs》
● 行け我が窓辺より Go from my window / Anon.●
●ローモンド湖 Loch Lomond●
私と恋人はもう逢えないでしょう 彼は山の道を行き 私の心は彼と共に
●私は行く道を知っているI know where I’m going●
誰を愛しているのかわかっています ジョニーの為ならすべてを捨てますv ●ゴールデンスランバー Golden slumber●
まどろみがあなたの目にキスをする 泣かないで 安心してお休みなさい

《Shakespeare's Music》
●ケンプのジグ Kemp's Jig / Anon.●
● 柳の歌 Willow song / Anon.≪オセロー≫●
この世で一番の誠を尽くした恋人を私は失った 私の心に恋の痛手
●さようなら いとしい人 Farewell, dear love / Robert Jones≪十二夜≫●
あなたは行かねばならぬのか 私もこれでおわる いや待ってくれ 見捨てないで
●俺が小さな餓鬼のころ When that I was and a little tiny boy / Anon.≪十二夜≫●
小さい頃ワルサもただの遊び 一人前になっても門前払い
年とったら酒を飲み やっとこの芝居も終わりになった

使用楽器
7-course Lute = Martin Haycock 1990
14-course Archlute = Martin Haycock 1999



平井満美子 Mamiko Hirai/ソプラノ
幼少より母にピアノを学び、キリスト教会にて讃美歌に親しむ。声楽を畑きみ子、斉木幸子の両氏に師事し、神戸女学院大学音楽学部声楽科卒業。卒業後、オペラ、教会バロック音楽、ルネサンス時代の音楽、と様々なジャンルの音楽活動を始める。その後、音楽的興味は徐々にルネサンス後期から初期バロックに絞られてゆき、1990年より佐野健二とのデュオ活動に演奏活動の中心を置く。数少ない古楽の歌い手としてのその活動は新聞、音楽誌等にて高く評価されており、特にイギリス音楽における理解度の深さは常に注目されている。現在までに発売された佐野健二とのデュオCD全ては「レコード芸術」「音楽現代」等の推薦盤に選ばれ、デュオリサイタルに対しては「大阪文化祭本賞」を受賞している。EMC主宰、NHK文化センター大阪「リュートで歌うはやり歌講座」講師。

佐野健二 Kenji Sano/ルネサンスリュート、アーチリュート
両祖父は西洋音楽学者と箏大検校、母はピアニスト、叔母はオペラ歌手、父はアマチュアながら清元の優れた演者、幼少時はピアノを学び、ギターは10歳より独学で始める。高校卒業後、岡本一郎氏に師事し同年九州ギターコンクール2位、翌年なにわ芸術祭新人賞を受賞する。師の勧めで英国・ギルドホール演劇音楽院に留学、ギターと古楽全般を学び、学内で「ジョン・ペティカン・クリフォード音楽賞」を受賞、首席にて卒業する。演奏活動に対し「ロンドン芸術協会選出 新人音楽家」「大阪文化祭賞奨励賞」「クリティッククラブ新人賞」「神戸灘ライオンズクラブ音楽賞」「大阪文化祭本賞(2回)」等の賞を受ける。2007 年、リュート音楽に特化したEMCluteRecordsレーベルを設立、自ら演奏、録音、編集、ジャケットデザインを総合的に行い、発売されたCDは専門音楽誌において優秀録音盤、推薦盤等として評価されている。EMC主宰、相愛大学非常勤講師。      



クリスタルチャペルコンサート2012へ戻る