アーリーミュージックカンパニー
チャペルコンサート
シリーズ2014年
平井満美子&佐野健二
演奏風景、プログラム


第136回
バラードセッティングforリュート
佐野健二リュートリサイタル

EMC Chapel Concert
Since 1995
No. 136
English Ballads for Lute solo

2014.5.15 19:30pm
Senri Hankyu Hotel Ivy Chapel
The Early Music Company





イギリスのはやり歌の魅力

 グリーンスリーブスに代表されるイギリスのバラードは、その旋律の普遍的美しさ故、時代や国境を越え今なお世界中で愛されています。それらのルーツの多くはリュートが最も繁栄した時代であるエリザベス朝にまでさかのぼります。16世紀のイギリスは経済、文化、芸術と、総てに花開いた黄金時代であり、音楽も宮廷人から庶民まで、総ての階級の人々に愛されており、人々はうれしいにつけ、悲しいにつけ、自らの気持ちを楽の音に託したのでした。
 当然の成り行きとして、はやり歌と当時隆盛を極めていたリュートは結び付き、はやり歌の最も良き伴奏楽器として楽曲に寄り添いました。また、心地よいイギリスのバラード旋律は多くの器楽曲の題材としてもルネサンス期の多くの作曲家たちに注目されました。リュートのみならず、ヴァージナルやさまざな器楽曲、そしてミサ曲等にも民謡は主題として取り入れられ、芸術性の香りの高い作品が数多く生み出されました。
 17世紀にはレイヴンスクロフトやプレイフォード等が「はやり歌の曲集」を出版し人気を集め、18世紀では主教バーシーが古い写本から編纂した「民謡詩集」が、イギリスのみならず、後のドイツロマン主義文学にまで影響を与えたといわれています。19世紀にはウィリアムス・チャッペルの「古い時代の旋律」、そして20世紀にはセシル・シャープが「英国民謡集」等で数多くのエリザベス朝のはやり歌を紹介しています。イギリスの人たちは自国の伝承歌をかけがえのない財産として継承もしてきたのです。
 本日演奏に使用する楽器は7コースリュートと9コースオルファリオンです。7コースリュートは典型的なルネサンスリュート。アラブを発祥とするこの楽器は十字軍の遠征により西洋に持ち込まれ、その姿と響きは人々の心をとらえ、瞬く間にヨーロッパ全土に広まりました。そしてオルファリオンは16世紀にリュートの代替楽器として作り出された楽器です。ギリシャ神話の神であるオルフェウスとオリオンの名を組み合わせたこの名前からも当時の人々が理想楽器を作り出そうとしていた事が伺われます。リュートと同じ調弦なのですが、金属の弦がはってあり、リュートとは形態の違いみならず、響きの違いも楽しむ事が出来たのです。どちらもエリザベス一世時代のイギリス音楽にはかかせない楽器です。
 では今宵、イングリッシュ・バラードの旋律からセッティングされたリュートソロの数々をお楽しみ下さい。



●グリーンスリーブス/作者不詳/F.カッティング●
Greensleeves / Anon. / Francis Cutting (1550-1595/6)*

●作者不詳の四つの作品●
かわいそうなトム、去り行く定め、ボルドーの靴屋、理想と現実
Poor Tom of Bedlam - Loth to depart -
The Cobbler of Bordeaux - Heaven and Earth / Anon. (16C.)

●行け我が窓辺より/E.コラード●
Go from my window / Edward Collard (d.1600)

●ロサ/J.ダニエル●
Rosa / John Danyel (1564-1626)

●スコットランドの五つの調べ●
Ane Scottis Dance - A Scots Tune - Corne Yairds -
A Scots Tune - Canaries / Scottish tune (16C.)*

●行け我が窓辺より、スペイン風パヴァーヌ/T.ロビンソン●
Goe from my Window - The Spanish Pavin / Thomas Robinson (1560-1610) 

●ロビン、ウォルシンハム/J.ダウランド●
Robin - Walsingham / John Dowland (1563-1626)

使用楽器
7-course Lute in G = Martin Haycock 1990
*9-course Orpharion = Stephen Barber 1990



●佐野 健二 Kenji Sano/ルネサンスリュート、オルファリオン
 両祖父は西洋音楽学者と箏大検校、母はピアニスト、叔母はオペラ歌手、父はアマチュアながら清元の優れた演者、幼少時はピアノを学び、ギターは10歳より独学で始める。高校卒業後、岡本一郎氏に師事し同年九州ギターコンクール2位、翌年なにわ芸術祭新人賞を受賞する。師の勧めで英国・ギルドホール演劇音楽院に留学、ギターと古楽全般を学び、学内で「ジョン・ペティカン・クリフォード音楽賞」を受賞、首席にて卒業する。演奏活動に対し、「ロンドン芸術協会選出新人音楽家」「大阪文化祭賞奨励賞」「クリティッククラブ新人賞」「神戸灘ライオンズクラブ音楽賞」「大阪文化祭本賞(2回)」等の賞を受ける。2007年、リュート音楽に特化したEMCluteRecordsレーベルを設立、自ら演奏、録音、編集、ジャケットデザインを総合的に行い、発売されたCDは専門音楽誌において優秀録音盤、推薦盤等として評価されている。EMC主宰、相愛大学非常勤講師。

       



クリスタルチャペルコンサート2012へ戻る