アーリーミュージックカンパニー
チャペルコンサート
シリーズ2013年
平井満美子&佐野健二
演奏風景、プログラム


第133回
古き良きイギリスの愛の歌

EMC Chapel Concert
Since 1995
No. 133
English Love Songs on the Lute

2013.6.6 19:30pm
Senri Hankyu Hotel Ivy Chapel
The Early Music Company





古き良きイギリスの愛の歌

 今宵は17世紀英国のリュートに寄り添う愛の歌を集めました。イギリス音楽の伝統とも言える美しい旋律には、リュートが最も寄り添える楽器として愛好されました。時代はルネサンスからバロックへと移り変わり、イギリスにも大陸より新しい様式が押し寄せました。声楽曲においては英語の響きを音楽に生かす独自のスタイルが生み出されました。
 「イギリスのオルフェウス」と称されたヘンリー・パーセル(Henry Purcell, 1659-1695)はわずか36年の短い生涯に800曲もの作品を作り出したイギリス・バロック時代に於ける最大の作曲家です。パーセルの音楽で特に注目すべきジャンルは、劇場音楽と呼ばれる舞台劇場に関連する音楽でした。彼の創造性に富む旋律の流れと、声楽曲における英語の表現能力における才能は17世紀の動向と融合し人々を魅了しました。
 ジョン・ダウランド(John Dowland, 1563-1626)は、エリザベス朝における最高のリュート奏者であり、生涯に4巻のリュート歌曲集を出版しました。様式的にはイギリスルネサンス後期の音楽家に分類されますが、晩年の作品にはイタリアからの新しいバロック様式も色濃く見られ、彼の残したリュート伴奏楽譜は、当時のリュート通奏低音の様式を我々に残してくれました。ほとんどの歌曲はリュート伴奏付きの4声の合唱曲として作られていますが、ダウランドの音楽もイギリス音楽特有の旋律の美しさを持ち、リュート伴奏付きのソロ歌曲として演奏することができます。
 ヘンリー・ローズ(Henry Lawes, 1595-1662)とウィリアム・ローズ(William Lawes, 1602-1645)は兄弟であり、どちらもイングランドの作曲家。二人とも有名な作曲家、ジョン・コペラリオ(ジョン・クーパー)を師とし、チャールズ一世の宮廷楽団員として宮廷に欠く事の出来ない音楽家として活躍しました。ガンバコンソート等の17世紀のイギリス独自の音楽ジャンルでも有名です。
 ジョン・ブロウ(John Blow, 1649-1708)も、17世紀イングランドを代表する作曲家、オルガニストですが、ヘンリー・パーセルの師匠というのが有名かもしれません。王家礼拝堂のジェントルマンであり、ウェストミンスター寺院のオルガニスト、セント・ポール大聖堂の聖歌隊の指導者として活躍し、音楽学者でもあるブロウは、ジェームズ二世付きの楽士の一人としても名を連ねています。多くの教会音楽を作曲しましたが、晩年には通奏低音付きの声楽作品を集めた「アンフィオン・アングリカス Amphion Anglicus」を出版しました。



17C. English Love Songs to the Lute

【Henry Purcell, 1659-1695】
●Fairest Isle 美しい島●
すべての島にまさる美しい島 ヴィーナスは住いを定める

●I Attempt from Love'Sickness 恋の病から逃れよう●
恋の病から逃れようとしてもむなしい 私の心は反抗はできないのだから

【Henry Lawes, 1595-1662】
●The Angler's Song 釣り人の歌●
男の一生はむなしい 歌えば悲しみは消え また釣りをする

●Sweet stay awhile どうかまだここにいて●
どうかまだここにいて 君の至福の接吻 この喜びは死なねばならぬ

【William Lawes, 1602-1645】
●To whom shall I complain 誰に訴えればよいか●
誰に訴えればよいのか 人間か神か 非道な行為により心は引き裂かれる

●Gather ye rosebuds while ye may 薔薇の蕾を摘みなさい●
時はすぐ過ぎる 時を大切に 青春はあっという間 手間取らないで

【John Dowland, 1563-1626】
●Say Love if ever Thou didst find 愛の神よ かつて出会ったことがあるのか●
類い稀な模範をはたし 変わらぬ心を持った人は女神かはたまた女王か

●Frog Galliard 蛙のガリアルド●

●Can she excuse my wrongs? 僕の受けた苦しみ●
美徳の衣にかくれて あの人の心を征服できぬ限り実を結ぶことはない

●Clear or cloudy 晴れても曇っても●
にわか雨の4月 あの人の表情も快い 愛の雨を恵んでおくれ

【Henry Purcell, 1659-1695】
●Chaconne シャコンヌ●

A Morning Hymm 朝の賛歌
朝の最上の供物としてこの賛歌を捧る 私は誓う 神の道を歩むことを

●Lovely Albina 麗しのアルビナ●
愛しいアルヴィナが浜に上がってきた ベルギーの獅子は彼女を和ませる

【John Blow, 1649 -1708】
●The sullen years are past 陰気な時は過ぎ●
ウイリアムとマリアの統治により 安全な軌道をとり世界を直すのだ

●Clarona, lay aside your lute クラローナよリュートを傍らに●
あなたは気品と魅力に満ちている リュートを学ぶことはいらない

●Philander, Do not think of arms フィランダーよ武器を執ろうとおもわないで●
戦いは大胆で強き者のなすべきもの 乙女の心を捕ら 美女の大軍を倒す

14-course Liuto attiorbato = Junji Nishimura 1985
7-course Lute in G = Martin Haycock 1990
14-course Archlute = Martin Haycock 1999



■平井 満美子/ソプラノ
神戸女学院大学音楽学部声楽科卒業。数少ない古楽の歌い手としてその活動は新聞、音楽誌等にて常に高く評価されている。現在までに発売された佐野健二とのデュオCD全ては「レコード芸術」「音楽現代」等の推薦盤に選ばれ、デュオリサイタルに対しては「大阪文化祭本賞」を受賞している。EMC主宰、NHK文化センター講師。
■佐野 健二/リュート
英国・ギルドホール演劇音楽院首席卒業。演奏活動に対し、「ロンドン芸術協会選出新人音楽家」「大阪文化祭賞」等、多数の賞を受ける。2007年、リュート音楽に特化したEMCluteRecordsレーベルを設立、自ら演奏、録音、編集、ジャケットデザインを総合的に行い、発売されたCDは専門音楽誌において優秀録音盤、推薦盤等として評価されている。EMC主宰、相愛大学非常勤講師。

       



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