アーリーミュージックカンパニー
チャペルコンサート
シリーズ2013年
平井満美子&佐野健二
演奏風景、プログラム


第131回
ジョンダウランド第二歌曲集

EMC Chapel Concert
Since 1995
No. 131
John Dowland / The Second Booke of Songs or Ayres

2013.2.14 19:30pm
Senri Hankyu Hotel Ivy Chapel
The Early Music Company





ダウランド、第二歌曲集
 ルネサンス後期、すなわちイギリスではエリザベス朝に於て、ジョン・ダウランドは 自他ともに認める最高のリュート奏者でした。しかし彼は宗教上の理由から、念願のエリザベス女王付のリュート奏者にはなれず、その失望感を胸に、生涯の殆どをヨーロッパ各地を巡り歩いた不遇の才人とされています。
 ダウランド特有のメランコリックな響きはこのような彼の生い立ちが原因といわれています。ルネサンス期にはメランコリーは一種の病としてとらえられておりました。しかし同時にメランコリーは芸術家には不可欠な鋭敏な感性の源ともされており、その事をダウランドがふまえていたか否かは別とし、彼特有のメランコリー気質は当時の風潮と同調しました。ダウランドは不遇を憂愁に置き換え、メランコリーを演じ、楽しんでいたのかもしれず、ともあれ人々は“ダウランドの憂愁”に身をゆだねたのでした。
 ダウランドは四巻のリュート歌曲集を残しました。第一歌曲集は好評の内に版を重ね、多くのリュート奏者に多大な影響を与え、イギリスルネサンス後期に華開いたリュートソング楽派の先駆けとなりました。その第一歌曲集の好評に気を良くしたダウランドは気合いの入った第二歌曲集を1600年に出版します。彼の代表作品の多くはこの第二巻歌曲集に見ることができます。
 二巻には22曲が収められており、第一巻の歌曲はすべてリュート伴奏付きの4声体というルネサンスのマドリガル様式であったのに対し、二巻はそのマドリガル様式に加え、リュート付の旋律とバスの2声曲、5声とリュート、リュート伴奏の対話形式、といった新しい試みの楽曲も収められており、ダウランド渾身の曲集となりました。
 今日、楽器は7コース・リュートと9コース・オルファリオンを使います。7コースリュートは典型的なルネサンスタイプのリュートでダウランドの作品の多くはこの楽器を前提に書かれています。オルファリオンはリュートの代替楽器としてルネサンス期にヨーロッパで考案された楽器です。リュートと同じ調弦ながら、ガット弦ではなく金属弦が張ってあり、音色の違い、そして形態の美しさが楽しめる楽器として一時期もてはやされました。ダウランド歌曲集の表紙にも「リュートまたはオルファリオンの為に」と明記されています。しかし、細い金属弦を張ったオルファリオンはリュートよりも繊細で気難しい楽器であり、その扱いの困難さからリュートほど永きに渡り愛好される事はありませんでした。





The Second Booke of Songs or Ayres
《 John Dowland 1563-1626 》

●悲しみよ、とどまれ Sorrow stay●
憐れみよ 今こそ僕を助けてくれ 終わりなき苦痛に陥らないでくれ
ああ 僕は望みも助けもなく ひたすら落ちていく
立ち直る日は二度とこない

●わが恋人が泣くのを見た I saw my lady weep●
ああ 何よりも美しい人 悲しみもあの人にあっては美しい
涙は心を痛め 殺すもの 歎きにおいて人に優ろうとしないでおくれ

●Sir John Langton's Pavan ラントン卿のパバーヌ●

●Preludium プレリュード●
●透明な涙よ Go crystall tears●
おまえの哀れみの力で しおれた花が露を得て生き返るように
あの人の心に僕のことを生き生きと思いださせておくれ

●時の長男として Times eldest son●
●それでは坐り Then sit thee down●
●他の者たちが When others sing venite●
老いとは安らぎ 若者には過去の名誉を説きながら
自分ではろくに働きも出来ぬ
王女様には「エリザベス万歳」で気に入っていただくのが一番だ

●Farewell (An "In Nomine") 別れ●

●流れよ わが涙 Flow my tears●
夜の黒い鳥が歌う闇の中で 僕はひとり打ちしおれて生きよう
幸いなるかな 地獄に落ちてこの世の蔑みを感じえぬ者よ

使用楽器
7-course Lute = Paul Thomson 1986 A=405
9-course Orpharion = Stephan Barber 1990




■平井 満美子/ソプラノ
神戸女学院大学音楽学部声楽科卒業。数少ない古楽の歌い手としてその活動は新聞、音楽誌等にて常に高く評価されている。現在までに発売された佐野健二とのデュオCD全ては雑誌「レコード芸術」「音楽現代」等の推薦盤に選ばれ、デュオリサイタルに対しては「大阪文化祭本賞」を受賞している。アーリーミュージックカンパニー主宰、NHK文化センター講師。
■佐野 健二/ルネサンスリュート、オルファリオン
英国・ギルドホール演劇音楽院首席卒業。演奏活動に対し、「ロンドン芸術協会選出新人音楽家」「大阪文化祭賞」等、多数の賞を受ける。2007年、リュート音楽に特化したEMCluteRecordsレーベルを設立、自ら演奏、録音、編集、ジャケットデザインを総合的に行い、発売されたCDは専門音楽誌において優秀録音盤、推薦盤等として評価されている。EMC主宰、相愛大学非常勤講師。
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■今泉 仁志/バス
大阪音楽大学卒業。同大学院歌曲専攻修了。大学在学中よりテレマン室内合唱団に所属し受難曲のイエス役を初め多くの演奏会でソリストを務める。ケルト系の伝承歌も学び、古楽演奏へのアプローチの糧の一つとし、ソロ、アカペラ・アンサンブルなど様々な演奏形態を展開している。日本語の歌を中心としたソロCDアルバム「ダニー・ボーイ」をリリース。タコタコシンガーズ主宰。
         



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