アーリーミュージックカンパニー
チャペルコンサート
シリーズ2012年
平井満美子&佐野健二
演奏風景、プログラム


第130回
Shakespeare's Christmas

EMC Chapel Concert
Since 1995
No. 130
Shakespeare's Christmas

2012.12.13 19:30pm
Senri Hankyu Hotel Ivy Chapel
The Early Music Company
www.emclute.com/





 キャロル “ Carol 讃美歌 ” とは神を讃える歌。古今東西のキリスト教徒は神様への讃美を様々な音楽にのせて表しました。教会は人々の生活の中心であり、多くの人が集まる場所、一種の社交場でありました。そんな教会で信仰を表す歌にみんなの知っている音楽が使われる事はごく自然な成り行きであり、多くのフォークソングの旋律がキャロル集には収められています。旋律の心地よさゆえに世界中で親しまれているイギリスのはやり歌には、地域や時代差で色々な歌詞を見い出すことができます。俗っぽい恋の歌であるイギリス・ルネサンス・バラードの代表グリーンスリーブスも、キャロル集に於ては新年を祝う歌詞に変えられて載せられています。クリスマスの季節には多くのはやり歌の替え歌が救い主の誕生を祝ったのです。

 ウィリアム・シェイクスピア(1564-1616)の時代、すなわちエリザベス一世 (1533-1603) の統治化のイギリスでは音楽は王侯貴族から庶民までに広く浸透していました。上流社会ではリュートを嗜む事を自慢とし、庶民は簡素な楽器をかき鳴らし、人々は生活の悲喜交々を楽の音に託しました。シェイクスピア劇からも500ヶ所以上の音楽に関するせりふを見つけることが出来ます。これらは、舞台で役者が登場人物の心情や情景を歌ったり舞踏会の場面で楽士演奏等の現実的な音楽、そして場面転換や回想回想部分で奏される微妙に揺れる恋心等を表現する抽象的なイメージ音楽、に大別されます。現代の様に劇場に電気仕掛けの設備や様々な照明のない当時、多くの情景描写は観衆の想像力に委ねられており、音楽は想像力を膨らます助けとなり、エリザベス朝演劇における楽士たちの存在は現代以上に重要であった事と推察されます。

 リュートは日本や中国の琵琶とも祖先を同じくするアラビア起源の撥弦楽器です。ヨーロッパに於いては、中世からルネサンス、バロック期にかけて、その姿と音色の美しさから音楽の中心的な存在として愛好されました。オルファリオンはリュートと同じ調弦ながら金属弦が張られており、音色の違いを楽しめたリュートの代替楽器です。その姿も理想の楽器としてルネサンス期の西洋で作り出されました。

 今宵はシェイクスピアの劇音楽とイギリスルネサンスのキャロルの数々をリュートとオルファリオンの響きと共にお楽しみ下さい。






Shakespeare's Christmas

《English Folk Carols》
愛は甦る Love is Come Again
忘れるな Remember
ウェックスフォード・キャロル Wexford Carol

《Shakespeare's Music》
Kemp's Jig ケンプのジグ / Anon.
≪オセロー≫
Willow song 柳の歌 / Anon.

≪お気に召すまま≫
Under the greenwood tree 緑の木の下で / Anon.
It was a lover and his lass それは恋人たち / Thomas Morley

≪十二夜≫
Farewell, dear love さよなら、いとしのひとよ / Robert Jones
When that I was and a little tiny boy 俺が小さな餓鬼のころ / Anon.

A Fancy ファンシー / John Dowland

《English Folk Carols》
コヴェントリー・キャロル Coventry Carol
向こうの森の中に Down in yon forest
リュートブック・ララバイ Lute Book Lullaby
そっと揺らして Rocking

使用楽器
9-course Orpharion : Stephan Barber 1990
7-course Lute : Paul Thomson 1986


●平井満美子/ソプラノ
 神戸女学院大学音楽学部声楽科卒業。卒業後、古楽の演奏に興味を移し研究を始め、E.カークビー、J.キャッシュ、C.ボットらに学ぶ。現在、ルネサンスよりバロックを中心に、イギリス、フランス、イタリア、スペイン、ドイツの幅広いレパートリーを持つ、数少ない古楽の歌い手として活動している。多くのコンサートと録音を行い、その演奏は新聞、音楽誌等にて常に高く評価されている。現在までに発売された佐野健二とのデュオCD全ては雑誌「レコード芸術」の推薦盤に選ばれ、デュオリサイタルに対しては「大阪文化祭本賞」を受賞している。EMC主宰、NHK文化センター講師。

●佐野 健二/ バロックギター、テオルボ
英国・ギルドホール演劇音楽院首席卒業。ギターを岡本一郎、H.クワイン、B.オー、J.ブリームの各氏、リュートをA.ルーリー、N.ノース、J.リンドベルイの各氏に師事。演奏活動に対し、「ロンドン芸術協会選出1978年度新人音楽家」「大阪文化祭賞」等、多数の賞を受ける。現在、ルネサンス、バロック期の撥弦楽器を中心に、独奏・伴奏・通奏低音奏者として演奏、録音活動を行っているが、そのレパートリーは民族音楽より現代音楽にまで及んでいる。2007年、リュート音楽に特化したEMCluteRecordsレーベルを設立、自ら演奏、録音編集、ジャケットデザインを総合的に行い、発売されたCDは専門音楽誌において優秀録音盤、推薦盤等として評価されている。 EMC主宰、 相愛大学非常勤講師。




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