アーリーミュージックカンパニー
チャペルコンサート
シリーズ2012年
平井満美子&佐野健二
演奏風景、プログラム


第127回
巡礼の慰め/ダウランド最終歌曲集1612

EMC Chapel Concert
Since 1995
No. 127
A Pilgrimes Solace / John Dowland

2012.6.21 19:30pm
Senri Hankyu Hotel Ivy Chapel
The Early Music Company





 エリザベス朝における最高のリュート奏者ダウランド(1563-1626)は、生涯に4巻のリュート歌曲集を出版しました。1597年に出版された第一巻は好評につき再販を重ね、イングリッシュ・リュート・ソング楽派ともいえるイギリス・ルネサンス音楽を代表するジャンルの確立に貢献しました。
1600年にはリュート歌曲集第二巻が出版されます。第一歌曲集では全ての曲が4声体とリュートパートであったのに対して、第二巻では全てにリュート伴奏が記されているのは同じですが、旋律とバスの二重奏が8曲、4声体12曲、5声体2曲と変化に富み、「流れよ我が涙」をはじめとするダウランドの代表作品が数多く収められています。
 1603年に出版された最新の曲集と名付けられた第三巻には、4声体に加え5声体の曲や新しい様式の対話形式の曲、が含まれています。
   そして、1611年にはダウランドの最終歌曲集となる「巡礼の慰め」が出版されました。第一巻、第二巻、第三巻としてきた歌曲集のタイトルを「第四巻」ではなく「巡礼の慰め」としたのは彼自身の人生を巡礼に準えたのかもしれません。内容的にはルネサンス的な有節歌曲に加え、イタリア初期バロックの影響を色濃く受けたモノディースタイル、対話形式、ソロ歌曲から合唱形式に繋がる曲、トレブルガンバのオブリガート付の曲等、新時代の音楽に共感を覚えるダウランド晩年の心情が感じられます。




A Pilgrimes Solace / John Dowland

 【Voice & Lute】
●Sweet stay awhile きみよ まだ帰らないでおくれ●
どうかまだここにいて 君の至福の接吻 この喜びは
生まれたばかりなのに 死なねばならぬ

●Disdain me still いつまでも蔑んでおくれ●
絶望しながら ぼくは愛しつづけよう 報われると飽きるのが愛
僕の悲しみを笑ってくれ 軽蔑こそ乳母なのだ

●Tell me true love 言っておくれ まことの愛よ●
想い 言葉 誓い どこにおまえを探せば良いのか
真実の愛は不死のはず どうして現代から追放されたのか

●A Galliard to Lachrimae ラクリメのガリアルド●
●Stay, time awhile thy flying 時よ しばらくは飛ぶのを待て●
死にゆくぼくを哀れんでおくれ とどめを刺すのは「時」しかない
祝福されて死ぬ方が 悲しみに生きるよりましだ

●Thou mighy God 1.part. 偉大なる神よ ●
偉大なる神よ すべての悪を正したもう神よ
死にゆく者の歌の「忍耐」に耳を傾け給え
ヨブがその子らを 土地を 財産を失いし時
「忍耐」こそが その法外な苦しみを和らげてくれました
そして悲しみが洪水のごとき速さで押し寄せたとき
慰めが再び訪れるまで 「希望」が彼の心を支えたのです
●What David's life 2.part. ダビデの命が ●
ダビデの命がサウルによって幾度もねらわれ
山なす災いが彼を取り囲んだときも
恐るべき復讐を ダビデは決して考えなかった
苦難の中から「希望」が常に彼を救い出したのだ
● When the poor Cripple 3.part. 脚のなえた哀れな男が ●
何十年もの貧困と痛みに苦しんでいたが
キリストの姿に眼をとめたそのとき
彼はいやされ ふたたび安楽な身となった
ダビデも ヨブも 脚なえも これ以上に苦しみはしなかった
キリストよ 私に忍耐と希望の救いを与え給え

【Voice & Lute with Treble Viol & Base Viol】
●Go nightly, cares 去れ 夜ごとの悩みよ●
苦しみの重さは僕の旨にのしかかる 僕が欲しいのは死だ
ようこそやさしい死よ むなしい世界よ さようなら

●From silent night 沈黙の夜●
僕の嘆きのミューズは悲しみ 苦しみ 悩みを奏でる
絶望の調べでこの世を満たす

●Lasso vita mia 倦み疲れた わが命よ●
僕を死なせておくれ 惨い愛が無数の傷で
僕の心をやつれさす 殉教の苦しみを味わわせてくれ

使用楽器
14-course Liuto attiorbato = Junji Nishimura 1985
Renaissance treble viol by Michael Plant 1994
14-course Liuto attiorbato = Junji Nishimura 1992
Renaissance base viol by Cask


■平井 満美子/ソプラノ
 神戸女学院大学音楽学部声楽科卒業。数少ない古楽の歌い手としてその活動は新聞、音楽誌等にて常に高く評価されている。 現在までに発売された佐野健二とのデュオCD全ては雑誌「レコード芸術」「音楽現代」等の推薦盤に選ばれ、デュオリサイタルに対しては「大阪文化祭本賞」を受賞している。 アーリーミュージックカンパニー主宰、NHK文化センター講師。

■佐野 健二/リウトアテオルバート(アーチリュート)、ルネサンスバスガンバ
 英国・ギルドホール演劇音楽院首席卒業。演奏活動に対し、「ロンドン芸術協会選出新人音楽家」「大阪文化祭賞」等、多数の賞を受ける。 2007年、リュート音楽に特化したEMCluteRecordsレーベルを設立、自ら演奏、録音、編集、ジャケットデザインを総合的に行い、発売されたCDは専門音楽誌において優秀録音盤、推薦盤等として評価されている。EMC主宰、相愛大学非常勤講師。

■大西 万喜/ルネサンストレブルガンバ
 大阪音楽大学音楽学部作曲学科楽理専攻卒業。 大学入学とともにリコーダーを始めるが、次第に興味をヴィオラ・ダ・ガンバに移し、2004年度イタリア政府給付金留学生として、イタリア国立トリノ音楽院古楽器科ヴィオラ・ダ・ガンバコースに入学、2006年度 野村国際文化財団芸術文化助成金授与されイタリアにおいて研鑽を積む。 2010年に帰国、大阪を中心に演奏活動を行っている。

■小出 智子/リウトアテオルバート(アーチリュート)
 同志社大学文学部英文学科卒。 14歳でクラシックギターを始め、様々なコンクールに入選。大学卒業後、古楽に興味を移し、アーリーミュージックカンパニーにてリュートと古楽全般を学ぶ。 現在、関西における数少ないリュートのソリスト、通奏低音奏者として各地で演奏活動を行っているが、EMC演奏助手としても多くの古楽愛好家の伴奏者としての信頼を得ている。




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