アーリーミュージックカンパニー
チャペルコンサート
シリーズ2012年
平井満美子&佐野健二
演奏風景、プログラム


第126回
イタリア初期バロックの響き

EMC Chapel Concert
Since 1995
No. 125
Italian Early Baroque

2012.4.19 19:30pm
Senri Hankyu Hotel Ivy Chapel
The Early Music Company





 16世紀後半から17世紀初頭にかけて、時代はルネサンスよりバロックへと移り変わって行きました。
 音楽もルネサンスの和声を楽しむポリフォニ一(多声)様式に代わり、言葉の抑揚と意味、感情の表出を重んじるモノディー様式という伴奏付き単旋律歌曲が生まれ、新しい時代の歌曲が生み出されました。そして声楽曲の延長上にあったルネサンスの器楽曲も新しい響きを求め、トッカータに代表されるバロック特有の器楽曲が数多く作曲されました。
 ジュリオ・カッチーニは1602年(フィレンツェ暦1601年)に第一歌曲集 "新音楽 Le Nuove Musiche" を出版しています。モノディー様式の秀作が収められており、当時の歌唱法、伴奏楽器にまで言及した序文は当時の演奏法に関する重要な文献とされています。
 シジスモンド・ディンディアの作品は、当時のほとんどの音楽形式による声楽曲を網羅しており、不協和音を巧みに扱ったドラマティックな作品からは初期バロック特有の斬新さが感じられます。  ジョバンニ・ジロラモ・カプスペルガーの父親はドイツ貴族であるものの、彼自身は生涯イタリアで過ごし、当時の最も進歩的なリュート音楽作曲家として活躍しました。
 ジャコモ・カリッシミも、生涯イタリアで活躍した大音楽家ですが、教師としても有能で、彼の業績とされる室内カンタータ、オラトリオ、そしてレチタティーヴォの発展は、ヨーロッパ全土に影響力を及ばしたと言われています。
  アレッサンドロ・ピチニーニはルネサンス末期から初期バロックにかけてのイタリアにおけるリュート、テオルボの名手として有名です。
 バルバラ・ストロッツィは初期イタリアバロックの女流作曲家です。代表作「私の涙」に見られる大胆な和声の響きからは、まさにバロックの語源である「歪な真珠」のイメージが感じ取れます。




【Giulio Caccini カッチーニ 1545 - 1618】

●Dovro dunque morire 私は死ななければならないのか●
死ぬ前に「君は私の命」と告げれないのは何という惨めさだ

●Amor, io parto 愛の神よ 我去り行かん●
心の憔悴を彼女が楽しむ なんと冷酷な魂よ

《Sigismondo d'India c1582 - 1629】

●Torna il sereno zefiro 穏やかな西風がもどり●
鳥は楽しげに歌う でも私の孤独な心に春は来ない

●Piangono al pianger mio 私の涙に獣たちも●
この世のすべてが私の災いに感化され 私は哀れな人に

【Giovanni Girolamo Kapsperger 1580 - 1651】
●Toccata 4 トッカータ4番●

【Giacomo Carissimi カリッシミ 1605 - 1674】
●Deh, memoria ああ思い出よ●
貴方のすむ暗闇の墓へ 連れて行っておくれ

●No, no,mio core いけない私の心よ●
私の心よ 愛の海に飲み込まれるな あなたは欲望の帆をはり・・

【Alexandri Piccinini ピチニーニ 1566 - c1638】

●Passacaglia パッサカリア●

【Barbara Strozzi ストロッツィ 1619 - ? 】

●Lagrime mie 私の涙●
死にも情けがあるのなら我が命を奪え 悲しみの目よなぜ泣かぬ

●Ardo in tacito foco 静かな情念が燃え●
嫉妬深い心は愛を許さない 私は炎にとけ灰になる

使用楽器 14-course Liuto attiorbato = Junji Nishimura 1985
14-course Chitarrone = EMS 2010



●平井 満美子/ソプラノ
 神戸女学院大学音楽学部声楽科卒業。卒業後、古楽の演奏に興味を移し研究を始め、E.カークビー、J.キャッシュ、C.ボットらに学ぶ。現在、ルネサンスよりバロックを中心に、イギリス、フランス、イタリア、スペイン、ドイツの幅広いレパートリーを持つ、数少ない古楽の歌い手として活動している。多くのコンサートと録音を行い、その演奏は新聞、音楽誌等にて常に高く評価されている。現在までに発売された佐野健二とのデュオCD13点全ては雑誌「レコード芸術」「音楽現代」等の推薦盤に選ばれ、デュオリサイタルに対しては「大阪文化祭本賞」を受賞している。EMC主宰、NHK文化センター講師。
●佐野 健二/リウトアテオルバート、キタローネ
 英国・ギルドホール演劇音楽院首席卒業。ギターを岡本一郎、H.クワイン、B.オー、J.ブリームの各氏、リュートをA.ルーリー、N.ノース、J.リンドベルイの各氏に師事。演奏活動に対し、「ロンドン芸術協会選出1978年度新人音楽家」「大阪文化祭賞」等、多数の賞を受ける。現在、ルネサンス、バロック期の撥弦楽器を中心に、独奏・伴奏・通奏低音奏者として演奏、録音活動を行っているが、そのレパートリーは民族音楽より現代音楽にまで及んでいる。2007年、リュート音楽に特化したEMCluteRecordsレーベルを設立、自ら演奏、録音編集、ジャケットデザインを総合的に行い、発売されたCDは専門音楽誌において優秀録音盤、推薦盤等として評価されている。相愛大学非常勤講師。



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