アーリーミュージックカンパニー
チャペルコンサート
シリーズ2012年
平井満美子&佐野健二
演奏風景、プログラム


第125回
古き良きイギリスの愛の歌

EMC Chapel Concert
Since 1995
No. 125
English Love Songs from the olden time

2012.2.16 19:30pm
Senri Hankyu Hotel Ivy Chapel
The Early Music Company





 アーリーミュージックカンパニー企画の千里阪急ホテルにおけるチャペルコンサートシリーズは皆様のおかげをもちまして今年2012年で18年目を数えます。
   今回は愛すべきイギリスの歌曲を集めました。愛にも純愛,友愛、溺愛、郷土愛、兄弟愛、親子愛、情愛、人類愛、哀しい愛、神への愛と様々あります。と考えれば古今東西のほとんどの歌曲は愛の歌という事になるのですが、イギリス音楽の特徴である美しい旋律は、その愛の意味合いに時には寄り添い、助長し、また時には和らげ、長年歌い継がれる名曲を作り出してきました。そしてそれらの魅力的な旋律はルネサンスの器楽曲の題材としても用いられ、ディヴィジョンと呼ばれるルネサンス特有の装飾法をも発展させました。
 ジョン・ダウランドは、エリザベス朝における最高のリュート奏者であり、生涯に4巻のリュート歌曲集を出版しました。ほとんどの曲はリュート伴奏付きの4声の合唱曲として作られていますが、ダウランドの音楽もイギリス音楽特有の旋律の美しさを持ち、リュート伴奏付きのソロ歌曲として演奏することができます。「目覚めよ甘い愛よ」は1597年に出版された第一歌曲集、「言葉であの人に訴えるべきか」と「このふるえる影に」は1612に出版された最終歌曲集である「巡礼の慰めA Pilgrimes Solase」に収められています。
 ヘンリー・パーセルはわずか36年の短い生涯に800曲もの作品を作り出したイギリス・バロック時代に於ける最大の作曲家と言われています。彼の音楽で特に注目すべきジャンルは劇場音楽と呼ばれるものであり、演劇に付随する劇音楽に彼の才能は発揮されています。「私ほど幸せな若者は」は劇「妻は御すべし Rule a wife and a wide」、「街から二丁も離れた所で」は「真似事の結婚 The mock marriage」の劇中歌ですが、パーセルの 声楽曲における英語の表現能力の巧みさが魅力となっています。
 今宵、ルネサンスとバロックの時代に生まれ、時を超え、今なお私たちを魅了するイギリスの愛の歌たちをお楽しみ下さい。




《Folk Songs》
●The Border Lament 国境の嘆き●
恋人がすてきな隠れ家をくれた しかし王は彼を殺し家も壊した
私は恋人の身体を墓に横たえ きれいな芝生で覆った

●The Oak and The Ash カシワとトネリコ●
ロンドンにたどり着いた娘 彼女は都会に馴染めない
ああカシワよ トネリコよ 美しいツタよ 彼女は故郷を想う

●The Spanish Pavin スペイン風パヴァーヌ●

●The Rose of Tralee トラリーのバラ●
緑の山に月がのぼり 青い海へ太陽は傾く すずしい陰はマントのごとく
愛しのマリー トラリーのバラのごとく美しく 可愛い

《John Dowland 1563-1626》
●Shall I strive with words to move?● 言葉であの人に訴えるべきか
喜びもなく 耳を傾けてもらえなくても語りかけるべきか
やさしい愛よ 手をかしておくれ あの人が僕の恋心に冠をくれるよう

●Awake sweet love 目覚めよ甘い愛よ●
我が身に初めて苦しみを与えたその目よ あの人は我が愛に報いた
絶望の渕から甦っただけに 一層甘美である

●A Fancy ファンシー●

●In this trembling このふるえる影に●
私の翼がゆらすあの枝の影の中で 神の歌を私は歌う
暗闇を心から取り 天地を創造し万物をうみだしたもうた方を讃えながら

《Henry Purcell 1659-1695》
●Not all my torments 我が苦悩のすべて●
私の苦しみの全てを持ってしても 貴方の同情心を動かす事は出来ない
私はこの苦しみを墓場まで持って行こう 絶望していても私は愛する

●Rond ロンド●

●There's not a Swain 私ほど幸せな若者は●
このあたりで私ほど幸せな若者は居ない 君が微笑んでくれさえすれば
しかし君は冷たく 僕の心はいつもみだれ恐れんでいる

●Twas within a furlong of Edinboro' town 街から二丁も離れた所で●
陽気なジョッキーはジェニーに言いよる しかし彼女は拒絶する
結婚したらあんたは私を捨てるに違いない と

●Lovely Albina 麗しのアルヴィナ●
愛しいアルヴィナが浜に上がってきた 幾倍にも美しくなって
名高いベルギーの獅子は勇敢にも彼女を和ませる

使用楽器 7-course Lute in G = Martin Haycock 1990
     14-course Archlute = Martin Haycock 1999




●平井 満美子/ソプラノ
 神戸女学院大学音楽学部声楽科卒業。卒業後、古楽の演奏に興味を移し研究を始め、E.カークビー、J.キャッシュ、C.ボットらに学ぶ。現在、ルネサンスよりバロックを中心に、イギリス、フランス、イタリア、スペイン、ドイツの幅広いレパートリーを持つ、数少ない古楽の歌い手として活動している。多くのコンサートと録音を行い、その演奏は新聞、音楽誌等にて常に高く評価されている。現在までに発売された佐野健二とのデュオCD13点全ては雑誌「レコード芸術」「音楽現代」等の推薦盤に選ばれ、デュオリサイタルに対しては「大阪文化祭本賞」を受賞している。EMC主宰、NHK文化センター講師。
●佐野 健二/ルネサンスリュート、アーチリュート
 英国・ギルドホール演劇音楽院首席卒業。ギターを岡本一郎、H.クワイン、B.オー、J.ブリームの各氏、リュートをA.ルーリー、N.ノース、J.リンドベルイの各氏に師事。演奏活動に対し、「ロンドン芸術協会選出1978年度新人音楽家」「大阪文化祭賞」等、多数の賞を受ける。現在、ルネサンス、バロック期の撥弦楽器を中心に、独奏・伴奏・通奏低音奏者として演奏、録音活動を行っているが、そのレパートリーは民族音楽より現代音楽にまで及んでいる。2007年、リュート音楽に特化したEMCluteRecordsレーベルを設立、自ら演奏、録音編集、ジャケットデザインを総合的に行い、発売されたCDは専門音楽誌において優秀録音盤、推薦盤等として評価されている。相愛大学非常勤講師。



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