アーリーミュージックカンパニー
チャペルコンサート
シリーズ2011年
平井満美子&佐野健二
演奏風景、プログラム


第121回
イタリア初期バロック「西風戻り」

EMC Chapel Concert
Since 1995
No. 121
Zefiro torna

2011.6.23 19:30pm
Senri Hankyu Hotel Ivy Chapel
The Early Music Company





 アーリーミュージックカンパニー・チャペルコンサートシリーズ第121回は、通奏低音付きのソロ歌曲、リュートデュエット、リュート2本の通奏低音による二重唱によるイタリア初期バロックの作品を演奏致します。
   17世紀、音楽は神を頂点とする均整のとれたルネサンス様式から人間中心のバロックの時代へと移り変わり、大胆な主張や新しい手法が生み出されました。文芸復興の国イタリアは音楽の分野でもバロック時代にもヨーロッパ中に多大な影響をあたえました。
v  歌曲に於いては、言葉と音との関係がより重視され、言葉よりも対位法的手法を大事にせざるを得ないルネサンスのポリフォニ一(多声音楽)に代わり、言葉の抑揚や意味、そして感情の表出を重んじる伴奏付き単旋律であるモノディーという様式が登場してきました。そこには言葉と音との結び付き、音楽とは言葉とリズムであり、楽音はそれらをより効果的に助けるものであり、音楽を通じていかに正しく言葉の意味を伝えるかが実践されました。
 ジァコモ・カリッシミはアッシジの礼拝堂の指揮者、ローマの聖アポリナリス教会の楽長といった教会音楽の要職に一生を捧げ、室内カンタータとオラトリオの発展にも寄与し、オラトリオに関しては最初の重要な作曲家とも言われています。
 ルイジ・ロッシはナポリでルネサンス的な音楽の基礎を学びましたが、残された作品は二つのオペラとカンタータ等、バロック特有の作風となっています。特に室内カンタータは17世紀に於ける重要な作品と位置づけられます。
 クラウディオ・メルロ (1533-1604) は後期ルネサンス期に活躍した作曲家、出版業者、そしてオルガニストとして知られています。本日リュートデュオとして演奏するカンツォンはメルロの声楽曲を初期バロックに活躍したリュート音楽家ジォバンニ・テルツィがリュート二重奏に変換し1593年出版のリュート曲集に収めた作品です。
 シジズモンド・ディンディアは当時の様々な音楽形式で声楽曲を作曲していますが、その作風はルネサンスの均整のとれたポリフォニー形式から開放された奔放さが感じられます。イタリア初期バロックの最も洗練された作曲家の一人とされています。
 ドメニコ・マツォッキは巨匠モンテヴェルディの次の時代を代表する作曲家です。声楽曲を得意とするその作風はモンテヴェルディ後期の作風を継承しつつ、独自の音楽を融合させた魅力あるものとなっています。
 クラウディオ・モンテヴェルディは本日のタイトルである「Zefiro torna西風戻り」の作曲者です。彼は古い音楽(ルネサンス)の完成度に敬意を払いながらも新しい音楽(バロック)の必然性と可能性を自ら作品で証明した大作曲家です。作品はマドリガーレ、宗教曲、オペラと多岐にわたり、新しい様式をふんだんに取り入れた数々のオペラは近代オペラの始まりとも言われています。




《voice & lute》
● メアリー女王のラメントIl lamento di Maria di Scozia ●
Giacomo Carissimi (1605-1674)
私はスチュアートの血族であり王妃なのだ
最後の時に話しをさせておくれ 私の潔白を 真実を
高慢なエリザベスよ 私は苦しみのうちに死んでゆく
静けさの後 彼女の心は神と一体となった

●嫉妬 La Gelosia●
Luigi Rossi (1597-1653)
それは少しずつ蛇のように私の心に忍び寄る
まことの愛の炎を消さないでおくれ
私に何をのぞむのだ 嫉妬よ 私から離れておくれ

《lute & lute》
●カンツォン Canzone / Claudio Merulo[G.A.Terzi 1593]●

《2 voices & 2 lutes》
●まことの思いを胸にひめて Porto celato●
Sigismondo D’India (1582-1629)
心をこがすそのわけを明かすことは出来ない
魂は安らぎの時はなく 心はただ涙にくれるばかり
愛を貫かんと痛みにたえ
胸の炎はいよいよ烈しくもえつのるのだ

● 泣けよ、目よ、泣け Piangete, occhi, piangete●
Domenico Mazzochi (1592 -1665)
私たちを救おうと苦しみ 耐えるあの方の慈悲と愛に泣け
汚れなき足裏を刺し貫いた釘に泣け
天なる創造主のためにこそ熱い涙を今流せ

● 西風戻り Zefiro torna●
Claudio Monteverdi (1567 -1643)
春のかおりに空気も和み 緑の草花も踊る
愛の調べは山や谷をこだまで返す だが私一人は淋しい森へ行き
このもえる思いと苦しみを泣き そして歌う


使用楽器
14-course Liuto attiorbato = Junji Nishimura 1992
14-course Liuto attiorbato = Junji Nishimura 1985
14-course Chitarrone = EMS 2010
5-course Baroque Guitar = James Bisgood 1982




●平井 満美子/ソプラノ
 神戸女学院大学音楽学部声楽科卒業。卒業後、古楽の演奏に興味を移し研究を始め、E.カークビー、J.キャッシュ、C.ボットらに学ぶ。現在、ルネサンスよりバロックを中心に、イギリス、フランス、イタリア、スペイン、ドイツの幅広いレパートリーを持つ、数少ない古楽の歌い手として活動している。多くのコンサートと録音を行い、その演奏は新聞、音楽誌等にて常に高く評価されている。現在までに発売された佐野健二とのデュオCD13点全ては雑誌「レコード芸術」「音楽現代」等の推薦盤に選ばれ、デュオリサイタルに対しては「大阪文化祭本賞」を受賞している。EMC主宰、NHK文化センター講師。
●進元 一美/ ソプラノ
 京都市立芸術大学音楽学部声楽専攻卒業、同大学院修了。在学中よりバロック音楽に興味を持ち、卒業後イギリス、フランス、イタリア各国で研鑽を積む。バロックアンサンブルとの共演を含め、サロンコンサート、ミュージアムコンサートなど多数出演。宗教曲ではヴィヴァルディ「グローリア」、ヘンデル「メサイア」、バッハ「マタイ受難曲」等ソリストも務める。2008年兵庫県立芸術文化センターにてリサイタルを開催。声楽を高田真奈美、高須礼子、バロック声楽を平井満美子各氏に師事。現在、バロック音楽を中心に演奏活動を行っている
●小出 智子/リウトアテオルバート
 同志社大学文学部英文学科卒。14歳でクラシックギターを始め、渡邊 滋生氏、増井一友氏、稲垣稔氏らにクラシックギターを師事。高校在学中、GLC学生ギターコンクール高校生の部第2位入賞、山陰ギターコンクール入選。大学卒業後、古楽に興味を移し、2003年よりアーリーミュージックカンパニーに参加。以来、佐野・平井両氏の下で研鑽を積む。リュート、19世紀ギター、通奏低音を佐野健二氏に、リュートソングを佐野健二・平井満美子両氏に師事。2004年ポール・オデット氏のマスタークラス受講。現在、EMC演奏助手、ソリスト、通奏低音奏者として関西を中心に活動している。
●佐野 健二/リウトアテオルバート、キタローネ、バロックギター
 英国・ギルドホール演劇音楽院首席卒業。ギターを岡本一郎、H.クワイン、B.オー、J.ブリームの各氏、リュートをA.ルーリー、N.ノース、J.リンドベルイの各氏に師事。演奏活動に対し、「ロンドン芸術協会選出1978年度新人音楽家」「大阪文化祭賞」等、多数の賞を受ける。現在、ルネサンス、バロック期の撥弦楽器を中心に、独奏・伴奏・通奏低音奏者として演奏、録音活動を行っているが、そのレパートリーは民族音楽より現代音楽にまで及んでいる。2007年、リュート音楽に特化したEMCluteRecordsレーベルを設立、自ら演奏、録音編集、ジャケットデザインを総合的に行い、発売されたCDは専門音楽誌において優秀録音盤、推薦盤等として評価されている。相愛大学非常勤講師。



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