アーリーミュージックカンパニー
チャペルコンサート
シリーズ2011年
平井満美子&佐野健二
演奏風景、プログラム


第119回
私の涙

EMC Chapel Concert
Since 1995
No. 119
Lagrime mie

2011.2.24 19:30pm
Senri Hankyu Hotel Ivy Chapel
The Early Music Company





16世紀後半、イタリアでは新しいスタイルの音楽を提唱する人たちの手によりバロッ ク音楽の幕が開けられ始めていました。様々な大胆な試みが行われ歌曲においては言葉と音との関係がより重視され、ルネサンスのポリフォニ一(多声音楽)に代わり、言葉の抑揚や意味、そして感情の表出を重んじる伴奏付き単旋律であるモノディーという様式が生み出されました。
  
 ジュリオ・カッチーニの歌曲集 "新音楽 Le Nuove Musiche" 1602年(フィレンツェ暦1601年)にはモノディー様式に乗っ取った作品が数多く収められており、現在でも愛唱されているイタリア歌曲の名作「アマリリ麗し」もこの曲集に入っています。アマリリは当時も大層愛好され同時代に活躍したナウバッハによる変奏ヴァージョンも残されており、本日は2曲を続けてお聴きいただきます。
 ピエトロ・パオロ・ライモンドの生涯についてはほとんど知られておりませんが、1601年に出版されたリュート曲集に多数収められてたライモンドの作品からは ルネサンス的な舞曲から初期バロック器楽曲の代表とされるトッカータ等、時代様式を反映した作風が感じ取れます。
 ジョバンニ・フェリーチェ・サンチェスの曲では4つの下降音型を延々と繰り返すグラウンドと称される伴奏の上にテキストを高揚させる旋律が次々と歌われていきます。
 ジョバンニ・ジロラモ・カプスベルガーはドイツ人であるのですがイタリアで活躍したリュート奏者であり、その作品はイタリア初期バロックを代表するリュート音楽とされています。
 本日の演奏会タイトルである「私の涙」の大胆な和声の響きは女流作曲家バルバラ・ストロッツィの豊かな創造性と、新しい様式の理念が紡ぎだしたものといえましょう。バロックの語源とされる「歪な真珠」のイメージをお楽しみ下さい。




《Barbara Strozzi ストロッツィ ( 1619-1677) 》
●ひそやかな恋人 L'Amante Segreto●
死なせてくれ 我が目は美しき君の顔を見続ける
君への愛で弱り死に近づいている私を矢で射ぬいてくれ

《Giulio Caccini カッチーニ (1545-1618)》
●アマリリ麗し Amarilli mia bella●
-Giovanni Nauwachナウバッハ-
君こそわが恋人 もし不安におののくのなら矢をとって
この胸を開き心に刻まれた言葉を見よ アマリリこそわが恋人

《Pietro Paolo Raimondo ライモンド (17c)》
●Toccataトッカータ - Pavanigliaパヴァン- Correnteコレント●

《Giulio Caccini カッチーニ (1545-1618)》
●ああ戻り来れ Torna, deh torna●
戻っておくれ 君は何処に隠れているのか 何をしているのか
私の腕に飛び込んで来て! 苦い悲しみが私の心をせめる
どうか 私の声に耳を傾けておくれ

《Giovanni Felice Sancies サンチェス (1600-1679)》
●簒奪者にて暴君 Usurpator tiranno●
リラよ お前の新しい恋人であり暴君である男は
お前の自由を奪い 私の魂を置き去りにする
しかしお前の目や髪はいまだ私の中で輝き心を縛るのだ

《Giovanni Girolamo Kapsberger カプスベルガー (c.1580-1651)》
●トッカータ3番、5番 Toccata No.3 & 5●

《Barbara Strozziストロッツィ ( 1619-1677)》
●新しい恋のよびかけ Chiamata a Nuovi Amori●
ようやく恋の束縛がとけたとたん新しい罠が足を縛る
いたずら好きの愛の神よ 私は逃げないから
私を混乱させるすてきな人がほしい

●私の涙 Lagrime mie●
息も絶えるこの激しい痛みを押し流してくれないのか
わが愛しのリディアは捕らわれの身
死にも情けがあるのなら我が命を奪え 悲しみの目よなぜ泣かぬ

使用楽器
14-course Liuto attiorbato = Junji Nishimura 1985




●平井 満美子/ソプラノ
 神戸女学院大学音楽学部声楽科卒業。卒業後、古楽の演奏に興味を移し研究を始め、E.カークビー、J.キャッシュ、C.ボットらに学ぶ。現在、ルネサンスよりバロックを中心に、イギリス、フランス、イタリア、スペイン、ドイツの幅広いレパートリーを持つ、数少ない古楽の歌い手として活動している。多くのコンサートと録音を行い、その演奏は新聞、音楽誌等にて常に高く評価されている。現在までに発売された佐野健二とのデュオCD全ては雑誌「レコード芸術」「音楽現代」等の推薦盤に選ばれ、デュオリサイタルに対しては「大阪文化祭本賞」を受賞している。NHK文化センター講師。
●佐野 健二/ルネサンスリュート
 英国・ギルドホール音楽院首席卒業。ギターを岡本一郎、H.クワイン、B.オー、J.ブリームの各氏、リュートをA.ルーリー、N.ノース、J.リンドベルイの各氏に師事。演奏活動に対し、「ジョン・クリフォード・ペティカン賞」「ロンドン芸術協会選出1978年度新人音楽家」「大阪文化祭奨励賞」「音楽クリティック・クラブ新人賞」「神戸灘ライオンズクラブ音楽賞」「大阪文化祭賞」(二回)を受ける。現在、ルネサンス、バロック期の撥弦楽器を中心に、独奏・伴奏・通奏低音奏者として演奏、録音活動を行っているが、そのレパートリーは民族音楽より現代音楽にまで及んでいる。相愛大学非常勤講師。



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