EMC
クリスタルチャペルコンサート
シリーズ2010年
平井満美子&佐野健二
演奏風景、プログラム


第117回
英仏のバロックダンス

Crystal Chapel Concert
Since 1995
No. 117
Baroque Dance

2010.10.14 19:30pm
Senri Hankyu Hotel Crystal Chapel
The Early Music Company





本日はようこそご来場下さりありがとうございます。
 クリスタルチャペルコンサート第117回は、「バロックダンス」と題してフランスとイギリスのバロックダンスを歌とリュートと共にお楽しみください。

「英仏の調べ」というタイトルなのに、いきなりスペインの話になるが、つい先日スペインから戻ってきた。バロックダンスの起源を探るにはスペインの17世紀ダンスをスペインで学ばなくてはいけないと思っていた。サラバンド、フォリア、シャコンヌ、パッサカリア、わかっているだけでも、メヌエットやクラントを除く3拍子の舞踏の多く、3拍を1単位としていたカナリーもスペインに関係のあるダンスである。
 5月末英国で情報を得、6月フランスから帰国後、7月から8月のボストンを挟んで9月スペインへ。フラメンコの地で、フラメンコの起源や変遷を考える中で、スペインという国の歴史と舞踏への考察を深めた。宮廷舞踏の多くも、それぞれの起源や変遷がある。人や物の流れと共に宮廷に運ばれ、宮廷舞踏に取り入れられた。 
 フランスの宮廷で、それらは王や宮廷人の好みに整形され舞踏譜や指導書により、その姿が残された。バロックダンスと呼ばれる17から18世紀の宮廷舞踏は、当時の音楽と連動し、当時の美意識を突き詰めつつ細部まで規定された。完璧な形を求めて完成され、それと同時に変化をやめたと言ってもよいだろう。
 フランス宮廷最盛期には、その事によりこの舞踏はヨーロッパ中の宮廷に広がり、フランスが宮廷舞踏の絶対的独占の本山となったのである。英国には舞踏譜や舞踏指導書といった当時の資料が多く残されているが、フランス出身の舞踏教師による振り付けや、その指導書の英訳がかなりの割合を占めている。フランスの舞踏家らは海を渡り、英国の宮廷に仕え、劇場で活躍した。それに呼応して英国の舞踏家らも育ったのである。
 しかしながら枠にきっちりとはめられた事が、この舞踏に美意識や社会の変化に応じる余地を与えず、貴族文化の衰退とあいまって、表舞台からほぼ完全に消え去る原因になったのではないだろうか。
さて話は戻り、セビリアの劇場では、フラメンコとマイムによる物語のステージが幕を下ろし、熱狂した聴衆の拍手が、1拍目で足を床に打ちつけながら3拍子へと変化して行った。スペインに根付く3拍子のリズム、新しいスタイルを生み出すフラメンコに心から拍手を送った一夜である。



Baroque Dance

女性ソロのアントレ(フォルラーヌ)Entee pour une femme
”Le Carnival de Venise”「ベニスのカーニバル」より
Louis-Guillaume Pecour ぺクール 振付 / Andre Campra カンプラ1660-1744


女性ソロのシャコンヌ Chacone pour une femme
“Phaeton”「ファエトン」より
Louis-Guillaume Pecour ぺクール 振付 / Jean-Baptiste Lully リュリ 1632-1687


愛が戦いを挑むとき Ou l’Amour porte la guerre / Cantate “Daphne”
Andre Campra カンプラ
愛の神はアポロンの声にも飽き あざけりの笑いを浮かべる
打ち負かせよ か弱き神から身を守れ 愛が戦いを挑むとき その勝利は確かに


女性ソロによるスペインのアントレ(ルール)
Entree Espagnolle pour une femme
”L’Europe galante”「優雅なヨーロッパ」より
Louis-Guillaume Pecour ぺクール 振付 / Andre Campra カンプラ


バロックギターの為の組曲ロ短調
Robert de Visee ドヴィゼーca.1655-1732/33
  Suite in b / Prelude - Allemande - Sarabande - Gigue


ラ・シベリーン(ガヴォット) La Cybelline
不詳 . Anon. 振付 / Charles Firbank フィアバンク


バラの館より From Rosie Bow'rs  Henry Purcell 1659-1695
キューピットよ 愛の女神が眠りたもう館から私の所へ舞い降りて
あのひとの心を動かしておくれ 正気を失えば着物と髪の毛を振り乱し
一千回でも死のう  こんなに空しく疲れるよりは


緑の牧場よ(サラバンド) “Verdi prati”  「アルシーナ」より “ Alcine”
Nobuko Yuasa 振付 / Georg Friedrich Handel ヘンデル 1685-1759
森の鳥たちが愛の神を賛美して歌っている 仲睦まじい鳥の夫婦の
讃歌が大気に満ちる そこかしこに木霊する魅力的な声



●湯浅 宣子/バロックダンス
 立教大学卒業。日本聖公会教会音楽学校他で古楽演奏を学ぶ。バロックダンスをP.ウェイト、A.イエペス、K.ピアース、T.ベアード、P.-W.ボーゲスに学ぶ。ルネサンスダンスをP.ディクソン、D.クリックシャンクに学ぶ。古典マイムをS.ボーデンに学ぶ。英国、フランス等でのダンス公演に招聘され毎年出演している。1997年より国内で毎年自主企画公演を行う。2004、06年、英国よりコンソート・デ・ダンス・バロックを招き、国内数都市で公演ツアーを企画・出演。
岡山県立城東高校音楽科、姫路市立パルナソスホールチェンバロ講習会他でダンス講習を担当。国内各地でダンス講習を行うほか、ダンス公演やミュージカルの振り付け、及び舞台衣装を考証、製作。CD「ムルシア:スペイン宮廷の為のフランス舞踏曲集」監修・解説。平成20年度「岡山県芸術文化賞功労賞」受賞。英国コンソート・デ・ダンス・バロック・ダンサー。英国ロスティボリ・ルネサンスダンス・ダンサー。英国アーリーダンス協会会員。欧州舞踏史学協会会員。岡山アーリーダンスクラブ代表。http://emclute.com/yuasa

●平井 満美子/ソプラノ
 神戸女学院大学音楽学部声楽科卒業。卒業後、古楽の演奏に興味を移し研究を始め、E.カークビー、J.キャッシュ、C.ボットらに学ぶ。現在、ルネサンスよりバロックを中心に、イギリス、フランス、イタリア、スペイン、ドイツの幅広いレパートリーを持つ、数少ない古楽の歌い手として活動している。多くのコンサートと録音を行い、その演奏は新聞、音楽誌等にて常に高く評価されている。現在までに発売された佐野健二とのデュオCD全ては雑誌「レコード芸術」「音楽現代」等の推薦盤に選ばれ、デュオリサイタルに対しては「大阪文化祭本賞」を受賞している。NHK文化センター講師。

●佐野 健二/リウトアテオルバート、バロックギター
 英国・ギルドホール音楽院首席卒業。ギターを岡本一郎、H.クワイン、B.オー、J.ブリームの各氏、リュートをA.ルーリー、N.ノース、J.リンドベルイの各氏に師事。演奏活動に対し、「ジョン・クリフォード・ペティカン賞」「ロンドン芸術協会選出1978年度新人音楽家」「大阪文化祭奨励賞」「音楽クリティック・クラブ新人賞」「神戸灘ライオンズクラブ音楽賞」「大阪文化祭賞」(二回)を受ける。現在、ルネサンス、バロック期の撥弦楽器を中心に、独奏・伴奏・通奏低音奏者として演奏、録音活動を行っているが、そのレパートリーは民族音楽より現代音楽にまで及んでいる。相愛大学非常勤講師。


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