EMC
クリスタルチャペルコンサート
シリーズ2010年
平井満美子&佐野健二
演奏風景、プログラム


第116回
イングリッシュ・デュエット

Crystal Chapel Concert
Since 1995
No. 116
The English Duet

2010.8.5 19:30pm
Senri Hankyu Hotel Crystal Chapel
The Early Music Company





本日はようこそご来場下さりありがとうございます。
 クリスタルチャペルコンサート第116回は、「イギリスのデュエット」と題してルネサンス後期とバロックのイギリス音楽を二人のソプラノ、二人のリュートで演奏致します。

 エリザベス女王時代のイギリスは、すべてに於いて華やかな時代でありました。 音楽は総ての階級の人々に愛され、 王族や貴族は優れた音楽家を召し抱え、また自らも音楽をたしなむ事を自慢とした時代でもありました。エリザベス女王自身もヴァージナル(チェンバロ)の名手であり、踊りにも精通し、リュートを構えたポートレートも残されています。
 当時愛好された楽器は管弦打と多岐にわたっていますが、中でもリュートは独奏、伴奏、アンサンブルにと、当時のすべての音楽形態に対応できる楽器として愛好されました。優れたリュート奏者たちの活躍が、イギリスルネサンス音楽の黄金時代を築き上げたといっても過言ではありません。

 本日演奏するオルファリオンとリュートの二重奏曲は16世紀後半に活躍したジョン・ジョンソンの作品です。彼の生涯はほとんど知られておりませんが、多くのリュート二重奏曲が残されています。
 ロバート・ジョーンズはイギリス後期ルネサンスを代表するリュート音楽家であり、当時のイギリスにおいて最も重要なジャンルであるリュートソング曲集を5巻出版しています。 作風にはルネサンス後期に花開いたリュートソング楽派の様式を踏襲しつつも新しいイタリア趣味のスタイルも巧みに取り入れています。
 イギリスマドリガルの作曲家として有名なトーマス・モーリーもリュート歌曲集に手を染めていますが、本日は無伴奏の2声のカンツォネッタをお聴きいただきます。

 17世紀にはチャールズ2世が即位しますが、大変に裕福な情勢は変わらず、風俗に対しては以前より寛大な風潮が人々に様々な娯楽を求めさせました。音楽に関しては、もともと舞台芸術好きなイギリス国民は演劇と音楽を結びつけました。音楽が自由に挿入されている音楽付き演劇が大層流行ったのです。
 そんな時期、「イギリスのオルフェウス」と呼ばれたヘンリー・パーセルは現れました。彼のメロディーメーカーとしての才能と、英語を音楽に結びつける卓越した手腕は、まさに当時のイギリス音楽が求めていた全てを満足させたのでした。今日お聴きいただく4曲の2重唱は劇音楽やセミオペラの挿入歌として作曲されたものです。

 では今宵、古き良き時代のイギリスの二重奏をお楽しみください。



The English Duet

●女王の旋律 The Queens Treble / John Johnson (16C.)●

●いとしいケイト Sweete Kate / Robert Jones 1577-1617●
ケイトは僕を痛めつけ逃げた 待って!と僕は叫んだ
愚かな男、誓いはお遊び程度ね 彼女の言葉は刃となり僕の胸を切り刻む

●ウィルはママに話した Will said to his mammy / R. Jones●
愚かなウィルはやっと結婚したものの 頬は痩せこけ後悔ばかり
口には出せないが結婚は身体と心の痛みである

●フラットパヴァーヌとガリアルド The Flatt Pavion & Galyerd / J. Johnson●

●美しいニンフよ Sweet Nimphe / Thomas Morley 1557-1602●
美しいニンフよ 貴方の恋人のところへおいで 私たちの愛を見つけよう
夜啼鶯が気ままに愛をささやきあうこの場所で聴こう 彼女の想いを

●貴方の先を僕は歩いて I go before my darling / T. Morley●
狭い通りにある木陰 やさしくキスをして
気まぐれな恋人たちのようにふざけあおう

《Henry Purcell 1659-1695》

●シャコンヌ Chaconne / The Fairy Queenより●

●恋は最上の喜び Love thou art best of human joys●
この地上での最高の幸せは恋 その他の喜びはたわいもない
どのような哲学者が論じようと 恋のみが人間の魂を向上させる

●古き流れの二人の娘 Two daughters of this aged stream●
私たちは海緑色の髪を貴方の為にとかしています
私たちと水浴びをしましょう 私たちがそうであるように裸になって
満ちあふれる喜びを分かち合いましょう

●だめよ抵抗してもだめ No, no, resistance is but vain●
時には吐息を 手を変え品を変え 激しい人には激しく やさしさにはやさしさ
でおびき寄せ キューピットはハートを虜にしてしまう 抵抗してもだめ

●聞け鳥の声を Hark! How the songsters of the grove●
森の鳥たちが愛の神を賛美して歌っている 仲睦まじい鳥の夫婦の
讃歌が大気に満ちる そこかしこに木霊する魅力的な声



●近藤 泉/ソプラノ
日本大学芸術学部音楽学科声楽コース中退。父の影響で幼少よりクラシック音楽に親しみ、高校時代にリュートの音色に惹かれ古楽に興味を持つ。声楽を井上千恵子、佐々木晴子、川上勝功、川井弘子の各氏に師事する。古楽に関してはアーリーミュージックカンパニーにてバロック歌曲、リュートソング、合唱等を平井満美子に、リュートと通奏低音を佐野健二に学ぶ。現在、徳島を拠点とし、徳島バロックアンサンブルメンバーとして活動している。

●平井満美子/ソプラノ
神戸女学院大学音楽学部声楽科卒業。卒業後、古楽の演奏に興味を移し研究を始め、E.カークビー、J.キャッシュ、C.ボットらに学ぶ。現在、ルネサンスよりバロックを中心に、イギリス、フランス、イタリア、スペイン、ドイツの幅広いレパートリーを持つ、数少ない古楽の歌い手として活動している。多くのコンサートと録音を行い、その演奏は新聞、音楽誌等にて常に高く評価されている。現在までに発売された佐野健二とのデュオCD全ては雑誌「レコード芸術」「音楽現代」等の推薦盤に選ばれ、デュオリサイタルに対しては「大阪文化祭本賞」を受賞している。NHK文化センター講師。

●小出智子/リュート、リウトアテオルバート
同志社大学文学部英文学科卒。14歳でクラシックギターを始め、渡邊 滋生氏、増井一友氏、稲垣稔氏らにクラシックギターを師事。高校在学中、GLC学生ギターコンクール高校生の部第2位入賞、山陰ギターコンクール入選。大学卒業後、古楽に興味を移し、2003年よりアーリーミュージックカンパニーに参加。以来、佐野・平井両氏の下で研鑽を積む。リュート、19世紀ギター、通奏低音を佐野健二氏に、リュートソングを佐野健二・平井満美子両氏に師事。2004年ポール・オデット氏のマスタークラス受講。現在、EMC演奏助手、ソリスト、通奏低音奏者として関西を中心に活動している。

●佐野健二/オルファリオン、アーチリュート
英国・ギルドホール音楽院首席卒業。ギターを岡本一郎、H.クワイン、B.オー、J.ブリームの各氏、リュートをA.ルーリー、N.ノース、J.リンドベルイの各氏に師事。演奏活動に対し、「ジョン・クリフォード・ペティカン賞」「ロンドン芸術協会選出1978年度新人音楽家」「大阪文化祭奨励賞」「音楽クリティック・クラブ新人賞」「神戸灘ライオンズクラブ音楽賞」「大阪文化祭賞」(二回)を受ける。現在、ルネサンス、バロック期の撥弦楽器を中心に、独奏・伴奏・通奏低音奏者として演奏、録音活動を行っているが、そのレパートリーは民族音楽より現代音楽にまで及んでいる。相愛大学非常勤講師。


クリスタルチャペルコンサート2010へ戻る