EMC
クリスタルチャペルコンサート
シリーズ2009年
平井満美子&佐野健二
演奏風景、プログラム


第107回
English Airs 英国の旋律

Crystal Chapel Concert
Since 1995

No.107
English Airs
 
Mamiko Hirai
Soprano
Naomi Okuda
Recorder
Kenji Sano
Lute
 
2009.2.12 19:30PM
Senri Hankyu Hotel Crystal Chapel



アーリーミュージックカンパニーでは、千里阪急ホテル・クリスタルチャペルに於いて1995年1月より「佐野健二のリュート音楽の楽しみ」「若手演奏家シリーズ」「セレクテッド・ミュージシャン・シリーズ」「古楽の様々シリーズ」と様々なコンサートを企画開催して参りました。2004年度からはそれらを統合し「クリスタルチャペルコンサート」として平井満美子&佐野健二のシリーズコンサートを開催しています。
 2009年度は107〜112回をリュート歌曲を中心に開催致します。クリスタルチャペルの豊かな響きと雰囲気の中、ルネサンスからバロックの時代に最も花開いたリュート音楽の数々をお楽しみ下さい。



●John Dowland (1562-1626) / Soprano & Lute●
ジョン・ダウランドは、自他ともに認める当時第一人者とされるリュート奏者でした。
しかし彼は切望したエリザベス女王付奏者になれない失意を胸に抱きつつヨーロッパ
各地を放浪した不遇の音楽家とも言われています。彼の音楽の象徴とされる憂愁は、
「流れよ わが涙」に代表され、彼の紡ぎだすイギリス的旋律は“メランコリー気質”を
ヨーロッパ全土に広めたのでした。

Sorrow stay 悲しみよ とどまれ
憐れみよ 今こそ僕を助けておくれ 望みも助けももはやなく
下へ下へ落ちてゆくのみ 立ち直る日は二度と来はしない

Flow my tears 流れよ わが涙
夜の黒い鳥が歌う闇の中で 僕はひとり打ちしおれて生きよう
幸いなるかな 地獄に落ちてこの世の蔑みを感じえぬ者よ

Can she excuse 僕の受けた苦しみを
非情とわかったあの人を心やさしいと呼べるのか
冷たい愛はみのらない 苦しむより千度死ぬほうがまし

●Shakespeare Music / Soprano,Recorder & Lute●

シェイクスピアの時代、すなわちエリザベス一世の統治化のイギリスでは音楽は貴族
から庶民まで浸透し、語学、文学、演劇同様、教養のひとつとされておりました。シェ
イクスピア劇には500ヶ所以上の音楽に関するせりふを見つけることが出来、それらは
観衆の想像力を高めるという大きな役割を持ちました。音楽はエリザベス朝演劇にお
いて大変に重要な存在であったのです。

Kemp's jig ケンプのジグ/  Anon.

Morisco モリスコ / Anon.
「ヘンリー六世」第2部 第3幕 第1場

It was a lover and his lass それは恋人たち / T.Morley
「お気に召すまま」第5幕 第3場
恋人と娘は声を掛け合い青い麦畑を駆け抜ける
かわいい恋人たちは楽しく過ごす 今こそ恋の真っ盛り 鳥も歌う春が大好き

Heart's ease 心の慰め / Anon.
「ロミオとジュリエット」第4幕 第5場

Fortune my foe わが敵運命よ / Anon.
「ウィンザーの陽気な女房たち」第3幕 第3場
我が敵運命よ 何故私にしかめっ面をするのか?
貴方はもっと好意を示してはくれないのか?
思うに貴方は私の苦悩を無限に育て 私の喜びを二度と返してくれないのだろう

●Airs Anglois / Recorder & Archlute●

 1702年から1706年の間にオランダ・アムステルダムで出版されたリコーダー曲集
『Airs Anglois エール・アングロワ (イギリスのエア)』は 4巻に174の作品が収めら
れており、142曲が旋律と通奏低音のために、20曲は独奏用、12曲は二重奏用の作品で
構成されています。
 『エール・アングロワ』は、ベルギー・ブリュッセル王立音楽院図書館所蔵の、各
巻2冊(リコーダー譜とバス譜)からなり、174曲のうち143曲には作曲者の名前が表記さ
れています。その作品は当時イギリスで活躍した国内外の作曲家たちによるもので、
G.ビンハム(75曲)、G.フィンガー(42曲)、J.ペイシブル(5曲)、H.パーセル(4曲)、G.
ケラー(2曲)、A.パーチャム、N.マッテイス、D.パーセルなどが名を連ねます。(奥田
直美のCDライナーノートより抜粋)

Ouverture オーバーチュア / G.Finger
Hornepipe ホーンパイプ / G.Bingham
Adagio アダージョ / G.Finger
Jigg ジグ / G.Bingham
A Ground グラウンド / G.Finger

●Robert Jones (c.1577-1617) / Soprano,Recorder & Lute●

ダウランドと同じくイギリス後期ルネサンスのリュートソング楽派の一人であるロバー
ト・ジョーンズは5巻のリュートソング曲集を出版しています。 作風にはルネサンス
後期に花開いたリュートソング楽派の様式を踏襲しつつも新しいイタリア趣味の音楽
にも関心を寄せていた事が見受けられます。 ルネサンスからバロックへの移り変わり
の時期に活躍した作曲家らしく意欲的な作品も多く残しているのですが、彼の音楽の
魅力は本日お聴き頂くような愛らしい小品によく現れています。。

Sweete Kate いとしいケイト
僕を置き去りにしてケイトは逃げた
行かないでくれと叫んだのに彼女は冷たく笑う
「男は愚か せっかくの誓いもすぐにやぶる
愛を拒まれる事を恐れているのね」

What if I sped もしうまくいったとしたら
僕が冷静に彼女を射止めようと試みる時 彼女はどんな態度を取るだろうか
僕が触れれば彼女は恐れおののきつつも うまく逃げさるのだ
もし抱きしめれば僕をこの期に及んで拒むだろうか

Will said to his mammy ウィルはママに話した
愚かなウィルはいさんで結婚したのに女房の言いなり
あっという間にやせこけて 募るは後悔ばかりなり
独りで眠りたい 妻を持つと言う事は心の痛みであり 物理的なの痛みでもある


●平井満美子/ソプラノ
 神戸女学院大学音楽学部声楽科卒業。卒業後、古楽の演奏に興味を移し研究を始め、E.カークビー、J.キャッシュ、C.ボットらに学ぶ。現在、ルネサンスよりバロックを中心に、イギリス、フランス、イタリア、スペイン、ドイツの幅広いレパートリーを持つ、数少ない古楽の歌い手として活動している。多くのコンサートと録音を行い、その演奏は新聞、音楽誌等にて常に高く評価されている。現在までに発売された佐野健二とのデュオCD全ては雑誌「レコード芸術」「音楽現代」等の推薦盤に選ばれ、デュオリサイタルに対しては「大阪文化祭本賞」を受賞している。アーリーミュージックカンパニー主宰。NHK文化センター講師。

●奥田直美/リコーダー
 和歌山県生まれ。大阪音楽大学短期大学部フルート専攻卒業。イギリス・ギルドホール音楽院大学院課程古楽科(リコーダー)を演奏家ディプロマを授与され卒業。リコーダーを中村洋彦、向江昭雅、パメラ・トービー、ピアーズ・アダムス、フラウト・トラヴェルソとバロック奏法をスティーヴン・プレストンの各氏に師事。現在、後進の指導にあたる傍ら、関西を中心に各地で演奏活動を行い、バロックの演奏会のほか、ポピュラー系のCD録音に参加する等、幅広く活動している。大阪よみうり文化センター、厚木(神奈川)リコーダー・アンサンブル講師。2008年10月EMCレコードよりリリースの初CD「エア・アングロワ」はレコード芸術にて推薦盤に選ばれる。

●佐野健二/ルネサンスリュート、リウトアテオルバート
 英国・ギルドホール音楽院首席卒業。ギターを岡本一郎、H.クワイン、B.オー、J.ブリームの各氏、リュートをA.ルーリー、N.ノース、J.リンドベルイの各氏に師事。演奏活動に対し、「ジョン・クリフォード・ペティカン賞」「ロンドン芸術協会選出1978年度新人音楽家」「大阪文化祭奨励賞」「音楽クリティック・クラブ新人賞」「神戸灘ライオンズクラブ音楽賞」「大阪文化祭賞」(二回)を受ける。現在、ルネサンス、バロック期の撥弦楽器を中心に、独奏・伴奏・通奏低音奏者として演奏、録音活動を行っているが、そのレパートリーは民族音楽より現代音楽にまで及んでいる。現在、相愛大学非常勤講師、アーリーミュージックカンパニー主宰。2007年EMCレコード設立。



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