EMC
クリスタルチャペルコンサート
シリーズ2008年
平井満美子&佐野健二
演奏風景、プログラム


第104回
夢次元の調べ

2008.8.7 19:30 PM
佐野俊郎/夢次元彫刻 平井満美子/ソプラノ 佐野健二/ルネサンスリュート、リウトアテオルバート



  104回目のクリスタルチャペルコンサートは「夢次元の調べ/真夏の夜の夢」と題し、佐野俊郎作の夢次元彫刻の幻想的な明かりの中、ジョン・ダウランドとヘンリー・パーセルの音楽をお聴きいただきます。
 ジョン・ダウランドは、エリザベス朝に於ては自他ともに認める最高のリュート奏者にもかかわらず、熱望していたエリザベス女王付の奏者になれない失望感を胸に抱き、生涯の殆どをヨーロッパ各地を巡り歩いた不遇のリュート奏者といわれています。自らの人生とオーバーラップしたその作風は、ヨーロッパの16世紀末の知識階級に流行った“メランコリー気質”とまさしくに同調しており、“ダウランドの憂愁”を人々は楽しんだのでした。
 17世紀、イギリスはチャールズ2世の即位期で大変に裕福な情勢にあり、人々は様々な娯楽を求めていました。もともと演劇等、舞台芸術好きなイギリス国民、演劇と音楽を結びつけ始めます。同時期、ヨーロッパにはオペラの時代が訪れており、イギリスでもイタリア・オペラなどの上演が試みられました。しかしイギリスでは、清教徒革命による禁欲主義の影響のせいか、オペラはあまり歓迎されず、むしろ物語の進行とはあまり関係なく、音楽が自由に挿入されている音楽付き演劇が好まれました。
 パーセルの音楽で特に注目すべきジャンルは、まさにこの劇場音楽と呼ばれる舞台劇場に関連する音楽でした。彼の創造性に富む旋律の流れと、声楽曲における英語の表現能力における才能は世の中の動向とかけ合わされ花開いて行きました。
 それでは今宵、幻想的な夢次元造形空間に響く古き良きイギリスの調べに身を委ね、夢の世界でお遊びいただければ幸いでございます。



Mujigen Harmony
夢次元の響き/真夏の夜の夢

John Dowland (1563-1626)

Sorrow stay 悲しみよ とどまれ
憐れみよ 今こそ僕を助けておくれ 望みも助けももはやなく
下へ下へ落ちてゆくのみ 立ち直る日は二度と来はしない

Sweet stay awhile きみよ まだ帰らないでおくれ
張り裂けるのは夜のとばりではなく僕の心 まだ帰らないでくれ
  さもないと生まれたばかりの僕の喜びは死ななければならない

Fancy ファンシー

Clear or Cloudy 晴れても曇っても
にわか雨の4月 あの人の表情も快い 花咲く5月 あの人の言葉は
鳥のさえずりのようにやさしい 愛の雨を恵んでおくれ

Time stand still 時は静止して
うっとりとあの人の顔に見とれる
すべてのものは変わりゆくのにあの人は美しいまま
愛の神も運命の神もあの人の足下にひれふする

Henry Purcell (1659-1695)

Prelude プレリュード

The fatal hour comes on apace 運命の時は足早にやってくる
運命があなたを呼ぶ それを思うと命もつきそうになる
貴方が行ってしまうと私の心は絶えてしまう
貴方だけなのです 悲しみの源である傷をいやせるのは

Thrice happy lovers 幾重にも幸せな恋人たちよ
結婚生活につきものの心配事や言い争いから
解き放されてお互いに誠を尽くし
男はいつまでも誠実に 女はいつまでもシ貞淑であれ

O let me weep 泣かせてください
昼の光からも身を隠し 心が果てるまでため息をつこう
あの人がいないことを嘆いてもあの人に会うことはない

Thy hand, Belinda おまえの手をかしておくれ ベリンダ
死はいまや歓迎すべき客人 私は死がおそうこと願っている
ああこの運命をわすれておくれ

An evening hymn 夕べの賛歌
いまや太陽はその光を覆い隠し 地上の世界に夕べが別れを告げる今
私の魂は親愛なる神の御腕の中にしか安らげる事はない
神を讃えよ  アレルヤ


7-course Lute in G A=440 / Martin Haycock 1990
14-course Liuto attiorbato A=415 / Junji Nishimura 1985

●佐野俊郎/夢次元彫刻、ランプ、燭台、ジュエリーの製作
両親の祖父が著名な洋楽と邦楽の音楽家と言う家系に生まれ、本人も音楽の道に進む事を疑ってはいなかったが、満7才頃より工作に没頭し、12才より無線操縦模型を始める。当時は全て自分で設計、製作する必要があり、デザイン、製図、木工、金属加工、電気、電子、合成樹脂等の知識、操縦技術を修得。関西代表として日本選手権等に多数出場。その技術を生かした物作りの道に入る。
 1973年より宝石学、彫金技術を学び、講師として活動。立体造形を始め、1976年宝塚にジュエリースタジオ、アトリエ・レマンを開設、1978年より彫金教室を開く。1990年彫金彫刻の工房、夢次元(むじげん)空間彫金工房及び教室を開き、景観造形物デザイン、モニュメント、レリーフ等の製作、ジュエリー、立体造形物の製作、指導を開始。  受賞暦/全関西美術展一席。現在、大阪市美術館招待作家。読売新聞大阪本社賞。インターナショナルパールデザインフェスティバル出展。美術文化賞(一席)。京都府知事賞。大阪府知事賞。教育委員会賞。大阪市長賞。文化庁現代美術選抜展出展。国民文化祭高松教育長賞。大分県美術協会会長賞。安田火災美術財団奨励賞、他受賞  現在/(社)日本美術家連名会員。美術文化協会運営委員。(社)日本ジュウリーデザイナー協会近畿地区委員長。宝塚デザイン協会会員。伊丹ジュエリーカレッジ講師。夢次元空間彫金工房主催。

●平井満美子/ソプラノ
 神戸女学院大学音楽学部声楽科卒業。卒業後、古楽の演奏に興味を移し研究を始め、E.カークビー、J.キャッシュ、C.ボットらに学ぶ。現在、ルネサンスよりバロックを中心に、イギリス、フランス、イタリア、スペイン、ドイツの幅広いレパートリーを持つ、数少ない古楽の歌い手として活動している。多くのコンサートと録音を行い、その演奏は新聞、音楽誌等にて常に高く評価されている。現在までに発売された佐野健二とのデュオCD全ては雑誌「レコード芸術」「音楽現代」等の推薦盤に選ばれ、デュオリサイタルに対しては「大阪文化祭本賞」を受賞している。アーリーミュージックカンパニー主宰。NHK文化センター講師

●佐野健二/ルネサンスリュート、リウトアテオルバート
 英国・ギルドホール音楽院首席卒業。ギターを岡本一郎、H.クワイン、B.オー、J.ブリームの各氏、リュートをA.ルーリー、N.ノース、J.リンドベルイの各氏に師事。演奏活動に対し、「ジョン・クリフォード・ペティカン賞」「ロンドン芸術協会選出1978年度新人音楽家」「大阪文化祭奨励賞」「音楽クリティック・クラブ新人賞」「神戸灘ライオンズクラブ音楽賞」「大阪文化祭賞」(二回)を受ける。現在、ルネサンス、バロック期の撥弦楽器を中心に、独奏・伴奏・通奏低音奏者として演奏、録音活動を行っているが、そのレパートリーは民族音楽より現代音楽にまで及んでいる。現在、相愛大学非常勤講師、アーリーミュージックカンパニー主宰。2007年EMCレコード設立。



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