EMC
クリスタルチャペルコンサート
シリーズ2008年
平井満美子&佐野健二
演奏風景、プログラム


第103回
CD発売記念「アリアンナの嘆き」

2008.6.5 19:30 PM
平井満美子/ソプラノ 佐野健二/リウトアテオルバート



 103回目のクリスタルチャペルコンサートは6月1日発売のEMCレコード弟四弾「イタリア初期バロック歌曲集/アリアンナの嘆き」CD発売記念コンサートです。
 16世紀後半、イタリアでは新しいスタイルの音楽を提唱する人たちによりバロック音楽の幕が開けられ始めていました。 フィレンツェのジョヴァンニ・デ・バルディ伯爵邸に集まった"カメラータ"と呼ばれた貴族や音楽家、詩人、哲学者といった知識階級の集まりは、古代ギリシャ音楽劇に範を求め、言葉の抑揚や意味、そして 感情の表出を重んじ、音楽を通じていかに正しく言葉の意味と心情を伝えるのかを実践していきました。 一見懐古趣味的なその発想は、ルネサンスのポリフォニ一(多声音楽)に代わる伴奏付き単旋律であるモノディー様式を提唱、確立したのです。 ルネサンス音楽の均整の取れた作風から、感情重視の音楽に移り変わり、バロック音楽の幕が開いたのです。
 ルネサンス後期に大層流行したリュートソングの楽譜は演奏すべき音が、歌は五線譜、リュートはタブラチュア譜ですべて書かれておりました。 しかし、初期のバロック声楽の伴奏譜はモノディーに適した伴奏形態として通奏低音という手法で登場してきました。 伴奏パートはバス譜表に最低音のみ記譜されており、基本形以外の和音が要求される場所にはその種類を示す数字がつけられているという、見た目には単純な楽譜です。 通常、楽器の指定もなく、かなり即興性の強い記譜方であり、代表的な通奏低音楽器としてリュートやオルガン、ハープ、チェンバロといった楽器があげられますが、モノディー様式においてはリュートが声の様々な表情、陰影に最も寄り添える楽器として愛好されました。
 今日の演奏会で使用する楽器は小型のアーチリュートでリウトアテオルバートと呼ばれるものです。1弦単弦、1〜12コース(9〜14ディアパゾン)はすべて複弦に張られたリュート史上、最も多弦の楽器です。
 それでは17世紀初頭、その揺るぎなき才能がバロックの幕開けに貢献し、自らも「新音楽」を楽しんだ作曲家たちの作品をお楽しみ下さい。



アリアンナの嘆き
Lamento d’Arianna

Mamiko Hirai / soprano Kenji Sano / liuto attiorbato

Programme

Ricercata / Pietro Paolo Raimondo (17c)
リチェルカータ/ライモンド

Piangete, ohme, piangete / Giacomo Carissimi (1605-1674)
泣け、ああ泣け/カリッシミ

Deh, Memoria / Giacomo Carissimi
ああ想いでよ/カリッシミ

Vestiva i colli / Pietro Paolo Raimondo
野山は春のよそおい/ライモンド

Usurpator tiranno / Giovanni Felice Sancies (1600-1679)
簒奪者にて暴君/サンチェス

Toccata / Pietro Paolo Raimondo
トッカータ/ライモンド

Laudate Dominum / Claudio Monteverdi (1567-1643)
主よ讃えよ/モンテヴェルディ

Lamento d’Arianna / Claudio Monteverdi
アリアンナの嘆き/モンテベルディ

Instruments
14-course Liuto attiorbato A=415 / Junji Nishimura 1985

Recorded = EMC Private Studio, March 2008
Producer = Mamiko Hirai & Kenji Sano Engineer & Editor = Kenji Sano
Commentary = Kenji Sano  Japanese Translation = Mamiko Hirai

2008 The Early Music Company   http://www.emclute.com/

●平井満美子/ソプラノ
 神戸女学院大学音楽学部声楽科卒業。卒業後、古楽の演奏に興味を移し研究を始め、E.カークビー、J.キャッシュ、C.ボットらに学ぶ。現在、ルネサンスよりバロックを中心に、イギリス、フランス、イタリア、スペイン、ドイツの幅広いレパートリーを持つ、数少ない古楽の歌い手として活動している。多くのコンサートと録音を行い、その演奏は新聞、音楽誌等にて常に高く評価されている。現在までに発売された佐野健二とのデュオCD全ては雑誌「レコード芸術」「音楽現代」等の推薦盤に選ばれ、デュオリサイタルに対しては「大阪文化祭本賞」を受賞している。アーリーミュージックカンパニー主宰。NHK文化センター講師

●佐野健二/リウトアテオルバート
 英国・ギルドホール音楽院首席卒業。ギターを岡本一郎、H.クワイン、B.オー、J.ブリームの各氏、リュートをA.ルーリー、N.ノース、J.リンドベルイの各氏に師事。演奏活動に対し、「ジョン・クリフォード・ペティカン賞」「ロンドン芸術協会選出1978年度新人音楽家」「大阪文化祭奨励賞」「音楽クリティック・クラブ新人賞」「神戸灘ライオンズクラブ音楽賞」「大阪文化祭賞」(二回)を受ける。現在、ルネサンス、バロック期の撥弦楽器を中心に、独奏・伴奏・通奏低音奏者として演奏、録音活動を行っているが、そのレパートリーは民族音楽より現代音楽にまで及んでいる。
現在、相愛大学非常勤講師、アーリーミュージックカンパニー主宰。2007年EMCレコード設立。



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