102回目のクリスタルチャペルコンサートはイースターの讃美歌とリュート音楽の最高峰ジョン・ダウランドの宗教的作品を中心としたプログラムです。 イースター(復活祭)はキリスト教においては最も重要な出来事で、十字架にかけられたキリスト様が3日目によみがえることを記念するお祝い日です。太陰暦で決められている復活祭は移動祝祭日となり、2008年の復活祭はプロテスタントやカトリックのキリスト教会では3月23日になります。 キャロルといえばクリスマスの曲と言うイメージが一般的には強いかもしれませんが、キャロル“Carol讃美歌”とは神を讃える歌の意味であり、年間を通して様々な催しでキャロルが歌われています。そして、人々はキャロルの旋律の多くに、なじみ深いはやり歌を使いました。音楽とキリスト教が人々の生活に根差していることの現われでもあるでしょう。 ジョン・ダウランド(1563-1626)は自他ともに認める当時随一のリュート奏者であったにもかかわらず、切願したエリザベス一世付宮廷音楽家の地位を得る事は出来ず、その失望を胸に人生の多くの時間を国外で過ごしました。晩年はイギリスに戻ったものの、時代は移り変っており、若いリュート奏者が新しいタイプの楽器で活躍しておりました。彼は1612年に出版された最後の歌曲集に「巡礼の慰め」と名付けました。自らの生涯を振り返り、巡礼の旅に重ねたのかもしれません。 アラブを発祥とするリュートは十字軍の遠征により西洋に持ち込まれました。瞬く間にヨーロッパ全土に広まり、ルネサンスからバロック期においては常に音楽の中心的な存在としてリュートは愛好されました。 オルファリオンは16世紀にヨーロッパ で作り出された楽器です。ギリシャ神話の神であるオルフェウスとオリオンの名を組み合わせたこの楽器はリュートと同じ調弦なのですが、金属の弦が張ってあり音色の違いを楽しめたのでした。 では今宵、古き良きイギリスのフォークキャロルとダウランド晩年の作品をお楽しみ下さい。 |
●平井満美子/ソプラノ
神戸女学院大学音楽学部声楽科卒業。卒業後、古楽の演奏に興味を移し研究を始め、E.カークビー、J.キャッシュ、C.ボットらに学ぶ。現在、ルネサンスよりバロックを中心に、イギリス、フランス、イタリア、スペイン、ドイツの幅広いレパートリーを持つ、数少ない古楽の歌い手として活動している。多くのコンサートと録音を行い、その演奏は新聞、音楽誌等にて常に高く評価されている。現在までに発売された佐野健二とのデュオCD全ては雑誌「レコード芸術」「音楽現代」等の推薦盤に選ばれ、デュオリサイタルに対しては「大阪文化祭本賞」を受賞している。アーリーミュージックカンパニー主宰。NHK文化センター講師
●佐野健二/ルネサンスリュート、オルファリオン
英国・ギルドホール音楽院首席卒業。ギターを岡本一郎、H.クワイン、B.オー、J.ブリームの各氏、リュートをA.ルーリー、N.ノース、J.リンドベルイの各氏に師事。演奏活動に対し、「ジョン・クリフォード・ペティカン賞」「ロンドン芸術協会選出1978年度新人音楽家」「大阪文化祭奨励賞」「音楽クリティック・クラブ新人賞」「神戸灘ライオンズクラブ音楽賞」「大阪文化祭賞」(二回)を受ける。現在、ルネサンス、バロック期の撥弦楽器を中心に、独奏・伴奏・通奏低音奏者として演奏、録音活動を行っているが、そのレパートリーは民族音楽より現代音楽にまで及んでいる。現在、相愛大学非常勤講師、アーリーミュージックカンパニー主宰。2007年EMCレコード設立。