今回のクリスタルチャペルコンサートはルネサンス時代ののフランスとスペインの
作品を歌とリュート、ヴィウエラでお聴きいただきます。 16世紀、フランスでは世俗的な歌詞にもとづく歌曲が多数生み出されました。生き 生きとした内容となじみやすい旋律、歯切れの良いリズムをもったこれらの歌(シャン ソン)は、合唱や重唱の形で歌われる事も多かったのですが、宮廷の歌と題されたリュー ト伴奏付きの歌曲集としても数多く出版されました。 クローダン・ド・セルミジ Claudin de Sermisy(1490頃?1562)とクレマン・ジャヌ カン Clement Janequin(1480頃?1558)は、フランス・ルネサンス時代の最も有名な作 曲家ですが、ジャヌカンは聖職者でありながら世俗歌謡作家として有名であり、セル ミジはシャンソンと宗教音楽の両分野で活躍した作曲家でした。 アドリアン・ル・ロワ Adrian Le Roy(1520頃?1598)もシャンソン作家として活躍 しましたが、彼の名声はリュート奏者、楽譜印刷家として残されています。 ルネサンスの時代、アラブに起源を持つリュートはヨーロッパ全土で隆盛を極めて おり、16世紀フランスでは6コースのリュートが愛好されていました。しかしどういう わけか唯一スペインではリュートよりもヴィウエラという楽器が好まれておりました。 調弦はリュートとまったく同じなのですが、その形態はくびれた胴体と平らな裏板を 持つギター形状でした。 ディエゴ・オルティス Diego Ortiz(1510頃?1570頃)はスペイン・ルネサンス音楽 の作曲家・音楽理論家ですが、活躍したのは当時のスペイン領イタリア南部でした。 ヴィオラ・ダ・ガンバのための変奏曲(ディフェレンシアス)集を初めて世の中の送り 出した作曲家でありました。 アロンソ・ムダーラ Alonso Mudarra(1510頃?1580)は、スペイン・ルネサンスにお けるヴィウエラ音楽作曲家として有名ですが、ルネサンスギター曲の最初の出版者と しても知られています。 ヴィウエラ音楽の最高峰とされるルイス・ミラン Luis de Milan(1500頃?1561以 降)の曲集「エル・マエストロ」には様々な形式の曲が納められており、その価値は作 品の質の高さのみならず、演奏速度等を明記した最初の文献としても重要視されています。 |
平井満美子/ソプラノ
神戸女学院大学音楽学部声楽科卒業。卒業後、古楽の演奏に興味を移し研究、
中世よりバロックまでのレパートリーを持つ、数少ない古楽の歌い手として活動して
いる。多くのコンサートと録音を行い、その演奏は新聞、音楽誌等にて常に高く評価
されている。現在までに発売された佐野健二とのデュオCD6点全ては雑誌「レコード芸
術」の推薦盤に選ばれ、デュオリサイタルに対しては「大阪文化祭本賞」を受賞して
いる。日本、イギリスにてE.タブと共演、好評を博す。その広い音域と澄んだ歌声は
古楽のジャンルにとどまらず、テレビコマーシャルの音楽にも活躍している。
佐野健二/ルネサンスリュート、ヴィウエラ
西洋音楽学者と邦楽琴奏者を両祖父に、ピアニストの母、声楽家の伯母を持つ恵
まれた音楽環境で幼少より様々な音楽に親しみ、11歳よりギターを独学で始める。高
校卒業後、岡本一郎氏に師事、同年九州ギター音楽コンクール入賞、翌年なにわ芸術
祭で新人賞を受ける。19歳でイギリスに渡り、ロンドンのギルドホール音楽院入学、
ギター、リュート、古楽全般を学ぶ。ギターを、H.クワイン、B.オー、の各氏、ルネ
サンスリュートをA.ルーリー、通奏低音をN.ノースの各氏に師事し、ギルドホール音
楽院を首席でディプロマを得る。在学中、BBC・TV主催のジュリアン・ブリーム・マス
タークラスの受講生に選ばれその模様は全英に放送される。卒業後、J.リンドベルイ
氏にバロックリュートを学ぶ。内外の演奏活動に対し、「ジョン・クリフォード・ペ
ティカン賞」「ロンドン芸術協会選出1978年度新人音楽家」「大阪文化祭奨励賞」
「音楽クリティック・クラブ新人賞」「神戸灘ライオンズクラブ音楽賞」「大阪文化
祭賞」(二回)を受ける。現在、ルネサンス、バロック期の撥弦楽器を中心に、独奏・
伴奏・通奏低音奏者として演奏、録音活動を行っているが、そのレパートリーは民族
音楽より現代音楽にまで及んでいる。相愛大学非常勤講師。アーリーミュージックカ
ンパニー主宰。