クリスタルチャペルコンサート第94回は年末の恒例になりました「アヴェ・マリアとイギリスのフォーク・キャロル」をお聴きいただきます。 ラテン語で「アヴェ・マリア」とは「幸いあれ、マリア」の意味を持ちます。もともとローマ・カトリック教会の祈祷文のひとつであった「アヴェ・マリア」ですが、時代を超えた普遍性故、その題材は様々な作曲家のイマジネーションを触発し、数々の名曲を生み出させました。大天使ガブリエルに受胎告知を受け、救い主の母となられた聖マリアを賛美する「アヴェ・マリア」はルネサンスの時代から現代に至るまで世界中の人々に愛されてきました。 English Folk Carolsとは直訳するとイギリス民衆賛美歌とでもなりましょう。リュートが最ももてはやされていた16世紀イギリスでは神様への賛美の曲は民衆に耳なじみのあるメロディーにのせて歌われておりました。キリスト教が人々の生活に根差している地域の教会は、多くの人が集まる場所、一種の社交場と言え、そんな教会で神の賛美をはやり歌にのせて歌うという事はごく自然な成り行きであったのでしょう。 イギリスのはやり歌の代表といえばグリーンスリーブスが上挙げられますが、もともとは俗っぽい恋の歌だったのですが、キャロル集に於ては新年を祝う歌詞に変えられて載せられています。というわけでイギリスの古い賛美歌集にはフォークキャロルともいうべき愛すべき作品がたくさん残されています。 本日お聴きいただきます4曲の「アヴェ・マリア」は代表的な作品として知られていますが、必ずしもリュートが使われていた頃に作られた曲ではありません。今宵は穏やかなメロディーに託された神様への賛美歌と共に、様々な時代の「マリア賛歌」を新鮮な響きとしてお楽しみいただければ幸いです。 |