EMC
クリスタルチャペルコンサート
シリーズ2006年
平井満美子&佐野健二
演奏風景、プログラム


第93回
ジャコモ・カリッシミ

2006.10.25 PM7:30
平井満美子/ソプラノ 佐野健二/アーチリュート



 クリスタルチャペルコンサート2006年度「カメラータのもくろみ」シリーズ第93回はイタリアバロック、ローマ楽派の音楽家「ジャコモ・カリッシミ」の作品をお聴きいただきます。
 ジャコモ・カリッシミ(Giacomo Carissimi, 16045-1674) は、生涯イタリアで活躍した大音楽家です。教師としても有能で、彼の業績とされる室内カンタータ、オラトリオ、そしてレチタティーヴォの発展の影響力はヨーロッパ全土に及んでいたと言われています。
 カリッシミはアッシジの礼拝堂の指揮者、ローマの聖アポリナリス教会の楽長といった教会音楽の要職に一生を捧げ、室内カンタータとオラトリオの発展にも寄与し、オラトリオに関しては最初の重要な作曲家とも言われています。彼が活躍した時期は世俗音楽が宗教音楽の地位を脅かそうとし出した時期でもありました。劇的な演技を伴うオラトリオ形式を確実なものにした彼の業績は、その時代背景があってのことかも
しれません。
 バロック音楽の創始者とも言えるモンテヴェルディが始めたレチタティーヴォ(朗唱)をいっそう発展させたカリッシミは、劇音楽の歴史にも名を残すこととなります。
 またカリッシミは声楽曲の器楽伴奏に、非常に様々な多様性を提示し、技巧的な旋律と相まり数多くのドラマチックな作品を生み出しました。
 今日使用するアーチリュートはリュート史上、最も大型で多弦の楽器です。豊かな音量と低音を持つこの楽器は17世紀イタリアで、新しい趣味の音楽には不可欠な楽器として発明され、ヨーロッパ中に広まりバロック期を通して愛好されました。ルネサンスに於ては声楽曲よりの発展物といえた器楽曲も、バロック時代においては新たな方向を模索しなくてはなりませんでした。その結果、本日のリュートソロ曲の作者であるピチニーニ Alessandro Piccinini(1566-c.1638)、 ライモンド Pietro PaoloRaimondo、ラウレンチーニ Laurencin da Romaらは創作意欲を刺激され、新しい時代の音楽と楽器にふさわしい響きを作り出しました。


Giacomo Carissimi
(1605-1674)




programme


●フォリオ Folio 8 / Laurencini da Roma●

●おお、今はただ泣きたまえ Piangete, ohme,piangete●
恋する魂よ ため息と涙で憐れみを求めよ
ため息をつかない者は希望を抱けない
涙を流さない者は愛することを誇りとするな
愛は火であり涙がそれを支える 泣け ああ泣け

●勝利だ我が心 Vittoria, mio core●
かってあの惨い女が多くの眼差しのうち 偽りの愛嬌を持って欺いたのだ
彼女の残酷な火の熱も消えてしまった
 私の胸に傷を与える矢はもう飛び出してはこない
愛のへりくだった奉仕は終わったのだ 勝利だ我が心よ

 ●野山は春のよそおい Vestiva i colli (1601) / Pietro Paolo Raimondo●


●マリア・ディ・スコーツィアの嘆き Il lamento di Maria di Scozia●
私は潔白に生きたスコットランドの王妃なのだ なぜ目隠しをする
生涯の最後の時を見る勇気は私にはある イギリスを支配する高慢なエリザベスよ
さあ襲ってくるがよい 残虐な拷問 むち打ち たけり狂った矢が胸をつきさす
・・・静かになりスコットランド王妃の心は神と一体となる

●半音階風トッカータ Taccata Cromatica XII / Alessandro Piccinini●


●我が愛する人 これは何? Amor mio, che cosa e guesta?●
私の恋って何なのか 一日中背を向け あなたは嘆いて 私は頭痛がする
あなたはハンサムで良い人だけど それは私の為のものではない
毎日泣き叫び後悔すれど 私はここにとどまる

●地獄の門よ開け Apritevi, Inferni●
もし 私が神に背き 真の考えを星の王に伝えないのなら 地獄よ開け
聞け天よ 神が私の心にうったえるのなら復讐の鋭い矢で打ち合おう
罪を犯した者は後悔し 悲しみは助けを乞う同じ目に届く
怒りの歌は声を解放し涙をもたらした 邪悪な世界のよろこびのなかで
私はゆく道を迷わない 私は人の暴力 憧れる神の悲しみがわかる
嘆きの川の岸辺に潜む影 救い主に反した精神に怒った自然は戦争を始める



使用楽器
14-course Archlute in G = Martin Haycock 1999 pitch a' = 415 Hz.



平井満美子/ソプラノ
 神戸女学院大学音楽学部声楽科卒業。卒業後、古楽の演奏に興味を移し研究、中世よりバロックまでのレパートリーを持つ、数少ない古楽の歌い手として活動している。多くのコンサートと録音を行い、その演奏は新聞、音楽誌等にて常に高く評価されている。現在までに発売された佐野健二とのデュオCD6点全ては雑誌「レコード芸術」の推薦盤に選ばれ、デュオリサイタルに対しては「大阪文化祭本賞」を受賞している。日本、イギリスにてE.タブと共演、好評を博す。その広い音域と澄んだ歌声は古楽のジャンルにとどまらず、テレビコマーシャルの音楽にも活躍している。

佐野健二/リュート
 英国・ギルドホール音楽院首席卒業。ギターを岡本一郎、H・クワイン、B.オー、J・ブリームの各氏、リュートをA.ルーリー、N.ノース、J.リンドベルイの各氏に師事。演奏活動に対し、「ジョン・クリフォード・ペティカン賞」「ロンドン芸術協会選出1978年度新人音楽家」「大阪文化祭奨励賞」「音楽クリティック・クラブ新人賞」「神戸灘ライオンズクラブ音楽賞」「大阪文化祭賞」(二回)を受ける。現在、ルネサンス、バロック期の撥弦楽器を中心に、独奏・伴奏・通奏低音奏者として演奏、録音活動を行っているが、そのレパートリーは民族音楽より現代音楽にまで及んでいる。相愛大学音楽学部非常勤講師。


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