EMC
クリスタルチャペルコンサート
シリーズ2006年
平井満美子&佐野健二
演奏風景、プログラム


第92回
ジロラモ・フレスコバルディ

2006.8.30 PM7:30
平井満美子/ソプラノ 佐野健二/アーチリュート、リウト・アテオルバート



 クリスタルチャペルコンサート第92回は「ジロラモ・フレスコバルディ」の作品をお聴きいただきます。
 ジロラモ・フレスコバルディ(1583-1643)は、イタリア初期バロックの大家、モンテヴェルディと並ぶ重要な人物です。モンテヴェルディが主として声楽のスペシャリストであったのに対して、フレスコバルディは器楽、特にオルガンやチェンバロなどの鍵盤音楽の分野で偉大な業績をおさめイタリア音楽史上、最大のオルガニストとされています。
 フレスコバルディの声楽曲には、フィレンツェの宮廷オルガン奏者を務めていた1630年に刊行された「アリエ・ムジカーリ」の第1巻と第2巻があります。ルネサンス風の有節歌曲からバロックのモノディー様式等、当時の代表的な声楽スタイルに乗っ取った秀作が多数収められています。
 その鍵盤作品に比べるとあまり日の目を見ないフレスコバルディの歌曲ですが、その理由としては時代的にバロックの草分け的存在のカッチーニ等の次の世代に属しながら声楽曲においては斬新な試みが見られない為と思われます。
 声楽曲同様、鍵盤以外の器楽曲も重要視されておりませんが、「様々な楽器により演奏出来るカンツォーナ集」は演奏する楽器により趣の変わる魅力的な曲集として愛好されました。
 フレスコバルディは残念ながらリュートの為の独奏曲は残したとはされておりません。しかしながら、本日アーチリュートのソロでお聴きいただく「トッカータ」「カンツォン」は表題に「スピネットもしくはリュートの為」と明記されています。フレスコバルディ自身は鍵盤で演奏したと思われますが、その音域からはリュートでの演奏も前提にしたものである事は明らかです。
 リウトアテオルバートの為にアレンジされたソロ曲「アリアと変奏」は作者自身が「ラ・フレスコバルダ」と名付けており、その作品に対する自信の程がうかがえる彼の代表作のひとつです。


Girolamo Frescobaldi
(1583-1643)


programme

●トッカータ Toccata ●

●恋の花飾り Ghirlandetta Amorosa ●
清らかな羊飼いの少女よ 5月のまばゆい光に愛らしいすみれやユリは花ざかリ
さあ春だ小鳥はさえずり 恋人たちは喜び戯れる
しかし私の可愛い人はどこにいる 運命は私を今死なせようとしている

●ロマネスカのアリア Aria di Romanesca ●
残酷な時が苦痛へと私をつれもどす 私の望みは悲しみとともに墓に納められる
君は冷酷な支配者 苦しみの炎をもやした罪をおわなければならない

●おお 我が心 優しき我が命 O mio cor, dolce mia vita ●
かわいい人よ せめて別れる前に私の悲しみを感じておくれ
あまりに早くあなたは逃げる そよ風は哀れみ深く吹くが胸は再び痛む
あなたの愛が欲しい 死がもたらされるのは近いと伝えて

●アリアと変奏「ラ・フレスコバルダ」●
Ario con Variazioni detta "La Frescobalda"

●ついに我が嘆き A miei pianti al fine un di, ●
このつらい気持ちをやわらげてくれ 彼女のまなざしは私の哀しみと
苦しみを和ませ力づけてくれる 喜び笑い歌う でもため息をつく
失った私の安らぎを憐れみの風でとりもどし 懇願するは愛の勝利

●もし この目からあふれる涙が Se l'onde, ohime ●
この涙 このやけつくようなため息はどこからくるのか
なえていく心は 愛の神の従者のたくらみで衰弱する
私の墓には ”愛の誉れが横たわる”とかいてくれ

●お別れだ 我が魂よ Ti lascio, anima mia ●
いま別れが私を呼んでいる 別れよう ああ私には死がふさわしい
でもこの苦しみの中で 悲観する私をあなたの更なる痛みにしないでくれ
なえていく私の心 私の苦しみはあなたの苦しみ

●カンツォン Canzona ●

●パッサカリアのアリア Aria di Passacaglia ●
君は何故そんなに私をあざ笑うのか 君の美しい金髪 赤く染まったほほ
そんな美しさは時と共にすぐ過ぎてしまう その時こそ私が笑う番だ

使用楽器
14-course Archlute in G = Martin Haycock 1999 pitch a' = 415 Hz.
14-course Liuto attiorbato in G = Junji Nishimura 1985 pitch a' = 466 Hz.



平井満美子/ソプラノ
 神戸女学院大学音楽学部声楽科卒業。卒業後、古楽の演奏に興味を移し研究、中世よりバロックまでのレパートリーを持つ、数少ない古楽の歌い手として活動している。多くのコンサートと録音を行い、その演奏は新聞、音楽誌等にて常に高く評価されている。現在までに発売された佐野健二とのデュオCD6点全ては雑誌「レコード芸術」の推薦盤に選ばれ、デュオリサイタルに対しては「大阪文化祭本賞」を受賞している。日本、イギリスにてE.タブと共演、好評を博す。その広い音域と澄んだ歌声は古楽のジャンルにとどまらず、テレビコマーシャルの音楽にも活躍している。

佐野健二/リュート
 英国・ギルドホール音楽院首席卒業。ギターを岡本一郎、H・クワイン、B.オー、J・ブリームの各氏、リュートをA.ルーリー、N.ノース、J.リンドベルイの各氏に師事。演奏活動に対し、「ジョン・クリフォード・ペティカン賞」「ロンドン芸術協会選出1978年度新人音楽家」「大阪文化祭奨励賞」「音楽クリティック・クラブ新人賞」「神戸灘ライオンズクラブ音楽賞」「大阪文化祭賞」(二回)を受ける。現在、ルネサンス、バロック期の撥弦楽器を中心に、独奏・伴奏・通奏低音奏者として演奏、録音活動を行っているが、そのレパートリーは民族音楽より現代音楽にまで及んでいる。相愛大学音楽学部非常勤講師。


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