EMC
クリスタルチャペルコンサート
シリーズ2006年
平井満美子&佐野健二
演奏風景、プログラム


第91回
クラウディオ・モンテヴェルディ

2006.6.21
平井満美子/ソプラノ 佐野健二/アーチリュート



 クリスタルチャペルコンサート第91回はイタリア・バロックの大巨匠「クラウディ オ・モンテヴェルディ」の歌曲をお聴きいただきます。
 16世紀後半、イタリアでは新しいスタイルの音楽を提唱する人たちの手によりバロッ ク音楽の幕が開けられ始めていました。"カメラータ"と呼ばれる彼らは、フィレンツェ のジョヴァンニ・デ・バルディ伯爵邸に集まり古代ギリシャ音楽劇に範を求め、情緒、 感情を表し、語るように歌う、という新しいタイプの音楽を提唱したのです。
その結果、ルネサンスのポリフォニ一(多声音楽)に代わる伴奏付き単旋律であるモ ノディーという様式を提唱、確立したのです。そこでは、言葉の抑揚や意味、そして 感情の表出を重んじ音楽を通じていかに正しく言葉の意味と心情を伝えうるのかが実 践されました。
 クラウディオ・モンテヴェルディ(Claudio Monteverdi, 1567年5月15日〜1643年11月29日)はクレモナで生まれ、マントヴァ公の宮廷楽長、ヴェネツィアの聖マルコ教会 大聖堂の宮廷楽長を歴任しました。作品はマドリガーレ、宗教曲、オペラと多岐にわ たっていますが、新しい様式をふんだんに取り入れた数々のオペラは近代オペラの始まりとされています。
 モンテヴェルディの偉大さのひとつにルネサンスからバロックへの大きな音楽的変 革を自らの内に成し遂げたことがあげられます。古い音楽(ルネサンス)の完成度に敬 意を払いながらも新しい音楽(バロック)の必然性と可能性を証明したのです。彼の代 表作をもいえる「アリアンナの嘆き」は深い悲しみに充ちた傑作ですが、音楽におけ る言葉の意味、あり方が実践されており、17世紀の新しい声楽理念の代表作ともされ ています。

 本日演奏致しますリュートソロ曲の作者ピエトロ・パオロ・ライモンド(Pietro Paolo Raimondo)の生涯についてはほとんど知られておりませんが、モンテヴェルディ と同じくルネサンスからバロックへの時代の移り変わりに活躍したリュート奏者です。 1601年に出版されたリュート曲集に多数収められてたライモンドの作品からは ルネサンス的な舞曲から初期バロック器楽曲の代表とされるトッカータ等、時代様式を反映 した作風が感じ取れます。


Claudio Monteverdi (1567-1643)

programme

●トッカータ Toccata / Pietro Paolo Raimondo ライモンド●

●主を讚えよ Laudate Dominum●
聖なる主をほめたたえよ チューバやプサルテリウム
 チターラや太鼓 チェンバロや合唱の音で
全知全能の神をほめたたえよ アレルヤ

●私はリラを奏で・・ Tempo la cetra●
軍神マルスのためであれ 心に傷を与える武器について歌う事はできない
愛の神は 常に愛の調べを奏でさせるのだ
戦いの神は荒々しい怒りを鎮め
ヴィーナスの膝でやさしく眠るだろう

●ああ私は傷つき倒れる Ohime ch'io cado●
ああ 胸の中は氷のような考えを武器にしていたのに
麗しい姿と愛らしい瞳にうちのめされた
愚かにもこの魅力的な攻撃を防ぎたいとも思わない
瞳よ 微笑みよ 私をこばまないで この牢獄も私には天国となる

●組曲 Suite in F / Pietro Paolo Raimondo ●
Toccata - Corrente - Corrente Francese - Balletto

●俤(おもかげ)よ 呪われよ Maledetto sia l'aspetto●
あなたに捧げた私の心は報われない
私の情熱をからかい 苦しんで血を流す事を望むむごい人よ
私はここで死ぬだろう

●あの高慢なまなざし Quel sguardo sdegnosetto●
そのまなざしで私を傷つけ
その美しさは好みをひきさく
しかし美しさで私が打ち負かされても
その笑顔で癒しておくれ

●リチェルカータ Ricercata / Pietro Paolo Raimondo●

●アリアンナの嘆き Lamento D'Arianna●
大きな苦しみの中にいる私を死なせてください
ああテゼオ むごい方 目の前から消え去るなんて
あなたの誠意はどこへいったのですか
王座をすて あなたを信じたあわれなアリアンナ
母よ 父よ 友よ 愛しすぎ 信じすぎる者はこのようになるのです


使用楽器 14-course Archlute in G = Martin Haycock 1999 pitch a' = 415 Hz.



平井満美子/ソプラノ
 神戸女学院大学音楽学部声楽科卒業。卒業後、古楽の演奏に興味を移し研究、中世よりバロックまでのレパートリーを持つ、数少ない古楽の歌い手として活動している。多くのコンサートと録音を行い、その演奏は新聞、音楽誌等にて常に高く評価されている。現在までに発売された佐野健二とのデュオCD6点全ては雑誌「レコード芸術」の推薦盤に選ばれ、デュオリサイタルに対しては「大阪文化祭本賞」を受賞している。日本、イギリスにてE.タブと共演、好評を博す。その広い音域と澄んだ歌声は古楽のジャンルにとどまらず、テレビコマーシャルの音楽にも活躍している。

佐野健二/リュート
 英国・ギルドホール音楽院首席卒業。ギターを岡本一郎、H・クワイン、B.オー、J・ブリームの各氏、リュートをA.ルーリー、N.ノース、J.リンドベルイの各氏に師事。演奏活動に対し、「ジョン・クリフォード・ペティカン賞」「ロンドン芸術協会選出1978年度新人音楽家」「大阪文化祭奨励賞」「音楽クリティック・クラブ新人賞」「神戸灘ライオンズクラブ音楽賞」「大阪文化祭賞」(二回)を受ける。現在、ルネサンス、バロック期の撥弦楽器を中心に、独奏・伴奏・通奏低音奏者として演奏、録音活動を行っているが、そのレパートリーは民族音楽より現代音楽にまで及んでいる。相愛大学音楽学部非常勤講師。


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