EMC
クリスタルチャペルコンサート
シリーズ2006年
平井満美子&佐野健二
演奏風景、プログラム


第90回
バーバラ・ストロッツィ

2006.4.26
平井満美子/ソプラノ 佐野健二/アーチリュート





Barbara Strozzi
1619-1677
2006年度「カメラータの目論み」シリーズ2回目は
イタリア初期バロックの鬼才女流作曲家「バーバラ・ストロッツィ」 です。

 舞台はルネサンスからバロックへと移り変わり、様々な大胆な試みが行われた17世紀前半のイタリア。バーバラは父の主催するサロン「調和のアカデミー」に出入りする多くの知識人に触発されました。
 ソロ・カンタータを中心に100曲以上の作品を作曲し、存命中に8冊もの歌曲コレクショ ンを出版しています。これは当時の最も有名な作曲家よりも多いものでした。これらの出版には父親の後押しもあったようですが、作曲家及び歌手として教会や貴族の支援なしに活動していた事を考えれば驚くべき事なのです。
 バーバラ・ストロッツィの養父はジュリオ・ストロッツィ Giulio Strozzi(1583-1652)、大作曲家モンテヴェルディのパトロンのひとりであり、ヴェネツィアの詩人、台本作家、劇場支配人でもありました。 
 彼女は自らの作風と同じく非常に自由奔放な生涯を送ったようで、未婚ながら4人の子供がおりました。このプログラムの表紙を飾っているのは16歳前後のバーバラの肖像画です。音楽家というよりも女性美を前面に打ち出し描かれたこの絵の意図はなんだったのか、私たちは自由に想像を膨らまさせてもらう事にしましょう。
 初期イタリアバロック音楽においてバーバラ・ストロッツィの作品には豊かな創造性と共に、功妙且つ自由な知的遊戯が交錯し独自の世界を展開しています。彼女の代表作「私の涙」に見られる大胆な和声の響きからは、まさにバロックの語源である「歪な真珠」のイメージが感じ取れます。

 今日使用しているアーチリュートはリュート史上、最も大型で多弦の楽器です。豊かな音量と低音を持つこの楽器は17世紀イタリアで、新しい趣味の音楽には不可欠な楽器として発明、愛好されました。カプスベルガーは名演奏家として名を馳せ、この楽器の為に多くの作品を残しています。
 それでは今宵、全くの男社会とも言える初期バロック時代において頭角を現し、今なお我々の心を揺すぶるバーバラ・ストロッツィの音楽をお楽しみ下さい。


programme

●ひそやかな恋人 L'Amante Segreto●
死なせてくれ 我が目は美しき君の顔を見続ける
君への愛で弱り死に近づいている私を矢で射ぬいてくれ

●ヘラクレイトスの恋 L'Eraclito Amoroso●
私が泣いている訳を聴いてくれ 私が信じ熱愛していた偶像は滅びた
涙はわたしを養い 悲しみはわたしの喜び ため息はわたしを癒す

トッカータ Toccata No.5
Giovanni Girolamo Kapsberger カプスベルガー (c.1580-1651)

●新しい恋人の誘い Chiamata a Nuovi Amori●

恋は自由だと悪魔はささやく キューピットは私の意に反する
私は恋に傷つき朽ち果てても 美しい瞳の為に死をも考える

●いとしい人を封じ込める我が心●
Cuore che reprime alle lingua di manifestare il nome della sua cara
静かに燃える私の心 ため息や涙そして痛みを受け入れようとする
私の有様はわかるまい 言葉は死にゆく運命を伝える為に

トッカータ Toccata No.1
Giovanni Girolamo Kapsberger カプスベルガー

●私の涙 Lagrime mie●
息も絶えるこの激しい痛みを押し流してくれないのか
わが愛しのリディアは捕らわれの身
死にも情けがあるのなら我が命を奪え 悲しみの目よなぜ泣かぬ


使用楽器

14-course Archlute in G = Martin Haycock 1999 pitch a' = 415 Hz.



平井満美子/ソプラノ
 神戸女学院大学音楽学部声楽科卒業。卒業後、古楽の演奏に興味を移し研究、中世よりバロックまでのレパートリーを持つ、数少ない古楽の歌い手として活動している。多くのコンサートと録音を行い、その演奏は新聞、音楽誌等にて常に高く評価されている。現在までに発売された佐野健二とのデュオCD6点全ては雑誌「レコード芸術」の推薦盤に選ばれ、デュオリサイタルに対しては「大阪文化祭本賞」を受賞している。日本、イギリスにてE.タブと共演、好評を博す。その広い音域と澄んだ歌声は古楽のジャンルにとどまらず、テレビコマーシャルの音楽にも活躍している。

佐野健二/リュート
 英国・ギルドホール音楽院首席卒業。ギターを岡本一郎、H・クワイン、B.オー、J・ブリームの各氏、リュートをA.ルーリー、N.ノース、J.リンドベルイの各氏に師事。演奏活動に対し、「ジョン・クリフォード・ペティカン賞」「ロンドン芸術協会選出1978年度新人音楽家」「大阪文化祭奨励賞」「音楽クリティック・クラブ新人賞」「神戸灘ライオンズクラブ音楽賞」「大阪文化祭賞」(二回)を受ける。現在、ルネサンス、バロック期の撥弦楽器を中心に、独奏・伴奏・通奏低音奏者として演奏、録音活動を行っているが、そのレパートリーは民族音楽より現代音楽にまで及んでいる。相愛大学音楽学部非常勤講師。


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