EMC
クリスタルチャペルコンサート
シリーズ2005年
平井満美子&佐野健二
演奏風景、プログラム

第85回
グラウンド&シャコンヌ

2005.05.25.
平井満美子/ソプラノ 佐野健二/バロックリュート、リウトアテオルバート、イングリッシュテオルボ

2005.05.25.



 2005年5月のクリスタルチャペルコンサートは「グラウンド&シャコンヌ」です。
 グラウンドとはルネサンスからバロック期にかけてたいそう流行った定型音型の事で、通常バスの旋律を伴った短い和音進行からできています。そのグラウンドの上にどんどん変奏を繰り広げていく旋律をトレブルと呼び、ルネサンス後期から初期のバロックにかけては多くのトレブル&グラウンドが作り出されました。何回も繰り返されるグラウンドバスから聴き手は徐々に安心感と安定感を与えられ、自由に振る舞う旋律を楽しむ事が出来たのです。シャコンヌとパッサカリアはバロック時代の器楽の変奏曲。どちらも3拍子の荘重なリズムを持つ楽曲で各々に明瞭な区別は見受けられません。定型バスパターンの反復、旋律の変奏という点ではグラウンドと同義語とも言えます。
 作曲家にとってグラウンドやシャコンヌといった定型パターンは、形を整えやすいというメリットはあるものの、ともするとワンパターンに陥り退屈になるおそれがあります。しかし、今日お聴き頂くストロッツィ(1619-c1664) 、サンチェス(c1600-1679)、パーセル(1659-1695) たちの才能は歌詞の抑揚を最大限に高める魅力的な旋律を次から次へと生み出していきました。そして英語の響きを音楽にのせるという点でパーセルは比類無き才能をも発揮したのです。
 今日は大型の楽器を三台使います。ヴァイス(1686-1750)の作品に使用するのはジャーマンテオルボと称されるバロックリュートです。ルネサンスリュートの和声を表現しやすい調弦から、バロック様式に重要な対位法的な表現に適した調弦になっており、バロック時代のソロ楽器の代表です。そしてストロッツィやサンチェスといった初期イタリアバロック音楽作曲家の楽曲に最も適しているリウトアテオルバート。小型の14コース・アーチリュートで最高音のみ単弦、残りはすべて複弦が張られています。 それでは今宵、しばし現世を忘れバロック時代の即興的固執低音の魅力をお楽しみ下さい。イングリッシュ・テオルボとはパーセル歌曲の伴奏にもっとも適しているといわれる楽器で、本来最高音であるべき第1コースがオクターブ低く調弦されており、歌の音域を邪魔することなく豊かな和音を提供することが出来るのです。



Ground & Chaconne
Mamiko Hirai & Kenji Sano

programme

Ciacona シャコンヌ/ Silvius Leopold Weiss

Cantada il Passcaglie いとしいリラ / Giovanni Felice Sances(mp3 6.4MB)
いとしいリラを奪われた 愛は傷つき失われる
私の愛がリラの心からも追放される
でも 私の愛は誰にも邪魔されることはないのだ

L'Eraclito Amoroso 私が泣いている / Barbara Strozzi
私が泣いている訳を聞いてくれ 私が信じ熱愛していた偶像は滅びた
涙はわたしを養い 悲しみはわたしの喜び ため息はわたしを癒す

What a sad fate なんて悲しい私の運命よ / Henry Purcell
なんて悲しい私の運命よ なぜ彼女は私以外の人に親しげなのだ
願いは私の愛が少なくなること もしくは彼女の愛が増えること

O let me weep 泣かせてください/ Henry Purcell
泣かせてください 昼の光からも身を隠し 心が果てるまでため息をつこう
あの人がいないことを嘆いてもあの人に会うことはない

Musik for a while つかの間の音楽 / Henry Purcell
悩みをまぎらわせよ 死者の永遠の縛めをとき放つまで
しばしの間 悩みをまぎらわせよ

Passagaille パッサカリア/ Silvius Leopold Weiss

Crown the Altar 祭壇を飾れ / Henry Purcell
祭壇を飾れ 身よ 晴れやかな天使の群れが
われわれの歌に仲間入りしようとしている。

Evening Hyme 夕べの賛歌 / Henry Purcell
地上の世界に夕べが別れを告げる今
私の魂は親愛なる神の御腕の中にしか安らげる事はない
神を讃えよ  アレルヤ


Instrument
13-course BaroqueLute = Martin Haycock 2002
14-course Liutoateorbato = Junji Nishimura 1985
14-course English Theorbo = Martin Haycock 1999


平井満美子/ソプラノ
 神戸女学院大学音楽学部声楽科卒業。卒業後、古楽の演奏に興味を移し研究、中世よりバロックまでのレパートリーを持つ、数少ない古楽の歌い手として活動している。多くのコンサートと録音を行い、その演奏は新聞、音楽誌等にて常に高く評価されている。現在までに発売された佐野健二とのデュオCD6点全ては雑誌「レコード芸術」の推薦盤に選ばれ、デュオリサイタルに対しては「大阪文化祭本賞」を受賞している。日本、イギリスにてE.タブと共演、好評を博す。その広い音域と澄んだ歌声は古楽のジャンルにとどまらず、テレビコマーシャルの音楽にも活躍している。

佐野健二/リュート
 英国・ギルドホール音楽院首席卒業。ギターを岡本一郎、H・クワイン、B.オー、J・ブリームの各氏、リュートをA.ルーリー、N.ノース、J.リンドベルイの各氏に師事。演奏活動に対し、「ジョン・クリフォード・ペティカン賞」「ロンドン芸術協会選出1978年度新人音楽家」「大阪文化祭奨励賞」「音楽クリティック・クラブ新人賞」「神戸灘ライオンズクラブ音楽賞」「大阪文化祭賞」(二回)を受ける。現在、ルネサンス、バロック期の撥弦楽器を中心に、独奏・伴奏・通奏低音奏者として演奏、録音活動を行っているが、そのレパートリーは民族音楽より現代音楽にまで及んでいる。相愛大学音楽学部非常勤講師。


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