EMC
クリスタルチャペルコンサート
シリーズ2005年
平井満美子&佐野健二
演奏風景、プログラム

第84回
パヴァーヌ&ガリアルド

2005.03.23.
平井満美子/ソプラノ 佐野健二/リュート、ヴィウエラ

2005.03.23.



 2005年3月のクリスタルチャペルコンサートは「パヴァーヌ&ガリアルド」と題しイギリス、フランス、スペインの16世紀、ルネサンスの舞曲と歌曲をお聴き頂きます。
 音楽におけるルネサンス時代は踊りの時代と言われていました。ダンスは人々の娯楽の筆頭として、また日々の生活の悲喜こもごもを表す一つの手段として大層愛好されていました。庶民はめでたいことがあるとギターをかき鳴らし狂ったように踊りあかし、貴族達はご自慢のお抱え楽士たちに演奏をさせて、贅沢な舞踏会を事あるごとに開催すると言った具合です。
 パヴァーヌはイベリア半島に源を発する2拍子系の優雅な舞曲で、孔雀が羽を広げてゆったりと歩く姿にその起源があると言われています。宮廷舞踏会に招待された貴族のカップルは、その宴の始まりにパヴァーヌを踊りながら王様の前に進み出て挨拶をするという、格調高い舞曲の代表とされていました。そして、このゆったりとしたパヴァーヌと、それに続く軽快な3拍子系の踊りのガリアルドは、しばしば一対の舞曲として作曲されました。しかし、男女が手と手を取り合い、すり足で優雅に振る舞うパヴァーヌに対して、身体が触れあう機会の多い、ちょっと下品なガリアルドは王様のお許しが出て初めて踊られる舞曲でした。王様曰く「今宵は無礼講じゃ、皆の者、踊れ!」みたいなものでしょうか。  多くのルネサンス歌曲や器楽曲は舞曲の形式に則して作曲されました。ルネサンスリュート歌曲の最高峰とされるジョン・ダウランドの「流れよ、我が涙」の器楽版は「涙のパヴァーヌ」として有名です。ダウランドは晩年に出版された歌曲集「巡礼の慰め」の最終ページに「涙のパヴァーヌに続くガリアルド」を載せています。
 ルイス・ミランに代表されるスペイン・ルネサンスのヴィウエラ音楽は7人のヴィウエリスタ達がそれぞれ一巻の曲集を刊行しており、様々な形式の歌、ファンタジア、そして舞曲が収められています。
 ルネサンス時代の偉大な発明の一つに活版印刷があげられますが、当時多くの音楽家が出版業者としても活躍しました。ピエール・アテニャンもその一人です。印刷の発達により楽譜の流通範囲が飛躍的に広がりました。21世紀に生きる私たちは今、そのお陰で数多く出版されたリュート曲集や器楽の為の舞曲集(ダンスリー)、そして踊りのステップを克明に示した本を資料として手にすることが可能であり、ルネサンスダンス音楽の詳細を知ることが出来るのです。  それでは今宵、パヴァーヌとガリアルドを中心としたルネサンスリュートと歌による16世紀フランスとイギリスの作品、そして歌とヴィウエラによるルネサンス・スペインの調べにより、皆様方ご自身のルネサンス舞踏会をイメージしてお楽しみ下さい。



Pavane & Galliard

programme

《France》
わたしの命をにぎる人 Belle qui tiens ma vie / Anon.
私の希望 Le bon espoir que j'ay / Josquin Baston
どうしてこうなるのですか D'ou vient cela, belle / Pierre Attaingnant
パヴァーヌ&ガリアルド Pavane & Galliard / Pierre Attaingnant
何もしない 何も言わない Je ne fay plus / Antoine Busnois

《Spain》
パヴァーヌ第1番 Pavan / Luis Milan
もし沢山の鷹が白鷺を襲ったら Sy Tantos Halcones la Gar・a combaten / Luys de Narvaez
パヴァーヌ&ガリアルド Pauane d alexandre & Galliard / Alonso Mudarra
ドゥランダルテ Durandarte / Luis Milan
ディンディリン Dindirin, dindirin / Anon.
運命の場所 Fata la Parte / J del Ensina

《England》
もし涙の洪水が If floods of tears / Anon.
ニンフよ安らかに Rest Sweet Nimphs / Francis Pilkington
涙のパヴァーヌとガリアルド Lachrimae Pavan & Galliard / John Dowland
もし僕の嘆きが If my complaints / John Dowland
今こそ別れ Now oh now I need must parts / John Dowland(mp3 3.4MB)

Instrument
7-course Lute = Martin Haycock 1990
6-course Vihuela da mano = Kenji Sano 2004

平井満美子/ソプラノ
 神戸女学院大学音楽学部声楽科卒業。卒業後、古楽の演奏に興味を移し研究、中世よりバロックまでのレパートリーを持つ、数少ない古楽の歌い手として活動している。多くのコンサートと録音を行い、その演奏は新聞、音楽誌等にて常に高く評価されている。現在までに発売された佐野健二とのデュオCD6点全ては雑誌「レコード芸術」の推薦盤に選ばれ、デュオリサイタルに対しては「大阪文化祭本賞」を受賞している。日本、イギリスにてE.タブと共演、好評を博す。その広い音域と澄んだ歌声は古楽のジャンルにとどまらず、テレビコマーシャルの音楽にも活躍している。

佐野健二/リュート
 英国・ギルドホール音楽院首席卒業。ギターを岡本一郎、H・クワイン、B.オー、J・ブリームの各氏、リュートをA.ルーリー、N.ノース、J.リンドベルイの各氏に師事。演奏活動に対し、「ジョン・クリフォード・ペティカン賞」「ロンドン芸術協会選出1978年度新人音楽家」「大阪文化祭奨励賞」「音楽クリティック・クラブ新人賞」「神戸灘ライオンズクラブ音楽賞」「大阪文化祭賞」(二回)を受ける。現在、ルネサンス、バロック期の撥弦楽器を中心に、独奏・伴奏・通奏低音奏者として演奏、録音活動を行っているが、そのレパートリーは民族音楽より現代音楽にまで及んでいる。相愛大学音楽学部非常勤講師。


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