EMC
クリスタルチャペルコンサート
シリーズ2004年
リュートソングの様々
平井満美子&佐野健二
演奏風景、プログラム、mp3

第81回
つかの間の音楽

2004.10.27.
平井満美子/ソプラノ 佐野健二/アーチリュート

2004.10.27.



 17世紀後半、イギリスはチャールズ2世の即位期で大変に裕福な情勢にあり、風俗に対しても以前より寛大な風潮が人々に様々な娯楽を求めさせました。芸術に関しては、もともと演劇等、舞台芸術好きなイギリス国民、演劇と音楽を結びつけ始めます。同時期、ヨーロッパにはオペラの時代が訪れており、イギリスでもイタリア・オペラなどの上演が試みられました。しかしイギリスでは、清教徒革命による禁欲主義の影響のせいか、王政復古がなされてもオペラは歓迎されず、むしろ物語の進行とはあまり関係なく、音楽が自由に挿入されている音楽付き演劇が好まれました。
 そんな時期、イギリス・バロック時代の大作曲家ヘンリー・パーセルは現れました。「イギリスのオルフェウス」と呼ばれたヘンリー・パーセル。「オルフェウス・ブリタニクスOrpheus Britannicus(イギリスのオルフェウス)」とはロンドンの楽譜出版業者ヘンリー・プレイフォードによって、パーセルの死後に刊行された2巻からなるパーセルの世俗歌曲選集のタイトルなのですが、その名が当時のパーセルの名声を物語っています。
 パーセルはわずか36年の短い生涯に800曲もの作品を作り出しました。幼いころから神童とさわがれていたパーセルは当時の音楽ジャンル(オード、アンセム、オペラ、劇音楽、キャッチ、歌曲、室内楽、鍵盤音楽など)の殆どを網羅しており、質、量ともにイギリス・バロック時代に於ける最大の作曲家といわれています。
 パーセルの音楽で特に注目すべきジャンルは劇場音楽と呼ばれるものといえるでしょう。「オペラ」「セミ・オペラ」「付随音楽」といった舞台劇場に関連する音楽で、彼の才能は創造性に富む旋律と声楽曲における英語の表現能力にとりわけ発揮されました。  ルネサンスの知的財産と現代の基礎となった哲学、科学的な発想などが入り交じり、見ようによっては結構渾沌とした王政復古時代のイギリス。そんな時期に生れ、活躍したヘンリー・パーセルの作品は、いまなお私たちの心に響くきます。
 「つかの間の音楽」。パーセルの想いが、そして私共の演奏が、つかの間のひとときを皆さまを安らかに満たす事を願います。パーセルの筆より紡ぎだされた旋律の泉に身を委ね、愛の言葉に見る心の高揚を、希望を、喜び、絶望、独り言、そして、ささやきをお楽しみ下さい。(CD「つかの間の音楽」ライナーノートより抜粋) 佐野健二



Henry Purcell
1659~1695
MUSIK FOR A WHILE

programme

恋人の心配 The cares of lovers

愛する者の心配 驚きがそれほど甘い者なら 嘆きまでも喜びでさえある

運命の時は足早にやってくる The fatal hour comes on a pace
運命がこの場所からあなたを呼ぶなら死んだ方がいい
私の悲しみの傷をいやせるのはあなただけなのです

シャコンヌ Chaconne orig. for 2 recorders and B.C.


おまえの手をかしておくれ ベリンダ Thy hand, Belinda
死はいまや歓迎すべき客人 私は死がおそうこと願っている
ああこの運命をわすれておくれ

つかの間の音楽 Musik for a while
悩みをまぎらわせよ 死者の永遠の縛めをとき放つまで
しばしの間 悩みをまぎらわせよ

ほら あの人が僕から逃げる I see she fly's me
あの人の軽蔑や私の欲望がなんだ あの人に恋するのが僕の人生だ

バラの館より From Rosie Bow'rs
愛の女神が眠りたもう館からキューピットよ 私の所へ飛んできて
あのひとの心を動かしておくれ 正気を失えば着物と髪の毛を振り乱し
一千回でも死のう  こんなに空しく疲れるよりは

シャコンヌ Chaconne from King Arthur

朝の賛歌 A Morning Hymn
"用心深い羊飼いよ Thou Wakeful Shepherd"
イスラエルを守る羊飼いよ 眠りより目覚めよ 徳をもて
朝の賛歌をあなた方に提供しよう 神の示された道を歩こう
そして神を讃えよう

夕べの賛歌 An Evening Hymn
"いまや太陽はその光を覆い隠し Now that the Sun hath veil'd his light"
地上の世界に夕べが別れを告げる今
私の魂は親愛なる神の御腕の中にしか安らげる事はない
神を讃えよ  アレルヤ


平井満美子/ソプラノ
 神戸女学院大学音楽学部声楽科卒業。卒業後、古楽の演奏に興味を移し研究、中世よりバロックまでのレパートリーを持つ、数少ない古楽の歌い手として活動している。多くのコンサートと録音を行い、その演奏は新聞、音楽誌等にて常に高く評価されている。現在までに発売された佐野健二とのデュオCD6点全ては雑誌「レコード芸術」の推薦盤に選ばれ、デュオリサイタルに対しては「大阪文化祭本賞」を受賞している。日本、イギリスにてE.タブと共演、好評を博す。その広い音域と澄んだ歌声は古楽のジャンルにとどまらず、テレビコマーシャルの音楽にも活躍している。

佐野健二/アーチリュート
 英国・ギルドホール音楽院首席卒業。ギターを岡本一郎、H・クワイン、B.オー、J・ブリームの各氏、リュートをA.ルーリー、N.ノース、J.リンドベルイの各氏に師事。演奏活動に対し、「ジョン・クリフォード・ペティカン賞」「ロンドン芸術協会選出1978年度新人音楽家」「大阪文化祭奨励賞」「音楽クリティック・クラブ新人賞」「神戸灘ライオンズクラブ音楽賞」「大阪文化祭賞」(二回)を受ける。現在、ルネサンス、バロック期の撥弦楽器を中心に、独奏・伴奏・通奏低音奏者として演奏、録音活動を行っているが、そのレパートリーは民族音楽より現代音楽にまで及んでいる。相愛大学音楽学部非常勤講師。


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