EMC
クリスタルチャペルコンサート
シリーズ2004年
リュートソングの様々
平井満美子&佐野健二
演奏風景、プログラム、mp3

第80回
エル・マエストロ

2004.07.21.
平井満美子/ソプラノ 佐野健二/ヴィウエラ

2004.07.21.



 クリスタルチャペルコンサート・シリーズ2004・リュートソングの様々は第80回「スペイン宮廷の響き、ルイス・ミラン“エル・マエストロ”」です。1500年頃、バレンシアの貴族の家に生まれたミランは幼い頃より音楽に親しみ、スペイン、ポルトガルの宮廷貴族社会で活躍したヴィウエラ奏者です。
 「エル・マエストロ」は1535年ヴァレンシアで出版されたヴィウエラ曲集で、ミランの良き理解者であったポルトガル王ジョアン3世に献呈されています。この曲集は最初に出版されたヴィウエラ曲集というだけでなく、収められた作品の質の高さと、初めて言葉で演奏速度等を示した文献として音楽史上、重要な扱いをされています。
 2巻からなるこの曲集、第一部には40曲のファンタジア、4曲のティエント、そして6曲のパヴァーヌというミランのオリジナルのヴィウエラ独奏が収められており、第二部はヴィウエラ伴奏による独奏歌曲、6曲のスペイン語の歌(ヴィランシーコ)、6曲のポルトガル語の歌、4曲の古いスペイン語の歌(ロマンセ)、6曲のイタリア語による歌(ソネット)という内容で構成されています。
 ルネサンスの時代、アラブに起源を持つリュートはヨーロッパで隆盛を極めましたが、唯一スペインではリュートよりもヴィウエラが愛好されました。ヴィウエラの調弦はリュートと同じなのですが、その形態はほぼギターと同じです。ヴィウェラとギターは張られた弦の数と調弦の違いで区別がなされていたと考えられています。また、王侯貴族に愛されたヴィウエラに対して、装飾も少なく音域の狭い16世紀のギターは安価な庶民の楽器と位置づけられていました。しかし17世紀、時代はルネサンスからバロックへと移り変わり、4コースから5コースに進化したバロック・ギターの勢力が強まり、ヴィウェラはその黄金時代の終りを告げることになります。
 ルネサンス・スペインでリュートよりもヴィウエラが愛好されたその理由には宗教的な背景があるとも言われていますが定かではありません。もしかしたら、スペインの殿方はお尻の出っ張ったリュートよりも腰のくびれたヴィウエラがお好みだったのかもしれません。



Luis de Milan
EL MAESTRO
1535


パヴァーヌ第1番 Pavan I(mp3)

Villancicos en castellano
愛に勝ちたい Al amor quiero vencer(mp3)

私は愛の勝利を手にしたい しかし誰が与えてくれよう
でも彼の大きな力で 私は愛に勝利する 私は愛の勝利がほしい 私の幸せのために

Villancicos en castellano
もし風が吹けば Agora viniesse un viento
もし 私をその中に入れてはこぶ風が吹いたときは
もし 私の心のままに息することが出来る風が吹いたならば
私の恋人のなかに運んで貰い 喜びをもたらしてくれる

Villancicos en portugues
話して恋人よ Falai mina amor
話して私の恋人 もしあなたが少しも話さないなら 私は死んでしまう
話して私の恋人よ さもなくばあなたは知るべきだ もう私が存在しないことを

ファンタジア第11番 Fantasia XI

Villancicos en portugues
私は青ざめる Perdida tenyo la color
私は青ざめた 母さんはそれは恋をしたからという
私は青ざめた まだ見ぬ少女に 私の人生も青ざめた 母さんはそれは恋をしたからという

ファンタジア第10番 Fantasia X(mp3)
ファンタジア第22番 Fantasia XXII

Villancicos en portugues
愛は誰が持っている?Quien amores ten
愛は誰が持っている? 最後にはあなた達のもの それは彼女のものではない
愛は誰が持っている? はるかカスティーリャの人は愛を娘に捧げる

Villancicos en portugues
私を死なせて Leuay me amor
私を死なせて 愛の神よ この世から遠く もはや生きることを望まない
私を奪い去って 愛の神よ 二度ともどれぬ所へと
私を死なせて あなたと一緒に なぜならあなたは私の人生
あなたなしでは この世に生きたいと思わない もはや生きることは望まない

ティエント第4番 Tiento IV

Romance
モーロ人は思い出しおののいた Con pauor recordo el moro
モーロ人は大声で叫び始めた 我らの晴着は武具であり
我らの安らぎは戦いだ 我らの床は固き岩 我らの夜はねずの番
あやめうる物すべてを命ある身とはしない 死に神に会うその日まで

使用楽器
6-course Vihuela da mano in b = Kenji Sano 2000
6-course Vihuela da mano in G = Kenji Sano 2004

平井満美子/ソプラノ
 神戸女学院大学音楽学部声楽科卒業。卒業後、古楽の演奏に興味を移し研究、中世よりバロックまでのレパートリーを持つ、数少ない古楽の歌い手として活動している。多くのコンサートと録音を行い、その演奏は新聞、音楽誌等にて常に高く評価されている。現在までに発売された佐野健二とのデュオCD6点全ては雑誌「レコード芸術」の推薦盤に選ばれ、デュオリサイタルに対しては「大阪文化祭本賞」を受賞している。日本、イギリスにてE.タブと共演、好評を博す。その広い音域と澄んだ歌声は古楽のジャンルにとどまらず、テレビコマーシャルの音楽にも活躍している。

佐野健二/ヴィウエラ
 英国・ギルドホール音楽院首席卒業。ギターを岡本一郎、H・クワイン、B.オー、J・ブリームの各氏、リュートをA.ルーリー、N.ノース、J.リンドベルイの各氏に師事。演奏活動に対し、「ジョン・クリフォード・ペティカン賞」「ロンドン芸術協会選出1978年度新人音楽家」「大阪文化祭奨励賞」「音楽クリティック・クラブ新人賞」「神戸灘ライオンズクラブ音楽賞」「大阪文化祭賞」(二回)を受ける。現在、ルネサンス、バロック期の撥弦楽器を中心に、独奏・伴奏・通奏低音奏者として演奏、録音活動を行っているが、そのレパートリーは民族音楽より現代音楽にまで及んでいる。相愛大学音楽学部非常勤講師。


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