EMC
クリスタルチャペルコンサート
シリーズ2004年
リュートソングの様々
平井満美子&佐野健二
演奏風景、プログラム

第78回
花咲く日々に

2004.03.17.
平井満美子/ソプラノ 佐野健二/リウトアテオルバート、ルネサンスギター

2004.03.17.



 クリスタルチャペルコンサート・シリーズ2004・リュートソングの様々・第78回は「フランス・ルネサンスのシャンソンと宮廷の歌・花咲く日々に」です。
 シャンソンとは、フランス語の世俗的な歌詞にもとづく歌曲のこと。16世紀、生粋のフランスの作曲家たちは、生き生きとした旋律と、歯切れの良いリズムをもったシャンソンを多数生み出しました。それらのシャンソンは、合唱や重唱の形で歌われる事も多かったのですが、リュート伴奏付きの歌曲集として数多く出版されました。これらの多くはエール・ド・クール(宮廷の歌)と呼ばれ、初期バロックの時代までフランスで広く愛唱されました。
 ルネサンス期のヨーロッパで最も愛好された楽器リュートはフランスに於いても独奏、伴奏と、音楽の中心的存在としてもてはやされました。16世紀初頭のリュートには6コース11本の弦が張られていたのですが、16世紀後半から17世紀初頭にかけてリュートは低音域側に次々に弦を増やしていきました。17世紀前半のフランスリュート曲の大半は10コースリュートのために書かれていますが、最も弦の多い楽器は14コース27本の弦が張ってありました。今日の演奏で使用するリウトアテオルバートはこの楽器にあたります。
 本日使用するもう一本の楽器ルネサンスギターは4コース7本の弦を持ち、現在のウクレレのルーツにあたります。リュートに比べると簡素なこの楽器は庶民の楽器として愛好されたのですが、一見安易に見えるこの楽器、思いの外表現力に優れ、多くの職業演奏家にも愛され、たくさんのギター曲集が16世紀には出版されました。今日演奏されるルネサンスギター曲は1551年から1556年にかけてアドリアン・ル・ロワと従兄弟のロベール・バラールにより出版された5巻の「ギターのためのタブラチュア譜」から選ばれています。




《17世紀・歌とリュート/宮廷の歌 Air de Cour pour Voix et Luth》

私のいとしい人よ Ma belle si ton ame
愛するやさしい炎がつくのを感じる 若さは逃げすぐに夜の影に取り囲まれる
ねたみや心配をなくし さあ自由なこのときを生きよう

我が仲間 Amis enivrons nous : Etienne Moulinie (1600〜1669)
飲もうじゃないか ブリュッセルの狐を捕らえたねぎらいに
とにかくこの地フランスでガストンに飲ませよう 神々の宴でネクターを頂戴するよりも

《歌とルネサンス・ギター/Adrian le Roy (1520〜1598)》

男達が恋を誇りにすることを
Nous voyons que les h?mes : cinqiesme livre de guiterre 1554

男達が恋を誇りにすることを そして愛をほしがることに気をつけよ
彼らは賞賛すべき名誉ある男達だ 過ちは許されない

移り気な神よ Dieu inconstant : cinqiesme livre de guiterre
移り気な神よ なぜあなたは傷ついた心をそのままにしておくのですか
私の心にはやさしい炎を感じるのに 彼女の心も熱をおびたのを感じる

《ルネサンス・ギター・ソロ/Adrian le Roy》

四つのブルゴーニュのブランル
Quatre Branles Bourgongne : premier livre de guiterre 1551


《歌とルネサンス・ギター/Adrian le Roy》

もう続けようとは思わない
Plus ne veux estre a la suite : second livre de guiterre 1555

顔姿は美しく 賢明にみえるあなたの心は案内人のない盲人 規則もない
愛を誓うたびその誓いはやぶられる

《16世紀・歌とリュート/ルネサンス・シャンソン Chansons au Luth(16c.)》

あなたのくれる喜び Jouissance vous donneray : claudin de Sermisy (c.1490〜1562)
もし私が気がかりなら もしあなたの心が不満のために凍りつくなら
あなたは愛を声に出さなくてはなりません

花咲く日々に Tant que vivray : Claudin de Sermisy : Pierre Attaingnant (1597)
行い 言葉 歌 すべてを持って全能なる神に仕えよう 愛は幾度も僕をやつれさせた
しかし悲しみの後で喜ばせた 悲しみは消えよ 喜びよいつまでも

もしあなたのために私がいるなら Si j'ay pour vous
この人間を憐れんでおくれ あなたの愛であるしもべは疲れ果て死にそうだ
生来あなたに依存しているのだから

やめておくれ私の目よ Cessez, mes yeulx : Thomas Crequillon (1480〜1557)
悲しみで涙を流すのもため息をつくのもやめて 私のこの絶望は続き
これから永くその犠牲者となるでしょう
《リュート・ソロ/ Jean-Baptiste Besard (c.1567-after1617)》

四つの新しいブランル Quatre Bransles nouveaux

《17世紀・歌とリュート/宮廷の歌 Air de Cour pour Voix et Luth》

甘い魅力の持ち主 Objet dont les charmes si doux : Antoine Boesset (1586〜1643)
私はすっかりあなたの虜 美しい目の一瞥はどんな男もあなたへとなびかせる
天があなたに与えなかった物はない 私はこの喜びのあまりやはり死んでしまいそう

お願いだからしばらないで N'emprisonnes pas je vous prie : Jacques le Fevre
自由と平和と休息がすき だから結婚なんかはしない しばられて とらわれの魂達よ
結婚の話を聞くと胸くそがわるくなる。



使用楽器 pitch a' = 466 Hz.
14-course Liuto attiorbato = Junji Nishimura 1985
4-course Renaissance Guitar = Kenji Sano 2003



平井満美子/ソプラノ
 神戸女学院大学音楽学部声楽科卒業。卒業後、古楽の演奏に興味を移し研究、中世よりバロックまでのレパートリーを持つ、数少ない古楽の歌い手として活動している。多くのコンサートと録音を行い、その演奏は新聞、音楽誌等にて常に高く評価されている。現在までに発売された佐野健二とのデュオCD6点全ては雑誌「レコード芸術」の推薦盤に選ばれ、デュオリサイタルに対しては「大阪文化祭本賞」を受賞している。日本、イギリスにてE.タブと共演、好評を博す。その広い音域と澄んだ歌声は古楽のジャンルにとどまらず、テレビコマーシャルの音楽にも活躍している。

佐野健二/リウトアテオルバート、ルネサンスギター
 英国・ギルドホール音楽院首席卒業。ギターを岡本一郎、H・クワイン、B.オー、J・ブリームの各氏、リュートをA.ルーリー、N.ノース、J.リンドベルイの各氏に師事。演奏活動に対し、「ジョン・クリフォード・ペティカン賞」「ロンドン芸術協会選出1978年度新人音楽家」「大阪文化祭奨励賞」「音楽クリティック・クラブ新人賞」「神戸灘ライオンズクラブ音楽賞」「大阪文化祭賞」(二回)を受ける。現在、ルネサンス、バロック期の撥弦楽器を中心に、独奏・伴奏・通奏低音奏者として演奏、録音活動を行っているが、そのレパートリーは民族音楽より現代音楽にまで及んでいる。相愛大学音楽学部非常勤講師。


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