EMC
クリスタルチャペルコンサート
2003年
演奏風景、プログラム

古楽の様々シリーズNo.22
3つのデュエット
2003.11.11.

大西万喜/ヴィオラ・ダ・ガンバ
安宅留美子/ソプラノ
嵯峨山庸子/バロック・ヴァイオリン
佐野健二/アーチリュート、古典ギター

Programme

《Viola da Gamba & Archlute》
2003.11.11.

Christopher Simpson シンプソン (1605?-1669)
Prelude - Division No.4 プレリュード - 変奏曲 第4番

17世紀イギリスの音楽理論家であり作曲家であったシンプソンは、1659年に「The division-viol」を出版しました。この書物は、当時イギリスで好まれたグラウンドという手法(1つの低音旋律の上で高音旋律が変奏されていくもの)を用いて、ヴィオラ・ダ・ガンバの演奏法を述べ、多くの装飾例と共に、無伴奏の小品とグラウンド形式による変奏曲が収められています。

Marin Marais マレ (1656-1728)
Prelude, le soligni - Allemande la Facile - Sarabande - Gigue - Petit Caprice - Rondeau
「ヴィオル曲集 第5巻」より[ Piece de viole cinquieme livre ]
マレは、17〜18世紀にかけてパリで活躍した作曲家であり、自身も極めて優れたヴィオラ・ダ・ガンバ奏者でした。1686年から1725年にかけて出版されたヴィオラ・ダ・ガンバのための5巻の曲集には、550曲以上の作品が含まれており、現在も欠かすことのできない重要なレパートリーとなっています。作品群は組曲形式となっていますが規則性はなく、その多くは舞曲を題材としています。「ヴィオル曲集第5巻」は、最晩年に出版された曲集です。技巧を駆使した華やかな前4作に比べると、個々の作品は短くて非常にシンプルではありますが、その中に彼の音楽が凝縮されていると言えます。(大西)

《Soprano & 19C. Guitar》
2003.11.11.

Franz Peter Schubert シューベルト (1797-1828)
Seligkeit 至福

ウイーン古典派からロマン主義への線上に置かれるシューベルトは、その短い生涯のうちに1000点にも及ぶ作品(うち歌曲は600点余り)を残しました。10代後半から20代はじめにかけて、すでに全作品の半数以上がかかれ、特に歌曲において珠玉の作品が数多くかかれました。これは、ヘルティの詩による19才の時の作品です。

Ludwig van Beethoven ベートーベン (1770-1827)
Ich denke dein 君を想う

ゲーテの詩によるこの歌曲をもとにして、6つの変奏曲(ピアノ曲)もかかれています。この頃(1798)から難聴の徴候がみられたという友人へあてた手紙が残っています。なお、ギター伴奏への編曲は、オーストリアの出版者でもあり作曲家でもあるAnton Diabelli(1781-1858)によります。

Mauro Giuliani ジュリアーニ (1781-1829)
Lied 歌 、Abschied 別れ、Standchen 小夜曲

イタリアの作曲家で、幼い頃からフルート、バイオリン、チェロと対位法を学び、ギターの名手でもありました。20才の頃にはギター奏者としてかなり有名でしたが、19世紀初頭のイタリアはオペラ以外の音楽に余り関心がなかったため、1806年にウイーンに移り住み古典ギター運動の先頭に立って活躍しました。"6つのリート"の中から3曲、詩は順にシュタイゲンテッシュ、シラー(といわれているが定かではない)、ティートゲ。

Franz Peter Schubert シューベルト (1797-1828)
Gretchen am Spinnrade 糸を紡ぐグレートヒェン

ゲーテの「ファウスト」による、17才の時の作品。シューベルト以前の歌曲が、詩への従属性も高く、詩の朗誦に従順な随伴者の役割に甘んじていたのに対し、シューベルトの歌曲は詩と音楽の表現原理が一体となり、独立価値のジャンルへと確立しまっした。伴奏の音型は、糸車の回転とグレートヒェンの出口のない思いを表しています。(安宅)

Interval 休憩

《Baroque Violin & Archlute》
2003.11.11.

Biagio Marini(1587-1663)
Sonata quarta [a 1]“per sonar con due corde”ソナタOP.8-4「重音の響き」

ブレーシャの名家に生まれ、作曲家の叔父から教育を受けたマリーニは、28才の時ヴェネツィアの聖マルコ大聖堂のヴァイオリニストに任命されモンテヴェルディの元で働きました。その後デュッセルドルフにも赴く等、各地を転々とし、晩年はブレーシャとヴェネツィアを行き来して過ごしたと言われています。器楽作品にその本領がより発揮されており、技巧的な華やかさと叙情性を合わせもつ作品を残しています。

Antonio Vivaldi(1678-1741)
Sonata “Il pastor fido”op.13a-3 ソナタ「忠実な羊飼い」

Preludio‐Allegro ma non presto‐Sarabande‐Corrente‐Giga allegro
ヴァイオリン奏者の父からヴァイオリンの手ほどきを受け、また作曲も学びましたが、後に司祭となり孤児院に音楽学校を設立しました。この孤児院では沢山の作品を発表、自身でも演奏しました。「忠実な羊飼い」と題されたこのソナタ集は、ヴィヴァルディの作品とされていましたが、近年になって、フランスの作曲家兼ミュゼット奏者のシェドヴィルの作品であることが明らかになりました。

Arcangelo Corelli(1653-1713)
Sonata op.5-1 ソナタ

Grave‐Allegro‐Allegro‐Adagio‐Allegro
コレッリは幼少の頃から音楽教育を受け、17才でヴァイオリニストとして、ボローニャのアカデミア・フィラルモニカの会員となりました。本来の会員資格は20才以上だった為、異例の入会でした。作曲家としては合奏協奏曲やトリオソナタの形式を完成させ、普及に努めるという大きな業績を残し、イタリアのみならず、フランスやドイツのヴァイオリン奏者、作曲家にも、大きな影響を与えました。(嵯峨山)

2003.11.11.

Photo/Shun-ichi Seki


演奏者のプロフィール

大西万喜/ヴィオラ・ダ・ガンバ

 大阪音楽大学作曲学科楽理専攻卒業。大学入学とともにリコーダーの演奏を始め、花岡和生氏に師事。在学中より、リコーダー・コンソートやバロックの室内アンサンブルにおいてリコーダー奏者として活動を行う。また英国キ−ル大学のサマースクールにてパメラ・トービー氏のマスタークラスを受講する。大学卒業後もリコーダーの演奏を続けるが、次第にヴィオラ・ダ・ガンバに興味を持ち始め、福沢宏、平尾雅子の両氏、通奏低音を佐野健二氏に師事。2002年カタルーニャ古楽音楽祭にて、ジョルディ・サヴァル氏、2003年ウルビーノ古楽音楽祭にて、グイド・バレストラッチ氏の指導を受ける。現在、平井満美子・佐野健二両氏主宰によるアーリーミュージックカンパニーにて通奏低音奏者および、ソリストとしての演奏活動を行っている。

安宅留美子/ソプラノ
 同志社女子大学音楽学科卒業、専修科修了。声楽を三井ツヤ子氏に師事する。3才の頃より八田邦子氏に幅広く音楽教育を受ける。マウリツィオ・コラチッキ氏、波多野睦美氏のマスタークラス受講。ドイツリートやオペラで数々のコンサートに出演するかたわら、リトミックも学び幼稚園や小学校での演奏も行う。大学卒業後、幼少より親しんでいるリコーダーアンサンブルの影響もあり、古楽の勉強を始る。声楽を平井満美子氏に師事し、アーリーミュージックカンパニーの一員としてチャペルコンサート等で、ルネサンス、バロック、古典の歌曲を中心にオリジナル楽器とともに演奏活動を行っている。現在、神戸市立長田工業高校非常勤講師。

嵯峨山庸子/バロック・ヴァイオリン
 大阪音楽大学器楽学科卒。ヴァイオリンを青砥華、辻久子、木田雅子、外山滋の各氏に師事。大学在学中より宗教音楽にも興味を持ち、卒業後、神戸バッハカンタータアンサンブルにて李善銘氏指導のもと、研鑚を積む。近年、古楽器演奏にも興味を持ち、バロックヴァイオリンを渡邊慶子氏に師事。ロバート・ブラウン、フランソワ・フェルナンデスの各氏のマスタークラス受講。佐野健二・平井満美子両氏主宰による、アーリーミュージックカンパニーにてソリストとして活動。ミッチーメイヤーソン、ロバートブラウンの両氏との共演をはじめ、佐野健二氏とのデュオも好評を博す。関西・関東のオーケストラ、アンサンブル等でフリーの奏者として、また宗教音楽の分野でも演奏活動を行っている。現在、神戸バッハカンタータアンサンブル、アンサンブル神戸メンバー。大阪音楽大学非常勤講師。

佐野健二/アーチリュート、古典ギター
 英国・ギルドホール音楽院首席卒業。ギターを岡本一郎、ヘクトル・クワイン、バクストン.オー、ジュリアン・ブリームの各氏、ルネサンスリュートをアントニー・ルーリー、通奏低音をナイジェル・ノース、バロックリュートをヤコブ・リンドベルイの各氏に師事。演奏活動に対し、「ジョン・クリフォード・ペティカン賞」「ロンドン芸術協会選出1978年度新人音楽家」「大阪文化祭奨励賞」「音楽クリティック・クラブ新人賞」「神戸灘ライオンズクラブ音楽賞」「大阪文化祭賞」(二回)を受ける。現在、ルネサンス、バロック期の撥弦楽器を中心に、独奏・伴奏・通奏低音奏者として演奏、録音活動を行っているが、そのレパートリーは民族音楽より現代音楽にまで及んでいる。ソプラノ平井満美子とのデュオCD6点全ては雑誌「レコード芸術」の推薦盤に選ばれ、ALMレーベルよりソロCD「エリザベス朝のリュートバラード」が発売されている。アーリーミュージックカンパニー主宰、朝日カルチャーセンター講師、相愛大学音楽学部非常勤講師。


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