EMC
クリスタルチャペルコンサート
2003年
演奏風景、プログラム

佐野健二のリュート音楽の楽しみ第53夜
イラリアのラメント
2003.10.08.


平井満美子/ソプラノ 佐野健二/アーチリュート
2003.10.08.

●クリスタルチャペルコンサート佐野健二のリュート音楽の楽しみ第53夜は「イタリアのラメント」題し、イタリアのバロック音楽を演奏いたします。
 初期イタリアバロック歌曲に於いては、ルネサンスのポリフォニ一(多声音楽)に代わり、伴奏付き単旋律であるモノディーという様式が生まれ、ギリシャ悲劇に範を取り、言葉の抑揚と意味、そして感情の表出を重んじる作品が生み出されました。
 そしてそれらはバロックの時代に花開いた多くの声楽曲の源になりました。カリッシミはオラトリオの確立に貢献し、アレッサンドロ・スカルラッティはバロック・オペラの大成に大きな影響力を持ちました。ストロッツィの「私の涙」に見られる大胆な和声の響きからは、まさにバロックの語源である「歪な真珠」のイメージが感じ取れます。イタリアバロックを代表する作曲者モンテヴェルディはルネサンスからバロックへの大きな音楽的変革を自らの内に成し遂げた大作曲家です。深い悲しみに充ちた傑作「アリアンナの嘆き」には音楽を通じていかにより効果的に言葉の意味を伝えるかが実践されており、17世紀の新しい声楽理念の代表作とされています。
 本日演奏されるリュートソロの作曲家ラウモンドの生涯についてはほとんど知られておりませんが、1601年に出版されたイタリアの代表的リュート作曲家の作品を集めた曲集に数多くの作品が収められています。



Programme

苦しむ者 La Travagliata
Barbara Strozzi ストロッツィ (1619-1664 )
強欲な光を放つあなたのまなざしで どうか苦しみ死にゆく者を助けておくれ
ああ お願いだから私のほうを振り向いておくれ

私の涙 Lagrime mie / Barbara Strozzi
息も絶えるこの激しい痛みを押し流してくれないのか わが愛しのリディアは
捕らわれの身 死にも情けがあるのなら我が命を奪え 悲しみの目よなぜ泣かぬ

我が苦しみは生まれる Nasce la pena mia (1601)
Pietro Paolo Raimondo ライモンド

残酷な愛よ 私を苦しめないで Lascia piu di tormentarmi
Alessandro Scarlatti スカルラッティ(1660-1725)
より激しい苦痛のままにしておくれ 思い出のあの人は
あまりにかたくなに平穏を阻止する 少しの満足も与えない恋の支配者よ

いとしいリラ Cantada a voce sola sopra il Passcaglia
Giovanni Felice Sances サンチェス(c1600-1679)
いとしいリラを奪われた 愛は傷つき失われる
私の愛がリラの心からも追放される
でも 私の愛は誰にも邪魔されることはないのだ

休憩

組曲 Suite in F (1601) / Pietro Paolo Raimondo ライモンド
Toccata - Pavaniglia - Corrente Francese - Recercar

アリアンナの嘆き Lamento D'Ariana Claudio Monteverdi モンテヴェルディ(1567-1643)
大きな苦しみの中にいる私を死なせてください
ああテゼオ むごい方 目の前から消え去るなんて
あなたの誠意はどこへいったのですか
王座をすて あなたを信じたあわれなアリアンナ
母よ 父よ 友よ 愛しすぎ 信じすぎる者はこのようになるのです

野山は春のよそおい Vestiva i colli (1601)
Pietro Paolo Raimondo ライモンド

マリア・ディ・スコーツィアの嘆き Il lamento dei Maria di Scozia
Giacomo Carissimi カリッシミ(1605-1674)
私は潔白に生きたスコットランドの王妃なのだ なぜ目隠しをする
生涯の最後の時を見る勇気は私にはある イギリスを支配する高慢なエリザベスよ
さあ襲ってくるがよい 残虐な拷問 むち打ち たけり狂った矢が胸をつきさす
・・・静かになりスコットランド王妃の心は神と一体となる


● 平井満美子/ソプラノ
 神戸女学院大学音楽学部声楽科卒業。卒業後、古楽の演奏に興味を移し研究、中世よりバロックまでのレパートリーを持つ、数少ない古楽の歌い手として活動している。多くのコンサートと録音を行い、その演奏は新聞、音楽誌等にて常に高く評価されている。現在までに発売された佐野健二とのデュオCD6点全ては雑誌「レコード芸術」の推薦盤に選ばれ、デュオリサイタルに対しては「大阪文化祭本賞」を受賞している。日本、イギリスにてE.タブと共演、好評を博す。その広い音域と澄んだ歌声は古楽のジャンルにとどまらず、テレビコマーシャルの音楽にも活躍している。

●佐野健二/アーチリュート (14-course Archlute : Martin Haycock 1999 )
 英国・ギルドホール音楽院首席卒業。ギターを岡本一郎、H・クワイン、B.オー、J・ブリームの各氏、リュートをA.ルーリー、N.ノース、J.リンドベルイの各氏に師事。演奏活動に対し、「ジョン・クリフォード・ペティカン賞」「ロンドン芸術協会選出1978年度新人音楽家」「大阪文化祭奨励賞」「音楽クリティック・クラブ新人賞」「神戸灘ライオンズクラブ音楽賞」「大阪文化祭賞」(二回)を受ける。現在、ルネサンス、バロック期の撥弦楽器を中心に、独奏・伴奏・通奏低音奏者として演奏、録音活動を行っているが、そのレパートリーは民族音楽より現代音楽にまで及んでいる。朝日カルチャーセンター、相愛大学音楽学部非常勤講師。

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