クリスタルチャペルコンサート
佐野健二のリュート音楽の楽しみ 2002年
演奏風景、解説、プログラム


"No.47-夢次元の調べ"
2002.10.2.


平井満美子/ソプラノ 佐野健二/ルネサンスリュート、オルファリオン、アーチリュート
佐野俊郎/夢次元彫刻、ランプ、燭台、ジュエリー製作
2002.10.02.


ジョン・ダウランドのメランコリーな作風は16世紀末に流行った瞑想的風潮と完全に同調し、ルネサンスリュート音楽最後の華を大きく咲かせました。しかし彼は自他共に認める当時随一のリュート奏者とされながらも、エリザベス女王付奏者になれない失望感を胸に抱きつつ、ヨーロッパ各地各地を転々とした不遇の音楽家ともされています。行く先々では最高のリュート奏者と迎えられながらも、イギリス宮廷付リュート奏者の職を願うダウランド。彼の作品に連ねる〈涙〉〈悲しみ〉〈暗闇〉そして〈死〉といった象徴的でメランコリックな言葉はこのような境遇ゆえなのでしょうか。晩年、故国にもどったダウランドは、念願の国王付のリュート奏者に任命されるものの、時代は変わりイギリスでは若いリュート奏者が新しいタイプのリュートで活躍していました。ダウランドは新しい時代の響きを感じつつ自らの人生を振り、1612年に出版された最終歌曲集を「巡礼の慰め」と名づけました。時代はルネサンスからバロックへと移っていったのです。 本日は通常のG調弦によるルネサンスリュート、一音低く調律されゆったりした響きのFリュート、金属弦を張ったリュートの代替楽器オルファリオン、そして16世紀後半にイタリアで考案された新時代の楽器アーチリュートを使います。今宵、幻想的な夢次元彫刻の中、ダウランドの世界に身をゆだねてみようと思います。



Programme

◆Fancy ファンシー*
●Dear, if you change いとしいひとよ もしきみが*
いとしく やさしく 美しく 賢いきみ 変わったり ゆらいだり
くじけたりしないでおくれ この想いが永遠に続くことを僕は誓う
●Go crystal tears 行け 透明な涙よ*
おまえの憐れみの力で しおれた花が露を得て生き返るように
あの人の心に僕のことを生き生きと思いださせておくれ

◆Fantasie 半音階風ファンタジー
●I saw my lady weep わが恋人が泣くのを見た
ああ 何物よりも美しい人 悲しみもあの人にあっては美しいが
涙は心を痛め 殺すもの 歎きにおいて人に優ろうとしないでおくれ

●The lowest tree have tops 低い木にも梢はある
わずかな残り火にも熱はあり かぼそい髪にも影はある
心は見て聞く でもなにも言えない ため息をつく そしてはりさける
●Time stand still 時間よ静止して
すべてのものが変わりゆく中 あの人はうつくしいまま
愛の神があの目の美しさに召しい 運命の神もあの人に捕らえられ裁かれる

◆Forlone Hope Fancy 絶望のファンシー

休憩

◆Preludium プレリュード**
◆Lachrimae ラクリメ**
●Sorrow stay 悲しみよ、とどまれ**
憐れみよ 今こそ僕を助けておくれ 望みも助けももはやなく
下へ下へ落ちてゆくのみ 立ち直る日は二度と来はしない

●Thou Migty God 力強き神よ***
あらゆる悪をただす神 絶えゆく忍耐の調べに耳を傾けたまえ
ヨブがすべてを失なったとき 「希望」が彼を悲歌から守った
●When David's Life ダビデの命が***
ダビデの命がサウロに脅かされたときでさえ ダビデは陰惨な復讐など考えない
「希望」がうちひしがれた彼を支えているから
●When The poor Cripple あわれな足萎え***
幾年月の不幸も痛みも キリストに目を向けると安らぎがおとずれる
ダビデもヨブももう苦しむことはない キリストよ 忍耐と「希望」を与えたまえ

◆Farewell 別れ*
●In darkness let me dwell 暗闇に住まわせておくれ*
地面が悲しみならば屋根は絶望 楽しい光を私からさえぎるのだ
生きたまま死なせておくれ 真の死がやってくるまで

使用楽器
7-course G-lute : Martin Haycock 1990
*7-course F-lute : Poul Thomson 1986
**9-course Orupharion : Stephen Barbar 1990
***14-course Liuto atteorbato : Junji Nishimura 1985

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