クリスタルチャペルコンサート
佐野健二のリュート音楽の楽しみ 2001年
演奏風景、解説、プログラム


"No.40-カメラータのもくろみ"
2001.07.18.


平井満美子/ソプラノ 佐野健二/アーチリュート、

2001.07.18.


 佐野健二のリュート音楽の楽しみ第40夜は、「カメラータのもくろみ」と題し、イタリアの初期バロック音楽を演奏致します。
 「カメラータ」とは「仲間」の意味ですが、16世紀後半イタリアで新しい音楽を模索した人たちの集まりの名前でもありました。フィレンツェのバルディ家に音楽家や文学者、哲学者たちが集まり、古代音楽の復興を論じあいました。彼らはギリシャ悲劇に範を求め、いかにして言葉と楽音を結び付け、人々を説得するかを追及していきました。一見懐古趣味的な発想は、多くの音楽家を触発しバロック音楽の幕を開けました。
 歌曲に於いては、言葉と音との関係がより重視され、ルネサンスのポリフォニ一(多声音楽)に代わり、言葉の抑揚や意味、そして感情の表出を重んじる伴奏付き単旋律であるモノディーという様式が登場してきました。そこでは音楽を通じていかに正しく言葉の意味を伝えるかが実践されました。そして、ルネサンス時代声楽曲よりの発展物といえた器楽曲もバロック期においては新たな方向を模索し、トッカータに代表される17世紀の器楽作品を生み出し、後の純粋な器楽曲の発展へつながる結果となりました。
 それでは今宵は歌とリュートによる17世紀のイタリア作品の数々から、カメラータの人々が目論んだ音楽の楽しみをお聴き下さい。



Programme

《Giulio Caccini カッチーニ (c.1550-1618) 》
●麗しき真紅のバラよ Aria Noina: Belle rose porporine
棘につつまれ 朝の光にはにかむ愛らしいバラは 優しくほほえむ
美しき宝を守りつづけよ

《Girolamo Frescobaldi フレスコバルディ (1583-1643) 》
●ロマネスカのアリア Aria di Romanesca
残酷な時が苦痛へと私をつれもどす 私の望みは悲しみとともに墓に納められる
君は冷酷な支配者 苦しみの炎をもやした罪をおわなければならない

《Alessandro Piccinini ピチニーニ (1566-c.1638)》
●トッカータ、コレント Toccata XIX-Correnre quinta

《Giulio Caccini カッチーニ》
●アマリリ麗し Amarilli mia bella
君こそわが恋人 もし不安におののくのなら矢をとって
この胸を開き心に刻まれた言葉を見よ アマリリこそわが恋人
v 《 Giovanni Girolamo Kapsberger カプスベルガー (c.1580-1651)》
●トッカータ Toccata V

《Barbara Strozzi ストロッツィ (1620-? )》
●いつわりの恋人 L'Amante Bugiardo 君の魅力にだまされ 君のくちづけに裏切られ 君のうそに苦しむ
もうだまってくれ もう裏切らないでくれ

●ひそやかな恋人 L'Amante Segreto
死なせてくれ 我が目は美しき君の顔を見続ける
君への愛で弱り死に近づいている私を矢で射ぬいてくれ

Interval

《Santino Garsi da Parma パルマ》
●組曲 Preludio-Corenta-Pavana in soprano-Balleto

《Giulio Caccini カッチーニ》
●ああ 戻り来よ Torna deh torna
どこに隠れているのか 何をしているのかキューピットよ 君の声も無い
我心を攻めるのは苦しき悲しみ 我が声に耳を傾けたまえ

《Alessandro Piccinini ピチニーニ》
●パッサカリア Passacaglia

《Barbara Strozzi ストロッツィ》
●ヘラクレイトスの恋 L'Eraclite Amoroso
私が泣いている訳を聴いてくれ 私が信じ熱愛していた偶像は滅びた
涙はわたしを養い 悲しみはわたしの喜び ため息はわたしを癒す

●私の涙 Lagrime mie
息も絶えるこの激しい痛みを押し流してくれないのか わが愛しのリディアは
捕らわれの身 死にも情けがあるのなら我が命を奪え 悲しみの目よなぜ泣かぬ

使用楽器
14-course Archlute : Martin Haycock 1999

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