クリスタルチャペルコンサート
セレクテッド・ミュージシャン・シリーズ
演奏風景、解説、プログラム


No.1-中村洋彦&奥田直美リコーダー・デュオ
Hirohiko Nakamura & Naomi Okuda Recorder duo
2001.03.07.

recorderduo


 今夜演奏されるリコーダー・デュオの作品のすべては、バロック時代に書かれた横吹きのフルート(フラウト・トラヴェルソ)のための作品です。しかし出版された当時の楽譜の序文などにも書かれていますように、当時の習慣によって、横吹きフルートの作品の多くはその調性を短3度高く移調することでリコーダーに適した調となり、楽曲を損ねる事なく演奏できるため(中には例外もありますが)、リコーダー奏者にとっては貴重なレパートリーとなっています。
 今日のコンサートでは、そのような数多いデュオ曲の中から、本来そのために書かれた横吹きフルートで演奏するよりも、むしろリコーダーで演奏される事によって、その音楽のもつ表情がさらに豊かに表される曲を選んで、プログラムにしました。2本のリコーダーが織り成すバロックの音楽を、どうぞお楽しみ下さい。
中村洋彦 & 奥田直美

プロフィール

中村洋彦/Hirohiko Nakamura
エリザベト音楽大学宗教音楽学科を卒業。1978年、第4回全日本リコーダーコンクールにおいて、最優秀賞ならびに朝日放送賞を受賞。1981、82、84年に渡欧、研鑽を積む。リコーダーを花岡和生、フラウト・トラヴェルソを有田正広の各氏に師事。1987年、第1回リコーダーリサイタルを開催し、その成果に対し大阪文化祭奨励賞を受賞。1992年より『笛の楽園』と題してソロリサイタルを始める。1993、95、96年フランス政府の招請により、ダンスリールネサンス合奏団のメンバーとして、フランス各地で演奏を行い、好評を博す。また近年、西洋音楽と日本が出会った16世紀の「南蛮音楽」についての研究演奏も行っている。現在、相愛大学音楽学部非常勤講師、16世紀セミナリオ・コンソート主宰、ダンスリールネサンス合奏団メンバー。

奥田直美/Naomi Okuda
11才よりリコーダーを始め、第1回、第2回近畿小中学校リコーダー・コンクール等のアンサンブル部門において受賞。大阪音楽大学短期大学部フルート専攻卒業。フルートを曽根亮一、末原諭宜の各氏に師事。卒業後、古楽に興味を持ち、リコーダー、フラウト・トラヴェルソを始める。1995、96年、イギリス・ダーティントン・インターナショナル・サマースクールにて、ピアーズ・アダムズ、フィリップ・トービー、ジェルティ・ジョンソンの各氏のマスタークラスを、ケンブリッジ・サマーコースにてブルース・ヘインズ氏のアンサンブルと管楽器奏法のクラスを受講。1997年渡英、イギリス・ギルドホール音楽院大学院課程古楽科に入学。在学中、リコーダーをパメラ・トービー、ピアーズ・アダムズの各氏に、フラウト・トラヴェルソ、バロック奏法を、スティーヴン・プレストン氏に師事。1998年、同校をディプロマ(L.G.S.M.)を授与され卒業。同年、演奏家ディプロマを授与される。1998年ロンドンにて、1999年大阪ザ・フェニックスホールにて、リコーダー・リサイタルを開催。リコーダーを中村洋彦、向江昭雅の各氏に師事。現在、よみうり文化センター講師。




     Programme

ゲオルク・フィリップ・テレマン/カノン・ソナタ 第3番 ヘ長調
Georg Philipp Telemann (1681-1767) / Sonate im Kanon Nr.3 F-dur
I スピリットゥオーゾ Spirituoso
II ラルゲット Larghetto
III アレグロ・アッサイ Allegro assai
 ドイツ後期バロックの音楽家で、また作曲家(多作家!)として知られているテレマンが、ハンブルク時代 (1721-1767) に作曲した作品。1737年秋テレマンはパリを訪れ、そこに8ヶ月滞在したが、その間に行われたパリの宮廷とコンセール・スビリテュエル(1725年に創始されたパリでの公開演奏会)でのテレマンの作品の演奏会は大喝采を浴びた。6つのカノン・ソナタ曲集は、その翌年の1738年にパリで出版されている。作品は全体としてギャラント、あるいは多感様式を示しており、この第3番のソナタにも新しい時代への趣味が感じられる。

ヨハン・ヨアヒム・クヴァンツ/デュエット 第3番 ニ短調
Johann Joachim Quantz (1697-1773) / Duett Nr.3 d-moll
I アレグロ Allegro
II ラルゲット、アラ・シチリアーナ Larghetto, alla Siciliana
III テンポ・ディ・メヌエット、マ・グラツィオーゾ Tempo di Minuetto ma Grazioso
 J.J.クヴァンツはプロイセン王フリードリヒ2世の宮廷音楽家として、また王のフルート教師としても活躍した。クヴァンツが1752年に著した『フルート奏法試論』は、バロック時代以降、現代にいたるまで、フルート奏者のよき手引きとなっている。彼はその生涯に数多くのフルート作品を残しているがこのデュエット集は1759年ベルリンで、作品2としてクヴァンツ自身により出版された。

ミシェル・ブラヴェ/組曲 ト短調
Michel Blavet (1700-1768) / Suitte en sol-mineur
I ブラヴェのプレリュード Prelude de Blavet
II <カストールとポリュックス>からのエール Air dans Castor et Pollux
III <ゼランドール>からのナンフのエール Air des Nimphes dans Z四indor
IV ガヴォット(レジェール) Gavottes legeres
V ある日病気のコランは L'autre jour Colin malade
VI 門番 La Touriere
 18世紀のフランスに活躍したフルート奏者M.ブラヴェによって編集された3巻から成る小品集の中の組曲。この小品集には、当時のフランス、ドイツ、イタリア、イギリスの有名な音楽家たちの作品が、ブラヴェの手によって2本のフルートのために編曲されたものが収められている。(ブラヴェ自身の作品も含まれる。)この組曲が収められた第3巻は、1775年頃パリで出版されている。

休憩

ジャック・マルタン・オトテ−ル/組曲 第1番 ニ短調
Jacques Martin Hotteterre (1674-1763) / Premiere suitte de pieces
I グラ−ヴマン-ゲイ Gravement-Gay
II アルマンド Allemande
III ロンド:タンドゥル<きじバト> Rondeau:Tendre《Les Tourterelles》
IV ロンド:ゲイ Rondeau:Gay
V ジーグ Gigue
VI パッサカイユ Passacaille
 17世紀フランスの木管楽器製作者の家系であるオトテール一族に生まれ、音楽家としても教師としても知られていたJ.M.オトテールは、『フラウト・トラヴェルソの原理』と題されたフルート奏法に関する音楽史上初めての教則本の著者でもある。オトテールは、バロック型の木管楽器、特にフルートのための作品に貢献した。この組曲は、1712年にパリで出版されている。

ミシェル・ブラヴェ/G.F.ヘンデル氏のガヴォット<調子のよい鍛冶屋>
Michel Blavet (1700-1768) / Gavotte de M.Handel
 この作品は前述のブラヴェの小品集第2巻に収められた曲で、ヘンデルのチェンバロ組曲第5番の有名なエアー<調子のよい鍛冶屋>が主題となった、愛らしい変奏曲である。

ゲオルク・フィリップ・テレマン/デュオ・ソナタ 第2番 ハ短調
Georg Philipp Telemann (1681-1767) / Sonate Nr.2 c-moll
I アレグロ Allegro
II モデラート Moderato
III アレグロ Allegro
 1752年、テレマンが71歳の時にパリで出版された。この頃のテレマンの創作量は、以前に比べて目に見えて減っており、作曲する事よりも、むしろ音楽理論書の編集に力を注いでいたと思われる。しかし、この作品を見る限りにおいて、バロック時代の語法を通り越した新しい時代の音楽を、常に意識している彼の創作意欲が強く感じられる。


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