クリスタルチャペルコンサート
佐野健二のリュート音楽の楽しみ 2000年
演奏風景、解説、プログラム

"No.321-Melanchory Dowland ジョン・ダウランドのリュートソロと歌曲"
2000.1.28.


平井満美子/ソプラノ 佐野健二/リュート、オルファリオン

2000.1.28. 2000.1.28.


 2000年代最初の佐野健二のリュート音楽の楽しみシリーズ、「メランコリー・ダウランド」と題し、リュート音楽の原点、そして最高峰であるジョン・ダウランドの作品の数々を演奏致します。
   ジョン・ダウランドは、エリザベス朝に於ては自他ともに認める最高のリュート奏者だったのですが、宗教上の理由からか、熱望していたエリザベス女王付の奏者にはなれず、その大きな失望感を胸に抱き、生涯の殆どをヨーロッパ各地を巡り歩いた不遇のリュート奏者といわれています。ダウランドの作品に連ねる〈涙〉〈悲しみ〉〈暗闇〉そして〈死〉といった象徴的でメランコリックな言葉はこのような彼の境遇ゆえとされています。
 しかしイギリスでは大きな失望感を味わったダウランドも、行く先々のヨーロッパの宮廷や貴族からは最高の音楽家として迎えられたのですから、そんなに悪い人生でもなかったのかも知れません。そして、あまりに完成された彼の作品を見る時、ダウランドは自らの人生と音楽をオーバーラップし、メランコリーを楽しんでいたのだ、とさえ思えるのです。
 いずれにせよ、ダウランドの作品はヨーロッパで16世紀末の知識階級に流行った“メランコリー気質”とまさしくに同調しており、“ダウランドの憂愁”に人々は身をゆだねたのでした。
 今日はそのメランコリックなダウランドを表現したく、通常のルネサンス・リュートよりひとつ音の低いFリュートと、当時リュートの代替楽器としてもてはやされたオルファリオンで演奏致します。



programme

ファンシー Fancy
流れよ わが涙 Flow my tears
夜の黒い鳥が歌う闇の中で 僕はひとり打ちしおれて生きよう
幸いなるかな 地獄に落ちてこの世の蔑みを感じえぬ者よ

ウォルシンハム Walsingham
悲しみよ、とどまれ Sorrow stay
憐れみよ 今こそ僕を助けておくれ 望みも助けももはやなく
下へ下へ落ちてゆくのみ 立ち直る日は二度と来はしない

ミニャルダ Mignarda
わが恋人が泣くのを見た I saw my lady weep
ああ 何物よりも美しい人 悲しみもあの人にあっては美しいが
涙は心を痛め 殺すもの 歎きにおいて人に優ろうとしないでおくれ

来たれ、重い眠り Come, heavy sleep
この嘆き疲れた目を閉じておくれ 湧いてやまぬ涙の泉が命の息をふさぐ
来れ 甘い眠り さもなくば永遠の死あるのみ

ファンタジア Fantasia

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メランコリー・ガリアルド Melancholy Galliard
行け 透明な涙よ Go crystal tears
おまえの憐れみの力で しおれた花が露を得て生き返るように
あの人の心に僕のことを生き生きと思いださせておくれ

彼女は許してくれるだろうか Can she excuse
低い木にも梢はある The lowest trees have tops
大海にも浅い泉にも源があるように 乞食にも王にも恋は恋
心は聞く 見る ため息をつく そして張り裂けるのだ

言ってくれ 誠の愛よ Tell me true love
どこにおまえを探せばいいのか? 言葉 約束のなかに?
おまえは不死のはず どうして現代から追放されたのか?

蛙のガリアルド The Frog Galliard
暗闇に住まわせておくれ In darkness let me dwell
地面が悲しみならば屋根は絶望 楽しい光を私からさえぎるのだ
生きたまま死なせておくれ 真の死がやってくるまで

この顫える影 In this trembling shadow
私の声はいかにも空しい 神を賛美する私に力を貸しておくれ
無限の御力には無限の賛歌こそがふさわしい


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