クリスタルチャペルコンサート
佐野健二のリュート音楽の楽しみ 1999年5月26日
演奏風景、解説、プログラム
"No.27-Baroque Lute Recital バロックの輝き"
1999.5.26.
佐野健二/バロックリュート
「佐野健二のリュート音楽の楽しみ」第27回目は、「バロックの輝き」と題したバロックリュートのソロリサイタルです。
アラブに生まれたリュートの原形は十字軍の遠征によりイベリア半島に持ち込まれました。そして、その容姿と音色は人々の心を捕らえ、またたく間にヨーロッパ中に広まったのです。各々の国民性、風土に合わせ発達したリュートは、ルネサンスとバロックの時代に於てはまさに楽器の王様(女王様?)として君臨していました。
例えば、吟遊詩人はリュートと共に自らの詞を語り、村の祭りで民衆はリュートをかき鳴らし、王侯貴族はリュートを巧みにあやつる事を誇りとし、恋に取りつかれた若者は想いをリュートに託し、そして時には恋に破れた心を癒す。シェイクスピアはリュートで観客の想像力を刺激し、バロックのオペラでは最も歌い手の心情に寄り添える楽器として活躍、というようにリュートはルネサンス、バロック時代の音楽的欲求のすべてを満たしておりました。そして時には、これでもかという装飾にあふれた悪趣味なリュートなどは、成金趣味の欲求までをも満たしていたのです。
今日演奏するバロックリュートには13コース、24本の弦が張ってあります。リュートは時代と共にどんどん低音側の弦を増やしてきました。中世のリュートは5コース、典型的なルネサンスリュートには7もしくは8コース、フランスバロックは11コース、バロックのリュートやテオルボは13もしくは14コース。リュートは時代と共に弦を増やしていきました。時代の要求の結果とはいえ、このことがリュートの廃れる原因にもなってしまったのです。弦が増えるだけ増えた結果、物理的に進化できなくなったリュートは18世紀の半ば、深い眠りにつきました。
眠りにつく前のバロック後期のリュート音楽には、ルネサンス期のような全盛期は過ぎ去ってはいたものの、ドイツ語圏ではヴァイス、バッハといった大作曲家達がリュートに最後の花を咲かせていたのです。
それでは20世紀の今、深い眠りから覚め、再び人々を魅了しているバロックリュートの響きをお楽しみ下さい。
Silvius Leopold Weiss ヴァイス(1686~1750)
シャコンヌCiacona
Jan Anton Losy ロジー(1650~1721)
組曲Suite in D minor
Prelude-Allemande-Courante-Gavotte-Menuet-Rondeau-Gigue
プレリュード、アレマンド、クウラント、ガボット、メヌエット、ロンド、ジーグ
Silvius Leopold Weiss ヴァイス(1686~1750)
ロジー伯爵の墓のために
Tombeau sue la Mort de Mr. Comte de Lagy
Interval 休憩
Esaias Reusner ロイスナー(1636~1679)
組曲Suite in G minor
Prelude-Allemande-Courant-Sarabanda-Aria-Gigue-Aria
プレリュード、アレマンド、クウラント、サラバンド、アリア、ジーグ、アリア
Johann Sebastian Bach バッハ(1675~1750)
ソナタSonata in G minor BWV 1001
Adagio-Fugue-Siciliana-Presto
アダージォ、フーガ、シチリアーノ、プレスト
Instrument 使用楽器
13-course baroque lute by Martin Haycck 1994
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